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エスプレッソより、少しだけ甘く  作者: かれら
音が届く場所へ
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[間章] 遠い記憶、第二幕

(秋人視点、過去の回想)

舞台上では、拍手が鳴りやまない。

ステージを終えたばかりの彼女は、控え室で静かに息を整えていた。


秋人は、片隅でその様子を見守っていた。

彼はツアースタッフの一員として同行していたが、それ以上に、彼女の奏でる音に魅せられていた。


「……あなたは、いつも静かに聴いていますね」


カップを手にした彼女が、ふと微笑む。


「音楽を言葉にするのは難しいですからね」


秋人は、彼女の手元のカップを見つめながら、ゆっくりと答えた。


「でも、あなたの音は、言葉以上に伝わるものがあります」


彼女は、小さく首を振った。


「そうかしら」


「ええ。けれど……どこか迷っているようにも聞こえる」


秋人の言葉に、彼女は少し驚いたように目を瞬かせる。

そして、カップの縁に指を滑らせながら、ぽつりと呟いた。


「……自分の音を探しているのよ」


秋人は、その言葉を静かに噛みしめる。


「探している?」


「ええ。私の音は、まだどこか不完全な気がするの」


彼女は、ふっと遠くを見つめるように目を細めた。


「音楽は、その人の生き方を映すもの。だからこそ……誰かを想う気持ちで、音は変わる」


秋人は、その言葉の真意を測りかねながら、問いかける。


「誰かを想う気持ち……?」


「ええ。たとえば、子どもに子守唄を歌う母親の声は、特別な響きを持つでしょう?」


彼女は、微笑んだ。


「同じように、演奏する人が誰を想うかで、音は変わるのよ」


秋人は、その言葉を胸に刻むように黙って聞いていた。


「私は、まだその音を見つけられていない。でも——」


彼女は、カップをそっと置き、ゆっくりと指先を重ねるようにして言った。


「いつか、その音を届けたい人がいるの」


秋人は、その瞳の奥に微かな光を見る。


それが誰なのかを、尋ねることはしなかった。


けれど——


彼女の言葉の端々から、その“誰か”の姿が、ぼんやりと浮かび上がっていた。


秋人は、静かに息を吐く。


「あなたの音は、必ず届くと思いますよ」


彼女は、少し驚いたように彼を見て、それからふっと微笑んだ。


「そうだといいわね」


その夜、秋人はステージの隅で、彼女の演奏を聴いていた。

音は、どこまでも澄んでいて、優しく、けれどどこか探るような響きを帯びていた。


(自分の音を探す——そして、誰かを想う気持ちで変わる音)


それは、今はまだ不確かなものかもしれない。


けれど、彼女の音は、きっと——


未来へと続いていく。

完全に予約更新忘れてました…一生の不覚…

ごめんなさいこれ、更新するか悩んだお話ですが、ストーリーに絡むお話です。


次は今日の12時に更新しますね。



もっとテンポよく投稿して欲しい!いや、ゆっくり投稿して欲しい。又は、誤字脱字、ここが良かった・悪かった等ご意見ありましたら是非お気軽に感想ください。

また、ブックマークや評価を頂けると嬉しくなります・・・!

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