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苦手な方はご注意ください。

大好きな旦那様の【運命のツガイ】が、私ではなかったとしたら?

【短編】大好きな旦那様の【運命のツガイ】が、私ではなかったとしたら?

連載版もあります。詳細は後書きに。

 1.


 いつものように旦那様が帰ってきたので、部屋で待っていられず慌てて玄関へと向かった。今日は嬉しい報告があるのだ。

 家族が増える。

 結婚して一年目の記念日前日。嬉しいことが重なって、私は浮かれていた。だから玄関正面の階段を上がってきた旦那様のただならぬ雰囲気に、気づくのが遅れてしまったのだ。


「旦那様、お帰りなさいませ」


 いつものように旦那様に抱きつくのは、おなかの子供にもよくないと思い、十分に近づいてそっとお帰りのギュッとキスをしよう。

「ただいま、私の可愛い奥さん」と抱きしめてくれると思っていた。


 艶のある美しい黒髪は腰まであり、目鼻立ちが整った顔立ちは凜として素敵だし、猛禽類のような金色の瞳だってとっても知的でしびれてしまう。元々は大鷲族で興奮すると背中から翼を出してしまうのだけれど、その羽根はとても軽くて柔らかい。

 漆黒騎士団団長で、目で殺すことができるほど恐れられているらしいのだけれど、私の前だといつもにこにこで抱きしめてくれる。愛しの旦那様。最近では目付きが悪くならないようにと黒縁眼鏡をしているお洒落さん。


「嘘だ、君は本当にナタリアなのか?」

「旦那様? はい、ナタリアですわ」


 よく見れば顔が真っ青で、唇も紫色だわ。体が冷えてしまっているのか額から玉のような汗が噴き出している。

 なんだか不思議な匂いがするわ。何かしら、アルコール? 甘い香り。


「──っ、ありえない。君が私の【運命のツガイ】でないなど──」

「お加減が悪いのですか?」


 そう思っていつものように、頬に手を伸ばそうとした。


「触れるなっ! ──あ」

「──っ」


 旦那様にとっては軽く手を振り払っただけだったのでしょう。でも、ただの人間である私にとっては体が軽く吹き飛ぶほどの力だった。もっとも私が小柄で女性だからというのもあったのだろう。


「ナタリア!」

「だんな──」


 そして場所も良くなかった。

 階段の上で話していたため、吹き飛ばされたのは階段の下──。旦那様もすぐに私が階段から落ちるのが視界に入ったのだろう。

 一瞬、固まったのが分かった。

 すぐに手を伸ばして、私の手を掴んで──くれようとしたけれど、かすかに指先が触れるだけで私はそのまま階段から落ちた。打ち所が悪かったのだろう、そこで私の意識はぷつりと途絶えた。

 意識が遠のく中で、旦那様が半狂乱になって暴れている物音や声が耳に届く。


「ナタリア、ナタリア──っ、君がどうして──昨日までは、確かにあったのに」

「番紋もあるのに、どうして君を、ツガイとして認識できないんだ!?」

「あの女の言葉通り、【運命のツガイ】は君じゃないのか!?」


 旦那様の声が胸に来る。やっぱり私が妻になったのは間違いだったのかしら……。

 もしやり直せるのなら、旦那様が壊れてしまう前に──。



 ***

 

 

「──んん」


 カーテンから差し込む日差しが眩しくて薄らと目を開けると、白いシャツに袖を通していた旦那様──イグナート様が視界に映った。

 眼鏡をかけておらず、いつもの凜とした姿にウットリしてしまう。死ぬ瞬間は走馬灯なるものが見えるらしいと聞いたことがあったけれど、それなのかしら?


 そんな風にボーッと、愛しの旦那様を見ていたら視線に気づいたのか、目が合った。カミソリのように鋭い目付きなのだけれど、見慣れると少し照れているのが分かる。


「起こしてしまったか、ナタリア」

「いいえ……。おはようございます……イグナート様」


 素早く私の傍までやってきて、額や頬にキスをする。「今日も私の妻が可愛い」と、いつも通りの夫にようやく違和感を覚えた。走馬灯にしては現実味があるし、頬に触れる手の温もりも本物だ。

 夢じゃない? 走馬灯でもないとしたら?


「今日は珍しく名前で呼んでくれたね。それも新鮮ですごくいいな。いや旦那様というのも、私の妻感が感じられるので捨てがたい……」

「だ、イグナート旦那様」

「全取り、そう来たか。さすが私の妻は聡明で賢くて、惚れ直したよ」


 朝から溺愛コースなので、頭の上にハテナが浮かび上がる。やっぱり夢じゃない。じゃあ、さっきの事故死は悪夢だった?

 でもとってもリアルだったわ。もしかして……予知夢とか。それとも時が巻き戻った? でも四大公爵家の持つ魔導具だったらあり得るかしら?


「ナタリア?」

「……っ、あの」

「無理しないでいいから、ゆっくり起きるといい。私は仕事があるから先に食事を取っているよ」


 チュッと唇にキスをする旦那様は、いつも通りだった。優しくて私がよく知っている旦那様だわ。頭が回らないのは空腹だからだと結論づける。

 ふと窓の外には旦那様から贈られたダリアの花が咲いているのが目に留まった。白いダリアはとても美しくて、秋の季節が近づくたびに旦那様と一緒に散歩したわ。


 あら? ちょっと待って。


 ついさっきまで私は、結婚記念日の前日だと認識していたわ。私と旦那様の結婚記念日は11白銀乃月13日目。

 悶々と考えている間に、侍女たちがやって来てきたので着替えることに。侍女の一人アンナに今日の日付を尋ねたら、不思議そうな顔をしつつも「霊星歴1879年10豊穣乃月12日ですわ」と答えてくれた。


 あの未来の一ヵ月前だとしたら、私のお腹にはもう……。11白銀乃月12日目の昼間、主治医から「妊娠四ヵ月」だと教えてもらった。

 とても幸せで早く旦那様にお伝えしたくて、それなのに旦那様はその日、私の手を払いのけた力が思ったよりも強くて、私は運悪く階段から落ちた──。


「──っ」


 今更ながらに思い出して、ゾッとする。

 あれは悪夢ではなく現実で、そしてどういうわけか過去に戻ってきた。どうして過去に戻ったのかは分からないけれど、あの事故が起こる一ヵ月前なら回避ができるのでは?


 ***


 着替えが終わったので、旦那様が食事をしている部屋に急いだ。

 冬の模様替え前の屋敷の廊下は落ち葉のカーテンレースが綺麗で、少しだけ気持ちが落ち着く。壁に飾ってある肖像画を通り、歴代公爵家の当主とその家族が視界に入る。

 ラリオノフ公爵家では大鷲族の血を色濃く受け継ぎ、四大公爵家の一角を担っている。獅子のバロワン家、人魚族のメイザース家、竜族のワン家が存在し、人外の能力と魔法を操ることができる。そんな彼らのツガイは人族から選ばれることが多い。魔法も身体能力も彼らの足下にも及ばない人族。しかし感情豊かで、心を穏やかにする特徴を引き継いでいるため、ツガイを得ることで彼らの攻撃性が溺愛に変わるらしい。

 それが彼らの言う【運命のツガイ】の最大の祝福(効果)らしい。ただこれは人である私にはピンとこないのだけれど、彼ら亜人族は匂いや見たら分かるという。晴れて【運命のツガイ】と結ばれると番紋が生じる。結婚の証のようなもので、双方が両思いにならないと番紋が現れない──と言うのが、この国での常識だったりする。


 でも一ヵ月後にそれが覆るのだ。旦那様は私を【運命のツガイ】であることを急に否定した。亜人族のツガイ認定は、匂いや見た目つまりは本能的な感覚に近い。生物的な感覚なのだとしたら、旦那様の思い込みで私を【運命のツガイ】だと誤認していた?

 あるいは本当の【運命のツガイ】に出会って、私が偽物だと思ったのかもしれない。だとしたらそれは悲劇だわ。あれだけ愛を注いでおきながら勘違いだなんて、悲しくもなる。それは私ではなく、私の纏っている匂いを見て選んだというのも大きいだろう。


 でも商人の娘が公爵家に嫁ぐことを許可されたのも、その【運命のツガイ】の相手だったからであって、もし人同士であれば大貴族と商人の娘では周囲から大反対されていただろう。

 旦那様の発言に、嘆いていても何も始まらないもの。

 まず優先順位と最悪の未来を回避する、そう無理矢理気持ちを切り替えることで、決意を固める。元々商人の娘だから、引き際というのは弁えているつもりだ。

 旦那様の居る部屋の前で深呼吸をした後、ゆっくりと扉を開けた。


 2.



「ああ、ナタリア。今日も愛らしくて可愛い」

「旦那様も騎士服がとってもお似合いですわ。思わず見惚れてしまいました」

「おや、それは光栄だな」


 食事をしていた旦那様はナイフとフォークを持っていた手を止めて、ぱぁと花咲いたような笑顔を向けてくれた。背中の羽根がばさーっと生じるのは、嬉しいからで大鷲族の習性だとか。

 傍には執事長の青年ボリスが今日の予定を話していた。私は旦那様と向かい合わせに座り、姿勢を正す。


「旦那様、お願いがあるのです(極めて自然に、まずは別居、あるいは実家か旦那様の領地に静養する感じで話を持っていく。それで問題の一ヵ月後はこの屋敷に居なければ、あの事件は起こらないわ! 我ながら完璧)」

「なんだい? 愛する妻のためなら、なんでも──」

「私と離縁してください」


 がしゃん、とナイフとフォークが皿の上に落ちる。旦那様は固まっているし、ボリスは数秒で復活したのか「ええっと、奥様?」と正気を疑う目を向けられた。

 あ。

 ああ、いけないわ。初手で最終手段を口にしてしまった……。思っていた以上に気持ちが逸ってしまっていたと反省する。


「ナタリア……今、なんと?」


 背中の羽根がばっさ、ばっさ揺れている。衝撃だったのかいくつか羽根も抜けてしまって痛ましい。さらに旦那様の表情が鋭くなり、凶悪犯並みに顔が強ばっている。本気で怒っている旦那様も痺れるほどかっこいい──じゃない。


「その……、私旦那様と同じくらいに大切な……(赤ちゃん)ができたので、その……だから、私が守らないといけないの。そのためにも旦那様と離れたほうが、旦那様のためでもあると思うのです」


 あれれれ?

 口を開けば開くほど弁明ができない。これはダメだわ。朝食前でお腹が減っていて語彙力が乏しくて、変な言い回しになってしまった。致命的にダメな単語も出てしまっている。どうして食後にしなかったのかしら。ぐすん。


「つまり……私以外に好きな男ができたと?」

「まあ、まだどっちだか分からないわ!」


 反射的に答えてしまった。察しのいいボリスは何か勘づいたみたいだけれど、旦那様は怒り心頭でゴゴゴゴゴッ、とすさまじい圧が。

 初手で失敗するなんて商人の娘失格だわ。やっぱり朝はしっかり食べないと頭は回っているようでもダメみたい。そういえば昔、お父様とお母様にも朝はしっかり食べてから商談に行きなさいって、口にパンを突っ込まれていたわ。

 あれって私のことを思って──もあるのでしょうけれど、私が朝食抜きだとポンコツだって知っていたのね。


「あの……旦那様ぁ」

「ナタリア、私は君と離縁するつもりはない。絶対に。話はこれで終わりだ」

「ま、待ってください」

「仕事がある。……ボリス、屋敷には誰も入れるな。ナタリアもしばらく外出は禁止だ」

「旦那様!」


 話を打ち切られてしまう。紙ナプキンで唇を拭いた旦那様は、さっさと席を立ってしまった。大失敗。何も食べていないせいか、立ち上がろうとして途端に軽いめまいに襲われる。

 椅子に座り直して「どう挽回すれば」と思考を巡らせようとするも、上手くいかない。


「ナタリア」

「え?」


 顔を上げると旦那様が目の前にいて、片膝をついて跪く。


「私に何か不満があるのなら直すし、努力もする。私のツガイはナタリアだけだ」

「旦那様……っ、私も旦那様が大好きですわ。すごく、すごく好きで毎日が幸せ……でも……」


 ああ、本当にお腹が鳴って思考が鈍ってしまう。どうしてか、うまく言葉にできなくて涙がポロポロとこぼれ落ちる。


「(ああ、私の馬鹿ぁあああ)……旦那様ぁ、ごめんなさい。私……っ」

「ああ、泣かないでくれ。私の愛しい人。君に泣かれてしまったら、困ってしまう」

「申し訳っ……」

「旦那様、お仕事の時間です。……奥様も少し戸惑っておられますし、朝食もまだなのですから今日の夜に改めてお話をするのはいかがでしょう?」


 ボリスの気の利いた言葉で、その場は解散となった。私は朝食をしっかりと食べて、夜の話し合いのために今度こと考えをまとめないと──。

 そう思っていたのに体がだるくて気づけば、うたた寝してしまった。



 3.イグナートの視点



 妻が可愛い。妻が超絶可愛い。妻が可愛いいいいい。

 結婚したらより可愛くて、愛らしくて、愛おしくて困ってしまう。明るいオレンジ色のふわふわの髪に、琥珀色の瞳、愛くるしい顔はいつも表情がめまぐるしくて、その一つ一つが愛おしくて堪らない。


 結婚するまで、いや【運命のツガイ】であるナタリアと出会うまで、人族など無価値な存在だと認識していた。脆弱で短命、臆病で、嘘つきで、狡猾。そのイメージをまるごと払拭したのは、ナタリアだ。

 【運命のツガイ】なんて信じていなかったし、どうでも良かった。そもそも眼光が鋭すぎて、異性とまともに目を合わせることが困難だったのに、妻は嬉しそうに微笑み返すのだから、【運命のツガイ】以前に、その言動だけで惚れない訳がないだろう。それなのに今日の朝、唐突に離縁したいと言い出した。

 どうして? 昨日まではあんなに……。

 騎士団施設に足を踏み入れつつ、ため息が漏れた。


「…………正直に言って死にそうだ」

「え、団長。不治の病にでもなったッスか?」

「違う。……妻が急に、私のためにも離縁した方がいいと言い出してだな」


 副団長のジークは兎族でトレードマークの垂れ耳に、クリーム色の髪、糸目の青年だ。好青年で私と違い、周りとのコミュニケーション能力が高い。

 そんな彼に珍しく愚痴を吐いたのだが、妙に神妙な顔をしている。


「珍しいッスね。団長を好きになる奇特な女性なんて今後現れないですし、どう見ても団長ラブな奥方だったのに……」

「お前は貶したいのか、慰めているのか、フォローしているのかどっちなんだ」

「事実を述べたまでッス」

「団長。本日も竜族のヴィルヘルミナ嬢がお会いしたいと、連絡が入ったのですが……」


 騎士の一人が入り口から駆け寄ってきた。


「私は既婚者だと何度言えば……会う気はない。仕事の邪魔だ、追い返せ」

「ハッ! 承知しました」

「……」


 はあ、まったく仕事で夜盗から助けて以降、何かとかの令嬢が会いに来ようとする。妻帯者だというのに、何考えているのやら。


「団長、もしかして奥方の耳に、竜族のご令嬢が押しかけているって噂が聞こえてきたんじゃないッスか?」

「は? 大体、噂ってなんだ?」

「そりゃあ、四大公爵家の一角であるワン家のご令嬢が熱を上げていたら、噂になるッスよ。まあ、ご令嬢の狙いは玉の輿であって、団長自身に惚れたって感じじゃないのは丸わかりだし、大半は【運命のツガイ】である妻帯者に無意味だって分かっているッスけど、それは亜人族の感覚で人族は違うッスからね」

「人族……」


 確かに人族には【運命のツガイ】だと感じる感覚はないらしい。だからこそ愛されていることに不安にもなると。そう言えばあの令嬢は人族の血が濃いので、名前もワン家にはそぐわない名を付けられたとか。不憫ではあるが、こちらの家庭を引っかき回すのなら、容赦はしない。


「と・に・か・く、人族には愛情表現をしっかりすることが一番ッス。甘い言葉や贈り物とかではなく、本気だと分かってもらわないとダメッス!」

「妻を不安にさせない」

「そうッス。まあ、結婚前のマリッジブルーとか、あるいは子供ができると少しネガティブになるとか」

「子供……(ナタリアとの子供……天使だな、超絶可愛い)」

「団長?」

「……妻に会いたくなってきた」

「今日は定時で仕事を終わらせるようにと調整するので、しっかりと話し合いをするッスよ!」

「ああ。頼む」


 そこでいつもは話が終わるのだが執務室に入った瞬間、客人用のソファに国王陛下が腰掛けていた。後ろには近衛騎士まで勢揃いで、いつから居たのだろうか。


「やっと来たか、ラリオノフ公。いや騎士団長」

「国王陛下!?」


 驚きつつも、副官のジークと共に片膝を突いて頭を下げる。アンブローズ・オルブライト・エイデン国王陛下。金髪に獅子の耳、深紅の瞳、がっしりと体格で強面に見えなくもないが、非常に温厚かつ有能な王は民にも臣下にも慕われている。

 そんな国王陛下は子煩悩で、今年四歳になるブルーノ第三王子を抱っこしている。微笑ましい絵面だが、いったいどんな要件なのだろうか。騎士に興味を持ったご子息のために足を運んだ?


「陛下、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「そうかしこまらずとも良い。……相変わらず眼光が鋭いな。ブルーノが怖がるでは無いか」

「そういう顔なので」

「だが」

「そういう顔なので」

「陛下、団長の表情が崩れるのは奥方の前だけッス」

「そうか。そうだな。……そのラリオノフ騎士団長の奥方についてなのだが、ブルーノが一度会いたいと言い出してだな」

「お断りしても?」


 近衛騎士たちの表情が強張ったがどうでもいい。陛下も苦笑しつつ、手を上げて近衛騎士の動きを制した。


「それは困るな。なにせ滅多に我が儘を言わないブルーノが、公爵夫人に会いたいと言っているのだ」

「妻に?」

「なにこの子が欲しているのは母親ではなく、ツガイのほうだ」

「……?」


 基本的に【運命のツガイ】となる相手が、複数人いることはまずない。となれば考えられるのは、妻の子、つまり私の──!?


「へ、陛下。まさか、妻が妊娠し、それも殿下のツガイになる可能性がある……と?」

「そのまさかだ。どうやら息子は今日不思議な夢を見たようで、【運命のツガイ】に近々出会えること、そしてその母と子──つまり妊婦が危険な目に遭う可能性があるのだとか」

「なっ……」


 後頭部を強打されたような衝撃が走った。ナタリアと私の子に、危険が!?

 ふと今朝の妻の言葉が脳裏によぎる。


『その……、私旦那様と同じくらいに大切な……(赤ちゃん)ができたので、その……だから、私が守らないといけないの。そのためにも旦那様とはお別れしたほうが、旦那様のためでもあると思うのです』

『つまり……私以外に好きな男ができたと?』

『まあ、まだどっちだか分からないわ!』


 大切な人。てっきり異性だと思っていたが、私とナタリアの子供なら、私と同じくらい大切だと言われても納得できる。それに『まだどっちだか分からないわ』という発言。思い返せば、今日の妻はどこか様子がおかしかった。

 ジークが言っていたとおり、妊娠してネガティブになっている? いやナタリアは私のためと言っていた。これは──。


「王城にも妊娠した上級侍女、女官がいたのも、ブルーノは気づいたのだ。そしてその二人から話を聞くと、双方ともに今朝方妙な夢を見たという。詳細は分からなかったが、未来予知のような少し先の未来だとかで、その二人も近い未来事故や事件に巻き込まれる可能性があるから、と辞表を人事課に掛け合っていたのだ」

「夢……(ナタリアの様子がおかしかったのも、離縁を言い出したのも今朝だ。他の侍女と女官も退職を選んだ。……現状を変えることが未来を変えると思った? あるいは王都にいることで、身の危険を感じた?)」

「その様子を見るに、夫人も何か思うところがあったのかな?」


 陛下の鋭い指摘に「そのようなところです」と言葉を濁した。さすがに「離縁したい」と言われたなど、言葉にしたくなかったので誤魔化した。

 歯切れの悪い返答に、陛下は怒るわけでもなくブルーノ王子に視線を向けた。王子は陛下とそっくりな深紅の瞳は、私を見返す。


「ぱぁてぃーをするから、ふじんも、きてほしい」

「ブルーノ! そうか。そうだな。急に呼び出すような形だと夫人も驚いてしまうことを失念していた。夫人が妊娠している可能性も考慮して、当日は座る場所や、休憩室も確保するだけではなく、護衛の数も必要だな。さすが私の子だ。なんと聡明で賢いのか」

「ちちうえなら、そうかんがえるとおもった」

「あははは、そうか。それは嬉しいな」


 一気に子煩悩まっしぐら──父親の顔で、場の空気が和んだ。確かに用件も無く王城に呼び出すよりは、良いのかもしれない。だが離縁を考えている彼女が承諾してくれるだろうか。離縁、嫌だというか彼女と別れるなんて無理だ。


「数日後に王家主催のパーティーを行う。夫人と一緒に参加するように」

「陛下。……善処いたします」


 そう答えながら、まだ仕事も始まっていないのに、もうナタリアに会いたくなった。思えば今日は行って来ますハグも、キスも無かったのだ。

 ああ、帰りたい。

 ふと王子の両手に灰色の毛玉のようなものが見えたが、気のせいだろうか。


 4.



 やってしまった。

 弁明の余地なく、なんてことを旦那様に言ったのかしら……。凹んで、反省もして、次こそは失敗しないと意気込んだのに、眠気に負けて寝入ってしまった。しかも三秒で夢の中。

 離縁は最終手段だったのに、初手で出す一手を間違えたわ。まずは一ヵ月後の話を……信じてくれるか正直分からないけれど、説明をして打開策を考えないと。


 最悪私は離縁、あるいは別居してでも、お腹の子と旦那様が悲しむ未来だけは回避しないと。

 


 ***



 そして夜の話し合い。今回はしっかりと夕食を摂ってから。二度も同じ失敗はしないわ。でもなんて切り出すべきか。

 悩んでいた私に、ボリスが助け船を出してくれた。


「奥様。私も色々調べてみたのですが、もしかして怖い夢でも見たとかでしょうか?」

「ボリス?」

「え?」

「人族は、自分の周囲に危険が迫ると夢に見て警告すると聞いたことがあります。もしかして、このままお二人が夫婦でいると、何か良くないことが起こるなどの暗示が出た。それでやむにやまれず離縁と言い出したのではないでしょうか?」


 す、すごいわ! 占い師も真っ青の観察眼。そしてそんな能力、人族でも稀なのですが……話を切り出すには素晴らしい振りだわ。


「恐れ入ります」

「(何も言っていないのに、返事を返す所も優秀すぎて怖い。でもほとんど合っている)……その実は、今日不思議な夢を見て……。一ヵ月後の結婚記念日前日……、旦那様が帰って来た時から様子がおかしくて……急に私が【運命のツガイ】じゃないって……」

「は」

「え」


 ああーーーもう、私の馬鹿。なんで隠そうとしたことを先に口にしちゃうの!


「ナタリアが……?」

「そのような悪夢を……」


 旦那様は顔を青ざめて固まっている。対してボリスは何かしら考え込んでいた。信じてくれただろうか。私ですら信じ切れない部分はあるけれど、でもあれは現実だった。あの未来だけは回避しないと。どう言えば信じてくれる? もっと詳しく言えば──。


「ナタリア」

「あっ……」


 旦那様は私の隣に座って、そっと抱き寄せた。旦那様の温もりが心地よくて、すごく好きだと実感する。


「君は私が選んだたった一人のツガイだ。それを……覆すことが起こるというのか? にわかには信じられない」

「旦那様……(そう……よね。普通は信じられるわけ……)」

「でも君がこんなに怖がっているんだ。一ヵ月後に何かあるのかもしれない」

「旦那様!」


 ギュッと抱きしめ返す。ああ、やっぱり旦那様が好き。すごく好き。もし私が離縁したら、きっと後妻希望者が殺到するに違いないわ。そんなの見たくない!


「旦那様、本当は離縁なんてしたくないです……。今朝は……その失言でしたわ」

「ああ、ナタリア。自分から抱きついてきて嬉しいよ。嫌われたんじゃないかと、今日一日気が気じゃなかった」


 眉がしょぼんと下がるので、旦那様の額に、頬に、唇にキスを繰り返す。キスを重ねるたびに旦那様の血色が良くなっていく。それにほんのりと頬が赤くなって、目が少し潤むのが好きで堪らない。ほんの少しの目の揺らぎで、旦那様の不安が手に取るように分かる。


「旦那様……っ、私は旦那様が大好きですわ。今朝は……頭が回っていなくて、その(空腹とは言えないのが……恥ずかしい)いろいろ混乱してしまって……ごめんなさい」

「いつもと様子がおかしいと思っていたのに、気遣ってやれなくてすまない」

「あら、旦那様はいつだって私のことを気にかけて大事にしてくださいますわ。それなのに私ったら、先走って旦那様を傷つける言葉を口にして……」

「いいんだ。あの言葉にもナタリアなりに考えての発言だったのだろう」


 ようやく旦那様に謝ることができて、旦那様もそれを許してくれた。私の頬に旦那様の手が触れる。割れ物を取り扱うように丁寧で、私は旦那様の手がすごく好きだ。


「しかし一ヵ月後か」

「その……運命の人に出会うなんてことは……」

「それはあり得ない。私はナタリアを見て、ナタリアと一緒に過ごしてもっと傍に居たい、好きなことや、楽しいことを教えてほしい。それ以上に、こんなに可愛くて、愛おしい人を他の誰かに取られたら、嫉妬に狂いそうにもなった。私がこんなに取り乱すのも、心を揺らすのはナタリアだけだ」

「私にはツガイとしての感覚はわかりませんわ。でも旦那様を愛しています。だからこそ、このままでは旦那様を傷つけてしまうでしょう。それが嫌なのです(それに私はお腹に宿った命を守りたい)」

「……別れるなど、その悪夢よりも先に私の心が死んでしまう。離縁以外に未来の出来事を変える方法はないだろうか」

「奥様、夢の内容をもう少し詳細に教えていただけませんか? そこにヒントがあるかもしれません」

「わかりました」


 できるだけ会話も含めて伝えたところ、「あの女」と「嗅いだことのないアルコール、甘い香り」の話に何か思い当たる節があるらしい。南の国から怪しい薬も出回っているとか。


「《クレセントラビット商会》など南の国の商人が、何かと貴族たちの屋敷に出入りしていると小耳に挟みました」


 ボリスの情報収集力すごいわ。まるで偵察してきたみたい。私の話はあっさりと二人に受け入れられていた。なんだか拍子抜けしてしまったけれど、信じてくれてよかったわ。


「こうなってくると……国王陛下の提案を受けるしかないだろうな」

「旦那様、奥様と一緒にパーティーに参加してみては? もし旦那様と奥様の仲を引き裂こうとしている者がいるならば、尻尾を見せるのではないでしょうか?」

「ぐっ……(そういう理由でパーティーに駆り出すのは……しかし、陛下の意向もある)妻を化け物の巣窟に連れて行かなければならないなんて……。私の可愛くて愛おしい妻が、毒牙にかかったら……」


 旦那様は苦悩するも、ボリスは「旦那様が傍に居れば問題ないのでは?」としれっとした顔をしている。私もお腹の赤ちゃんや旦那様を守るためなら──。


「旦那様、私もボリスに賛成ですわ。朝は最終手段を口にしてしまいましたけれど、私だって旦那様とお別れしたくないです。でも恐ろしい未来を回避したい。それなら悪夢の原因を断ち切るためにも、多少の危険を冒してでも動くべきでは?」

「ナタリア……。でも私は心配だ。君はこんなに愛くるしいだろう、他の男にダンスや声をかけられただけで……一族もろとも滅ぼしたくなる」

「ならないでください」

「そうです。そこまでする気なら分身魔法(ソキウス)を奥様の傍につけておけば良いのではないでしょうか」

「そきうす?」


 聞き慣れない言葉にジッと旦那様に説明を求めたのだけれど「上目遣いが、狡い。可愛い」と言う言葉が返ってきた。そうではないのだけれど。


「旦那様?」

「見たほうが早いだろう。分身魔法(ソキウス)


 ぽん、と旦那様の手のひらに鳶色の小鳥が現れた。つぶらな瞳で、ふわふわで小さくて可愛らしい。「チチッ」と鳴いた後で、その小鳥は翼を広げて私の肩に止まった。可愛い。

 てててっ、と私の頬に触れる羽根はとてもふわふわで、旦那様と同じ香りがする。思わずキスをすると小鳥は「ピー」と照れた。


「妻からのキス、妻が可愛すぎる」

「旦那様……(分身魔法だから感覚共有しているって説明を放棄しましたね)」

「旦那様。この子と旦那様がいれば大丈夫ですわ」

「うん。君に手を出そうとしたら、反射と電撃で痺れるようにしておこう」


 それは大丈夫なのでしょうか。確実に襲われる前提なのが少し怖いですが……。そうと決まったらと、旦那様は仕立屋や職人に連絡を取り始め──私のドレスを特注で作ると言い出した。

 ここぞとばかりに旦那様に色んなドレスを着てほしいと頼まれて、結婚式以来とんでもないドレスができる予感が。

 その後もパーティーでの打ち合わせなどで、旦那様に妊娠していることをすっかり伝え忘れてしまったのだった。


 5.


 パーティー当日。

 私は白を基調としたドレスで、レースの端の部分だけ黒と金の刺繍をふんだんに使った、とってもお洒落かつお金がかかっているのが分かる出来映えだった。お腹の赤ちゃんのことも考えてコルセットではないけれど、腰のラインがよく見える形のデザインにして貰えてよかったわ。

 首元には光沢のある黒の宝石に、耳飾りは金と黒とシンプルな飾り付け。髪は編み込みでまとめてもらって、ダリアの生花を使った魔法の花で微かに発光して、敵意があると防護壁が展開する即席魔導具でもある。


「ああ、ナタリア。なんて美しいのだろう。妖精か、いや天使。女神にだって負けない」

「だ、旦那様だって、正装がかっこよすぎですわ」


 グレーの貴族服に身を包み、コートの襟にはダリア形をしたラペルピンを付けている。ダリアの色は琥珀色で、私の瞳の色だ。夫婦揃ってお互いに自分の髪や瞳の色を付けているのは夫婦円満の証でもある。特に亜人族にとっては心から愛していないと、身につける物にも抵抗するらしい。

 だからこそ周囲に見せつけるには、うってつけらしい。


「わあ」


 心躍るオーケストラの演奏に、煌びやかなパーティー会場。輝くシャンデリアの下で、カラフルなドレスが目に入る。社交界は久しぶりだけれど、旦那様と肩にちょこんと乗っている小鳥さんがいれば心強いわ。


 周囲の視線を受けつつ、私と旦那様はダンスホールに向かった。ダンスは得意ではないのだけれど、旦那様がリードしてくれるので、ちょっぴり緊張するがわくわくのほうが大きい。

 今のところ注目を浴びてはいるだけで、特に変わったことも無かった。私は旦那様の金色の瞳を見つめる。射貫くような鋭い眼光だけれど、怖くはない。むしろ「大丈夫か」と心配してくれる。とても優しくて、ちょっと過保護な旦那様だ。しっかりとリードしてもらい、気づけば周囲なんて気にならないほど旦那様に夢中になる。

 くるりとターンをする時だって旦那様に身を任せれば、私が完璧に踊っているように見えているだろう。旦那様はいつだって私に魔法をかけてくださるわ。


「ナタリア、綺麗だ」

「旦那様も素敵ですわ」


 小声で囁く旦那様に言い返す。少し照れて頬を赤くする旦那様が愛おしくて、ステップを踏みながら隙を見て頬にキスをする。ビックリしたのか目を丸くする旦那様も大好きだ。

 でもちょっと調子に乗ってしまったせいで、その後ダンスを続けて二曲も踊ることになるとは思わなかった。



 ***



「ふあぁ」


 旦那様が用意してくださった控え室に着くなり、間抜けな声が出てしまった。淑女としてはしたないのだけれど、今日ばかりは許してほしい。旦那様はソファに私を座らせてくださって、飲み物や軽食を取ってくると部屋を出て行ってしまった。

 か、過保護さが増したような?

 一人の体じゃないって、妊娠に気づいている? バタバタしていたのと、ちょうど主治医が留守で診てもらうタイミングがなかったのよね。


 それにしても、ダンスが終わったら人に囲まれて、ダンスよりも挨拶やダンスの申し込み、お茶会のお誘いを断るのに体力を消費したと思う。思えばお茶会を開いても少人数かつ、学院時代からの顔見知りのみだったのよね。それがいつの間にか紹介制だと思われたのか、幻の花茶会に参加したいとか……。幻の花茶会ってなにかしら?

 私はあまり人前に出ず、でも編み物や刺繍、小物のデザインは好きだから実家の商会経由で仕事を手伝ったりするのだけれど、それが巷で人気とか聞いてないわ。お父様もお母様も今度会った時に聞いておかなくては……。今日確か来ているはず。


 そう思っていた矢先、控室に国王陛下と第三王子ブルーノ王子、近衛騎士たちも押しかけるようにやって来たので、何事かと固まってしまう。


「こ、国王陛下。本日は──」

「ああ、今は時間が惜しいから、挨拶は不要だ。さて、ブルーノ」

「はい。ちちうえ」


 国王陛下は抱っこしていたブルーノ王子をそっと下ろした。まだ四歳になったばかりなのに、凜としていてきっと将来は素敵な殿方になるだろう。正装もしっかり着こなしていて、ただ気になったのは両手に抱える灰褐色の毛玉だ。なんというか王子とは不釣り合いなものに見える。


「おはつにおめにかかります。ぶるーの・おるぶらいと・えいでんです」

「ブルーノ殿下、ご挨拶いただき光栄でございます。イグナート公爵の妻、ナタリアと申します」


 挨拶もしっかりとできている王子に感動しつつ私も挨拶を返したのだが、王子はどこかそわそわしている。王子と同じくらいの目線に合わせて屈んでいるのだけれど、何か言いたいことでもあるのかしら?


「ブルーノ殿下、私に何か話したいことでも?」

「はい……ほんじつは、ふじんに、かれをみてほしくて……」


 そう言って両手を私に差し出した。そこには毛玉ではなく震えてうずくまる小さな雀がいた。ボロボロでとても弱っている。私の肩に居る小鳥は何も反応しないので悪いものではないだろう。


 そっと羽根を撫でると、今まで震えていた灰褐色の雀がビクリと大きく動いた。顔をあげて眼光の鋭い瞳が私を射貫く。それは金色の瞳で見たことがある。


「イグナート旦那様?」

「──っ、ちゅんんん!」


 今まで死にそうなほど弱っていた灰褐色の雀は飛び上がり、私の傍に歩もうとするが衝動を堪えているように見えた。そんな葛藤している灰褐色の雀にそっと触れた瞬間、訳も分からず涙が頬を伝ってこぼれ落ちた。


 深い後悔と、自分自身への怒り。懊悩が伝わってくる。

 ああ。彼、いいえ、この方は──。


()()()。そんなに自分を責めなくても、あれは事故だったのですよ」


 ふと気づいたらそう呟いていた。ボロボロの羽根に触れた瞬間、彼が何者なのかはっきりと分かった。こんな姿になってまで、私を追いかけてきてくれたのね。一ヵ月後、一度私が終わってしまった世界のイグナート様──旦那様。どういう法則あるいは魔法を使ったのかは分からないけれど、この旦那様は私が一度終わってしまったことを知っている。そしておそらく私が時を逆行したのは、旦那様が関わっているのね。

 両手で抱きしめて、そっと頬に近づけた。


「ちゅっ!? ちゅんんん!」


 目を潤ませて震えた声で鳴く。だいたい言いたいことが分かってしまう。艶のある黒髪が灰褐色になって、白髪も少しあるわ。

 触れるたびに微かに震えて。

 体がとっても軽いし、とっても冷たい。たくさん傷ついて、魂をすり減らして、それでも私に会うためにここまで来てくれたのね。

 そう思うと涙が止まらなかった。


 私はこの人を置いて逝ってしまったのだ。この不器用で、寂しがり屋で、優しくて、過保護で、愛情深い大事な夫を残してきてしまった。


「旦那様……っ」


 あの日、旦那様が手を伸ばして助けようとした姿を思い出して、胸が痛んだ。

 私の両手の中で震えている旦那様は、ずっと苦しんで、後悔して、ここまで来た。来てくれた。だから精一杯私もその思いに応えたい。

 今、旦那様がほしいのは罰なのかもしれない。責め立てて、どうして助けてくれなかったのか。どうしてあの時に、守ってくれなかったのか。流れ込んでくる感情は後悔と、自分自身を許せない強い思い。

 罰を望んでいたとしても、私はその願いには応えられないわ。だって痛々しいほど傷ついた旦那様の心に触れるたび、涙が溢れて止まらない。

 小さく震える灰褐色の雀にキスをする。


「──!?」

「旦那様、旦那様を嫌いになるなんてありませんわ。今も、ずっと変わらずに私の中で大好きなのは旦那様です。あの時、旦那様の異変に気づいたのに……置いて逝ってしまってごめんなさい。あれは旦那様のせいではないわ、事故だったのですから。だから、自分を責めるのも私に謝罪するのもなしですわ。そうしないと、ううん、そうしなくても私が一方的に旦那様を愛でて、愛して、キスをしてギュッと抱きしめて離しません。これからはずっと、一緒です」

「ちゅううっん、ちゅんんん!!」


 ふわふわの羽根を愛でて、キスを繰り返すと少しだけ元気になったようだ。弱々しい羽根を広げて、好きだとアピールしている。どんな姿になっても旦那様は、旦那様だと思うと胸がホッコリと温かくなった。でも感動的な再会の後は、必ずしもハッピーエンドにはならないらしい。灰褐色の雀の羽根がボロボロと落ちていく。


「──っ」

「ちゅん、ちゅんん」

「ダメ。そんなこと言わないで。いなくならないでください」

「ちゅん」


 旦那様は震える羽根で私の涙を拭ってくれた。頬にすり寄って、キスも。でも私の両手から飛び去ってしまう。その足指が崩れかけているが見えた。


「旦那様! イグナート様! 待って! ダメ!」


 そう呼んだと同時に正装姿の旦那様が、部屋に戻ってきた。両手には料理と飲み物を持っている。


「イグナート様!」

「ナタリア? 少し遅くなってしま……──っ!?」


 灰褐色の雀は旦那様の中に飛び込み消えてしまう。慌てて旦那様に駆け寄ろうとしたけれど、一歩前に出た旦那様が私を抱きしめる。

 両手に抱えていた料理と飲み物は、後ろから部屋に入ってきたボリスが見事にキャッチしていた。

 旦那様がぎゅうぎゅうに私を抱きしめて離さない。胸板に押しつけられて少し痛いけれど、背中に手を回して少し震えている。ばさああ、と羽根が背中から生えて、羽根が部屋に舞った。翼は私ごと隠すように、守るように、包み込む。


「旦那様」

「ナタリア、ナタリア……なぜだかわからないのだけれど、無性に君を抱きしめて、しまって……でもすまない。しばらく、私が落ち着くまで何も言わずに、このままでも良いだろうか」

「──っ」

「ナタリア?」

「──っ、はい。もちろんですわ。大好きです。……もう、どこにも逝かないでください。私もどこにも逝きませんから」

「ああ」


 どうして未来の旦那様が過去にいるのか。国王陛下とブルーノ王子はどこまで知っているのか、どうやって時を逆行させたのか。疑問ばかりが募るけれど、未来の旦那様が今の旦那様の中に戻って、独りぼっちのまま消えないで良かった。



 ***



「お、お見苦しいところをお見せしました……」


 王族の前で何という失態を!

 そう思いながら、私は隣に居る旦那様と手を繋いだまま、国王陛下とブルーノ王子に頭を下げた。


「はははっ、かまわないさ。ブルーノからも今回の件は聞いている。さて、ラリオノフ夫人。君は逆行前の記憶があるのだね」

「!?」


 ずっと黙っていた国王陛下は、このことを確認するために待っていたのだろう。旦那様と繋いでいた手に力が入る。旦那様に視線を向けると「正直に話してくれ」と応えてくれた。私を気遣ってくれる金色の瞳に笑みを返しつつ、国王陛下に向き直る。


「はい。一ヵ月後、不幸な事故があったことを鮮明に覚えていますわ」

「そうか。……では、ブルーノ」

「はい。……ふじん、ぶしつけなおねがいなのですが、……その」

「?」

「ギュッとして……ほしい」

「ええっと」

「私からも頼む」


 ブルーノ王子のよく分からない頼み事だったけれど、まだ幼い彼には母親のような女性の温もりが恋しいのかもしれない。国王陛下からも頼まれたので、旦那様は何か言いたげな顔をしていたが、私の手をそっと離した。

 改めてブルーノ王子の前に跪いて、そっと抱きしめる。

 子供が生まれたら、こんな風に抱きしめるのかしら?

 そんなことを思い幼い王子を包み込んだ。王子は一瞬だけ体を強張らせていたが、すぐに力が抜けて私に身を預けてきた。


「ふっ……うっ……」

「ブルーノ王子?」


 今度はブルーノ王子が声を上げて泣き出してしまい、殿下が落ち着くまで背中を撫で続けた。堰を切ったかのように泣き出すのは、さきほどの私と同じように殿下も未来の記憶を持っているのだろうか。

 それらの事情が知るのは、もう少し先だった。



 6.イグナートの視点2


 あの日、妻の手を振り払ったせいで、私は最愛の妻と生まれてくるはずの我が子を永遠に失ってしまった。【運命のツガイ】を失うと孤独に耐えられず、発狂してしまう者もいる。事故や病死であれば持ち直す者もいるかもしれないが、私の場合は──私が、妻を死に追いやった事実があった。

 ()()()()()()()()()()()()


 歪狂愛(アムール・トーデュ)という香水によって、世界は滅亡した。かの香水は【運命のツガイ】となる相手をねじ曲げる効果があり、副作用として狂戦士(ベルセルク)と化して理性が利かない。衝動のままに破壊行為を繰り返す。

 私は、私の妻を死に追いやった自分を許せず、また彼女を罠にかけて夫人の座を奪おうとしたヴィルヘルミナ・ワン嬢および竜族を滅ぼした。捕らえた令嬢は一族が滅ぶまで生かし、「お前のせいで一族は滅ぶのだ」と罵声を浴びせて、できるだけ苦しめて殺した。


 その頃には秩序などなく狂戦士(ベルセルク)たちしか残っておらず、自分ができるだけ酷たらしく死ぬために強者を殺して行くも、死ぬことができず生き残ってしまう。

 そうやっていつしか魔王と恐れられ、恐怖による秩序ができあがっていた。妻の愛していたダリアの花が咲くような土地は地上から消え失せ、血の匂いと、瘴気と霧だけの漆黒の土地があるばかり。いつの間にか頭には捻れた角が生えて、羽根も三対六翼になっていたが、妻が愛していたふわふわ感はない。むしろ刃のように鋭く、簡単に命を奪う兵器となっていた。


「ナタリア……」


 孤高の玉座に座りながら思い出すのは、彼女との甘く懐かしい日々ばかり。ひび割れた記憶に縋り、夢を見る。もう戻ることのできない時間。

 何よりも大切だった宝物。

 そんな私の元に金髪の青年が訪れた。ふとアンブローズ国王陛下を彷彿とさせる青年は深紅の瞳に希望を宿し、私を見返す。


「魔王、いえイグナート殿。我が王家には時戻しの魔法という禁術があります。それを使えば、過去をやり直すことができるかもしれません」

「過去を? それで王子として栄華を誇る人生をやり直したいと?」


 鼻で笑った。だが、王子は違うと言い切った。


「王位も、権威も何もいらない。……ただ、私は生まれるはずだった【運命のツガイ】に会いたいのだ。出会って、顔を見たい、話をしたい、触れたい……そんな未来がほしい」

「それが私と何の関係が? ああ、時戻しの魔法を使うための魔力が自分自身では足りないから、私に声をかけたのか」


 【運命のツガイ】。

 自分が人族であれば、あんな終わり方を妻にさせなかった。たとえ世界が滅ぶとしても、あんな──悲しい顔をさせなかった。

 手を弾いた時の妻の顔を、私は生涯忘れない。

 驚いて目を見開いて、次の瞬間拒絶されたことに傷ついた顔をしていた。手を伸ばしたのに届かなかった時の諦めた──困った顔。死に向かって瞳に光が消えていく姿。冷たくなっていく体温も、全部覚えている。


 一人で逝かせてしまった。

 あの時、私も一緒に死ねば良かったのに、どうして私は今も生き残っているのだろう。そうだ、凄惨な終わりを望んだ。それが終わっていないから、ずるずると生き地獄を味わっているのだ。できるだけ酷い死を。最愛の妻を殺してしまった男にふさわしい罰を。


「罰がほしいのなら、貴殿の奥方に下してもらうことも可能だ。この時戻しの魔法という禁術は、使用者とその近しい者たちの記憶を残したまま時戻しを行う。つまり時戻しを行った者たちの中で、この未来を覚えている者がいるということ。貴殿が術者の一人として協力するなら、間違いなく奥方は記憶を残したまま死に戻りをする」

「妻に……」


 妻にまた会える。妻が私を終わらせるのなら、喜んで受け入れよう。気まぐれだった。

 王子の【運命のツガイ】候補は生まれる前に亡くなったらしい。それがあの忌まわしい歪狂愛(アムール・トーデュ)が出回った頃だとか。


 占い師の話では候補は五、六人いるらしい。その中で事故死した者。

 そうまでして【運命のツガイ】に会いたいだろうか。王子は王子で並々ならぬ執念を持っていた。

 私は妻に、会いたい。会って謝りたい。魔王と呼ばれる前だったら飛びついただろう。けれど心が壊れた今は罰を下してくれる死神として、妻との再会を望んだ。


 そう──妻と再会するまでは、そう思っていた。



 ***



「ちゅ? ……ちゅんん!?」


 私は自分の肉体ではなく薄汚れた毛玉のような雀として過去の時間軸に戻って来た。私は魔王として大鷲族とは外れた存在の魂の形をしていたため、自身の魂に戻れなかったらしい。あまりにもイレギュラーだったが、それでも妻に会えるのならもう何でも良かった。

 それになのに。

 私が何者なのか分からないと思ったのに。

 目が合った瞬間、妻は私を抱きしめて泣いた。


「イグナート旦那様?」

「──っ、ちゅんんん!」


 どうして、分かったのだろう。

 妻は人族で、匂いで私が何者か分からないはずなのに。【運命のツガイ】だと匂いで、直感で分からないのに、どうして私だと分かるのだろう。でもいい、私を見て怯えて、怒って、罵って──。


()()()、そんなに自分を責めなくても、あれは事故だったのですよ」


 どうして君は、そんなことを言うのか。

 あれはどう考えても私が君を殺したようなものなのに。

 君を傷つけて、死なせてしまった。

 それなのに、君は──。


「旦那様、旦那様を嫌いになるなんてありませんわ。今も、ずっと変わらずに私の中で大好きなのは旦那様です。あの時、旦那様の異変に気づいたのに……置いて逝ってしまってごめんなさい。あれは旦那様のせいではないわ、事故だったのですから。だから、自分を責めるのも私に謝罪するのもなしですわ。そうしないと、ううん、そうしなくても私が一方的に旦那様を愛でて、愛して、キスをしてギュッと抱きしめて離しません。これからはずっと、一緒です」


 私のずっとほしかった言葉を、君はどうしてくれないのだろう。

 どうして私を罵って、怒って、嫌いだと──言わないのだ。君に愛される資格など私にはないというのに。

 妻の、ナタリアの言葉一つ一つが、私の強張った心を潤す。

 心が枯れた? 壊れた?

 違う。ただ心が凍っていただけ。いや壊れていたとしたら妻が癒した。完全に私の認識不足だったのだ。私だけではなく、妻を悲しませて自分だけ不幸に酔って恥ずかしい。

 ああ、もし叶うのなら、今回は私のような愚かな過ちを犯さず、私の知る未来とは違う選択肢を──。


 その思いだけで翼を広げて、私は過去の私へと戻る。妻と再会して魂の形が戻った今なら、かつての私に戒めぐらいには役に立つだろう。

 そして魔王の記憶をどこか他人事のように客観視しながら、私は受け入れた。救えなかった未来の末路を、絶望を、罰を、願った愚かな男の生涯を背負った。



 ***



「つまり私とナタリアの子が、殿下の【運命のツガイ】の可能性が高い……と?」

「そうだ」


 よりにもよってこの王子の伴侶が私の娘の可能性が高いとか、頭が痛くなってきた。この男の【運命のツガイ】に対する執念は狂っている。正直、まだ生まれてもいない我が子の伴侶が決まっているとか認めたくない。


「まあ。でも可能性があるだけなのなら、生まれてから場を設けることにしましょう」

「ふじん……」


 うるっと泣きそうな顔をしているが、妻はそっと王子の頭を撫でた。


「この子が生まれた瞬間から、そのように決められるのは好きではありません。それに【運命のツガイ】だったとしても、私も夫もちゃんと恋人としてお付き合いをしてから、結婚をしておりますわ。お互いの気持ちを尊重できずに一方的な愛情の押しつけは許しません」

「凜として強気な妻が愛おしい」

「旦那様ったら」


 そうだ。【運命のツガイ】だからといって婚姻を迫ったら断られて、友人から関係をスタートしたのだった。懐かしい。


「そうしているあいだに、うばわれたくない」

「あら、王子だけしか選択肢がないのと、大勢の中から貴方様を選ぶのでは、全然違うと思うのだけれど、生まれてくる子にたくさんの選択肢を与えてくださらないの?」


 妻はどこまでも聡明で、芯がしっかりしていて強い。朝ごはんを食べないと途端に嘘がつけなくて、本音をたくさん言ってしまう可愛い人だけれど。

 王子の狂人めいた思考を和らげて、癒やす。

 あっという間にブルーノ王子に気に入られ、ナタリアの知名度はもちろん王家の後ろ盾を得たことで、ちょっかいを出そうとする令嬢はいなくなった。


 もっともヴィルヘルミナ・ワン嬢は私の妻に危害を加えるつもり満々だったので、さっさと処理をした。一族もろともはさすがにやり過ぎだと判断し、《クレセントラビット商会》と繋がりがあった者、売り出す予定だった歪狂愛(アムール・トーデュ)のレシピや製造を知る者は全てを闇に葬った。

 今度こそ、守り切る。そう私は私の魂に誓ったのだから。



 7.


 パーティーから半年。

 私が危機を感じていた一カ月は拍子抜けするぐらい何もなかった。歪狂愛(アムール・トーデュ)という香水もいつの間にか取り締まりが終わっていたらしく、第一級危険物として生成しようとした者は問答無用で極刑になるという。相当危険な物だったらしく、そんな理性が吹き飛ぶような香水を浴びて、ギリギリ理性を保っていた旦那様はやっぱりスゴイのだと思う。


 あの日以来、旦那様は小鳥を私の傍において、できるだけ一緒の時間を作ってくれる。心なしかその小鳥は目付きの悪い灰褐色の雀なのだけれど、とっても可愛らしい。

 時々、旦那様に反抗的なのは、使い魔的なじゃれ合いなのかしら?


「ねえ、旦那様」

「なんだい、ナタリア」


 少しずつ大きくなるお腹を眺めながら、今更ながらに怖いことを思い至った。


「【運命のツガイ】って、生まれる前から性別ってわかるものなの? 私は娘でも息子でも旦那様と同じくらい愛しているけれど」

「あの殿下のことだから、たぶん直感的な? もっと狂気じみた執念的な何かで察知しているのでは無いかな」

「狂気? 溺愛ではなくて?」

「んーー、殿下の場合は重愛な気がする」


 そう言いながら、私に甘々な旦那様だって十分溺愛であり、重愛だと思う。今日は旦那様の希望していた刺繍を仕上げる。


「旦那様、私は人族で魔法や術式には詳しくないのだけれど、この刺繍は持ち主を加護してくださるのですって。神官様から聞いて教えてもらったの」

「ナタリア。私のためにそこまで考えてくれていたなんて……!」


 ばさあ、と翼が広がって、私を包み込む。あの一件以来過保護感が増したけれど、それは私も同じ。旦那様に何かあったら、私の心は潰れて立ち直れないもの。私には【運命のツガイ】なんかなんて分からないけれど、私の愛する人は過去も、今も、未来も旦那様だけ。


「旦那様、愛していますわ」

「私も、君を愛しているよ。ナタリア」


 それとこれは母親の勘なのだけれど、たぶんお腹の子は双子なような──そんな気がする。それはそれで一波乱ありそうな気がするのだけれど、無事に生まれてきてくれるだけで私は幸せだと思う。

 旦那様もそう思わない?

「ちゅんん」と、灰褐色の雀が頷いた気がした。



 END

楽しんでいただけたのなら幸いです。

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― 新着の感想 ―
人と書いて赤ちゃんと読む……ん?逆じゃないですか? ナタリアがキスをしているのに、雀の鳴き声が小さなくちばしで必死にキスをしている感じがして可愛かったです。
すごく文章が読みやすかったです(๑°ㅁ°๑)‼✧ 個人的には灰褐色の雀が好きです! もっと深く掘り下げて読んでみたいと思いました。 素敵なお話を読ませて頂いて、感謝です!
面白かったです。 短編読切の形態でもよいので続きを読んでみたいです。作者様にお願いしたくて書き込みさせていただきました。
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