いつの間にか、支えられる存在
ランチタイムのカフェ ミルテは、穏やかな忙しさに包まれていた。
観光客や常連客が行き交い、注文が途切れることなく続く。
琴音は、丁寧にコーヒーを淹れながらも、少しだけ焦っていた。
(もうすぐ新しい注文が入る……お皿の片付けもまだ……)
店内を見回しながら、ほんの少し、手が止まる。
「琴音さん」
ふと、遥の声が聞こえた。
「新しいオーダー、もうすぐ入りますよね。こっちは俺がやっておきます」
そう言って、彼は自然に空いたカップを片付け始めた。
無駄のない動き。
そして、さりげなく負担を軽くする気遣い。
「あ……ありがとうございます」
琴音は、少し戸惑いながらも礼を言う。
「いえ。こういうの、慣れてきましたし」
遥は軽く微笑むと、カウンターの中でさっと動き、お皿を下げ、次の準備を進める。
その姿を見ながら、琴音はふと気づいた。
(……そういえば)
以前は、一人ですべてをこなすのが当たり前だった。
でも今は——
遥がいることで、確かに仕事がスムーズになっている。
それだけじゃない。
(彼がいると、落ち着く……)
そんな気持ちが、心の奥にふっと広がる。
安心感。
それが何なのかは、まだ言葉にできない。
けれど、確かに——彼がいることが、心地いいと感じていた。
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