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代償魔法  作者: 若君
第一章は44話まで、第二章毎週月曜日に更新
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第十三話 私を魔法使いにしてください

第十三話 私を魔法使いにしてください


「私を魔法使いにしてください」

金髪碧眼の王女は微笑みながらそう言った。


「言っておくが、もう弟子は取れない」

辺境の魔女、エイブリンが口を開く。

今の彼女は、目の前の王女に操られている状態だ。


「これが魔法の代償」

「私は一人の弟子しか取れない」

ぎゅっと服を掴んでいる黒髪の少女――孤僻な魔女、ランを見る。彼女の唯一の弟子だ。

「魔法使いは師弟制で、ランがいなくならない限り、貴女を魔法使いにすることはできない」

「師匠……」ランは不安そうに顔を上げる。


「師弟関係を解消するのは?」王女が尋ねる。

「無理だ」エイブリンは即答する。

「私が魔法使いを辞めるしかない」

「だがそれでは貴女を魔法使いにすることもできない」

エイブリンがそう言うと、王女は考え込む。


「嵐様がいなくなれば、ですか……」

(でもランがいなくなれば、私もいなくなる)この方法は使えない。

「つまり、貴方を通じて魔法使いになるのは無理なんですね……」王女は微笑む。

「よければ他の魔法使いを紹介しよう」

今の彼女には王女の要求を拒むことができないからだ。


――確かにそれしかない……わけがない。

「違いますよね?」王女は口元を緩める。

「それなら私が嵐様の弟子になればいい。嵐様も魔法使いですし」

「それに私は嵐様と離れたくありません。約束しましたから」

微笑みながら言う。


「だ、誰が弟子にするかっての!」ランは激しく指をさす。

「そんな手を使って約束させやがって、出て行け!」大嘘つき!

「嘘はついていません。私は魔法使いじゃないんですから」

「約束を口にしたのは、魔法使いである貴方ですよ」


「く、くそ!陰険で狡賢い奴め!」

ランは歯軋りする。


「それに『弟子は一人だけ』という説にも疑問があります」

「複数の弟子を取った魔女の例も聞いたことがあります」

「師弟間にも『卒業儀式』があるのでは?」

「一人だけなんて、おかしいです」


エイブリンはゆっくりと口を開く:

「穴を探そうとしても無駄だ。私は貴女を弟子にすることはできない」

「私は約束した――ランが私の最後の弟子だと」

微笑みながら言い終えると、傍らのランが彼女を見る。

「それ初めて聞いた……」首を傾げる。


「それでは仕方なく嵐様の弟子になります」王女は手を振って気軽に言う。


「だ、誰が弟子にするかっての!!」ランは激しく叫ぶ。

「じゃあ私も約束する、絶対に――」

(誰も弟子にしない……)


エイブリンは驚いて彼女の口を塞ぐ。

「約束を軽々しくするなと言っただろう」

手を離し、厳しい口調で言う。

「魔法は後悔を許さない」


「でもあいつが……」

ランは歯を食いしばる。


---

「師匠の操縦をやめるなら、弟子にすることを考えてもいいけど……」

ランはツンツンしながら、テーブルのクッキーに手を伸ばす。


二人は食卓に向かい合って座っている。


「操縦は解除しません」

王女は紅茶を飲みながら静かに答える。

「政治家として、交渉材料を持ってこそ話し合いの資格がある」

「絶対に手放しません」

手放せば、全てが振り出しに戻る。


「政治家とか言って、ガキのくせに……」

ランはクッキーを齧りながら嘲る。


「嵐様が弟子にする気がないなら、他の魔法使いを探します」

「もちろん、その時はエイブリン様も一緒に」


「な、何!?なぜ師匠が!」

「今のエイブリン様は私のもので、嵐様のものじゃありませんから~」

「たまに会わせてあげます~」得意げに笑う。

「保護者として」


「この悪魔……!」

よくも師匠を奪いやがって!


「『政治家』と呼んでください」

紅茶を優雅に啜りながら言う。

「あるいは、ライラでも」

「一度も名前で呼んでくれませんよね?」


「誰が呼ぶか!!」


「はぁ……また面倒なガキが増えた……」

エイブリンは傍らで紅茶を飲みながら嘆く。

(それにこの首輪がある限り、何もできない……)

グレンヴァークを倒すために、残りの魔法も少ない。


(三つの願いをどう使うか考えていたのに……)

あっという間に二つ失い、残り一つ。

(彼女が二つの願いを使い切るまで、私の番は回ってこない)

割に合わない。


---

ピンポーン――玄関のベルが鳴る。

(来たか……)エイブリンはドアを見る。

「私が出る。お前たちは大人しくしていろ」

紅茶を置き、立ち上がろうとする。


「エイブリン様」金髪の王女が呼び止める。

「私は嵐様と一緒でないといけません」

微笑むが、目は冷たい。

「好きにしろ」エイブリンは冷たく返し、ドアへ向かう。


「あんたなんかと一緒にいたくない!」

「照れないで、嵐様。お互いを知る時間はたっぷりありますから~」

「名前で呼ぶな!」

「貴方がそう呼べって言ったじゃないですか~」

二人はまた食卓で言い争いを始める。


「どうぞ」エイブリンがドアを開ける。

三人の魔法袍を着た人物が立っている。


「辺境の魔女、エイブリン――」

「なぜグレンヴァークを倒したのか説明してくれないか?」

厳しい表情で尋ねる。


---

「マグル……?」

三人の魔法使いは部屋に入ると、魔法使いではない金髪の少女に目を留める。

警戒して杖を構える。

「なぜここにいる!」


「よせ、やめろ」エイブリンが手で制止する。


「調査に来たんだろ?」

「確かに彼女は一連の事件の原因の一つだ」

「だが今は、彼女から離れられない事情がある」

深刻な表情で言う。


その様子を見て、三人は少しずつ警戒を解いていく。


「彼らは誰?」王女が尋ねる。

「魔法協会の者だ」ランが答える。

「あんたを捕まえに来たみたいだぞ~」

楽しそうに笑う。


「捕まえる?理由は?」王女が聞く。

「理由……理由か……」ランは眉をひそめ、考え込む。


「ラン、彼女を二階に連れて行ってくれないか」

「これから重要な話をする」

エイブリンが言う。

「えー……」ランは嫌な顔をする。


「ついでに空いてる部屋を選ばせてやれ」

「え!?本当にここに住ませる気!?」

「早くしろ!」

「うっ……くそ……ついて来いよ!」

ランはクッキーの皿を抱えて階段へ向かおうとする。

「クッキーは置いていけ」


「ちぃ……」

がっかりしながらクッキーを置き、素手で王女を二階へ連れて行く。

三人の魔法使いの視線が王女を刺すように追う。

「ふふ~」と微笑み、ランについて階段を上がっていく。


---

「さて……どこから話すべきかな」

エイブリンは適当に腰を下ろし、クッキーを一つつまみながら静かに言った。


皆さん、こんばんは。作者です。

この作品は8月から毎日18時に更新します。更新は8月末まで続ける予定です。

その後の進捗はまだ書けていないので、9月以降も続けられるかはちょっと分かりません。

とにかく、できるだけ早く完結まで書き進めたいと思っています。

(やっぱり、完結してこそ良い物語ですよね)

それでは、皆さん、おやすみなさい。

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