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なんども駆け落ちされた伯爵子息カールの行く末は……  作者: 星野 満


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邪気払いと不思議なミケ猫(1)

※ 2025/10/3 分割修正済み

◇ ◇ ◇ ◇



翌日、僕は王宮内にある正教会(せいきょうかい)へ行った。


「カーラル・マンスフィールド子爵様ですね、お待ちしておりました」

と正教会のカウンターではシスターが部屋まで案内してくれた。


「こちらでございます」

中へ案内された施術室は、男女別々となっており正方形で広い部屋だった。


真ん中に施術台が2台と、別室には最先端の電気鉱石(トルオルマリン)で、お湯が出るシャワールームと風呂、その更衣室が付いていた。


どうやら部屋内の患者は僕1人のようだ。



──凄いな、各部屋最先端の電気鉱石で風呂付&個室なのか?


僕の家は風呂も未だに蒔焚きなのに──。


壁には植物や花の絵が飾られて、セピア色のガス燈が部屋の四隅に煌々(こうこう)と灯っていた。


まだ正午過ぎなのにガス燈のせいか暗い部屋だ。


ただ部屋には大きなバルコニーがあり、窓が少し開いていてグリーン色の、モスリンカーテンが風で揺れるたびに、春の陽射しがキラキラと入ってきてそこだけ妙に眩しかった。


バルコニーにはサボテンは薬草に利用するのか、珍しい形の植物がいくつも飾ってあった。


僕はシスターに差し出された書面にサインをした後、すぐに施術を受けられた。



──すべからく待遇がよくてありがたい。


先日、ライナス殿下が直々に予約したらしく、高待遇のマッサージを受けられるみたいだ。


その前に身体チェックをされた時、外傷はなかったので聖女の治療は無しとされた。

正教会は治癒をする聖女も待機していて治癒を行う部署がある。


だが邪気や(だる)さといった原因不明の体調不良は、万能と言われる聖女でも治せないらしい。



※  ※  


「お待たせいたしました」

と、体躯の立派な男性の整体師が入ってきて、挨拶をした後にカルテを見て、首と背中と腰を重点的にじっくりと()んでくれた。

整体の後、更に精油を使用したリラクゼーション療法(アロマテラピー)なるものも施してくれる。


腰にタオルを巻いただけで、うつ伏せになって薬草とハッカの交じった匂いの、嗅ぐわかしい香りがする液体を、背中にぬるぬると塗られて優しくマッサージしてもらう。


なにやらこそばゆいが、慣れて来ると気持ちがいい。

何やら身体の(だる)さや痛みも取れてきた。


アロマ療法が終わると、そのまま赤い花が浮かんだ風呂の湯に、暫し浸かった後、薬草茶ドリンクを飲む。

ちょっと苦くて癖がある味だったが、喉が渇いていたので美味だった。


そのまま、係員に体を拭いて浴衣を着せてもらい寝椅子に座らされる。

何やら体がぽかぽかと温かくなって、うっすらと汗が出てきた。


そのまま僕はウトウトした頃に、グレーのフードを被った初老の男が面前に現れた。


その男は、酷く痩せており長い口髭を伸ばして、神秘的な金色の瞳をしていた。


「初めましてマンスフィールド子爵様。私は王室に仕える魔術師のライと申します。専門は人や動物の邪気を感じてその正体を見破ります。もしも悪い邪気ならば(はら)う習わしを専門としております」

と胸元に両手を交互させて僕に丁寧な挨拶をした。


「ああ初めまして。既にライナス殿下から貴方が施術してくれると聞いています。とても優秀な魔術しだとか。実は僕には変な邪気が何年も前からまとわりついているらしい。殿下は『女の邪気が見える』といっていたが──どうかその邪気がいるのなら(ばら)って欲しいのだ」


(かしこ)まりました。確かに貴方様の周りに纏っている何やらおかしな邪気を私は感じます」

と男の金色の目がキラッと閃光した。



──そうか、やはり僕は呪われていたんだな。


ここにきて良かったよと、僕は怠い気分で思った。



ライはフードを取り、そのまま僕の額を細長い手でそっと触った。


「貴方様はこのまま何もせず、リラックスして目を(つぶ)ってください。そのままの状態でヒーリング(瞑想)を致しましょう──はじめは“夢”と思うかもしれませんが、それは夢ではありません。瞑想の中で出会ったモノが(まと)わりついている()()です。まずはそのモノと普通に話してみてください。さすれば悪い邪気か良い邪気か私が判断いたしますから」


「分かった、だがどんな()()が出て来るのかちょっと怖いな……」

「ご安心ください、何が出てこようとも私がついております」

「……ああ、頼みます」


そしてライという魔術師はサイドテーブルの上にある香を焚いた後、両手を重ねた。

なにやら変な呪文を僕の前で暗唱していく。


僕は言われた通り、ゆっくりと目を(つぶ)った。


だんだんと部屋中、香を焚いた薫りが充満して僕はその薫りに促されるように、ウトウトと寝入ってしまった。



そして僕は不思議な不思議な、そう、とても変な夢を見た──。






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