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なんども駆け落ちされた伯爵子息カールの行く末は……  作者: 星野 満


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23/69

タイガーマスクの護衛騎士(1)

※ 2025/10/7 修正済み

◇ ◇ ◇ ◇




その執務室の相談後、夕方からは王室主催のチャリティーダンスパーティーの催しがあった。

この宴はウェンディ姫も、ライナス王太子夫妻と一緒に出席をする予定だ。


王室の控えの間には、ライナス王太子夫妻が、ソファに座りウェンディ姫が来るのを待っていた。



「ライナスお兄様、遅くなって申し訳ありません」

ウェンディ姫がローブデコルテドレスの姿で控えの間に入ってきた。


僕もウェンディ姫の護衛騎士として、自分の部下2人を従えて後ろについていた。



「おい、何だその被り物は!」

「まあ、おほほ。今日のパーティーは仮装ダンスの予定だったかしら?」


ウェンディ姫と僕たちを見た途端、ライナス王太子夫妻が仰天した。


「お兄様、お姉さまご安心を。後ろにいるのは護衛はカール子爵ですわ!」


「「カールとな!」」


2人の驚く顔を見てウェンディ姫は楽しげに微笑した。


「おいおい、タイガーマスクだぞ!」

「なんだあの被り物は!」

「凄いな……」


その場にいた王太子夫妻もとより、他の王族や、その従者たちが僕の()()()()()姿()を見て騒々しくなった。



「うふ、驚きました? ライナスお兄様。朝、お話してたカール子爵のアイデアですわ」


「流石に驚いたぞ!だがカール、確か朝の話では()()()()をつけると言ってなかったか? その形相はタイガーマスクではないか!」


ライナス殿下は呆れた顔で言った。


「はい左様でございます。ライナス殿下、最初は猫の仮面にしたら良いのでは?と装着してみたのですが、ウェンディ姫が猫の仮面でも失神してしまいました。なのでこれはどうしたら良いものか?と考えました。さすれば去年の仮装舞踏会で、私の知人が“虎の被り物”をしていたのを思い出して、それを拝借しました」

と僕は殿下に伝えながらも、マスクが汚れていたせいか顔が痒くて、ついポリポリと首を掻いてしまった。


だが、タイガーマスクの効果はウェンディ姫にはてきめんに効いた。

この虎の仮面をつけると、ウェンディ姫は失神しなかった。


ウェンディ姫は嬉々としてライナス殿下に微笑む。


「ライナスお兄様、どうかご覧遊ばせ。とても恐ろしいタイガーマスクでしょう。これなら私も恐怖心が先に来て、カール様だと意識しなくて済みました。なので『ぜひ、つけて欲しい』と私からお願いしたのです」


「ウェンディ、お前はな〜場所をわきまえろ、今宵のチャリティーは仮想パーティーの余興じゃないんだぞ!」


ライナス殿下は、ほとほと困ったのか頭を抱えた。


「あら、お兄様『タイガーマスク』はとても良いアイデアですわ。だって猫の仮面だとカール様のお顔の輪郭までは隠れなくて、ますますカール様のお顔を私は想像してしまいますの。ともすれば、また心臓がドキドキして気絶してしまいます」

と、ウェンディ姫はライナス殿下と話しながら、ちらりと僕を見つめて頬をポッと染めた。



──ははは、僕の素顔を見ると姫君は気絶するとは……。


姫はそれほど僕の顔が好みなのか? 



僕はこれまで自分の顔で失神する令嬢を1人もいなかったので不思議で仕方なかった。


僕はいたって平凡な顔だ。どうしようもない醜男ではないが、さりとて美男でもない。

周囲からも体躯は立派だが、顔はあっさりした特長のない顔とよく言われた。


ウェンディ姫だけが僕の顔を見てときめく。


多分、それは前世の“風子嬢の呪い”が、現世のウェンディ姫に取り憑いてるからだと僕は自覚していた。

そうでなければ解せぬ話だ。



「ええ、ちょっと?カールが素敵って……まさかウェンディはカール子爵を見ると失神するっていうの? 」


王太子妃のアメリア様が横から口を挟んできた。


「そうなんだよアメリア。信じられん話だろう? よりによってウェンディの好みがこいつ、()()()()()なんだぜ?」


ライナス殿下は驚愕しているアメリア妃に、これまでの事の詳細を丁寧に説明し始めた。



◇ ◇



「ふうん、なるほどね。流石にウェンディの失神は驚いたけど、そういう過去世があったとは……」


「君は俺の話を疑わないのか?」

ライナス殿下のブルーアイズは大きく見開いた。


「ええ、信じるわ。だってライナス、考えても御覧なさいな──前世でウェンディの想い人が、カールだなんてとてもロマンチックじゃないの、実際、貴方みたいに“邪気”を敏感に感じる人間が現実にいるのよ。生まれ変わって時空を超える者がいたとしても、ちっともおかしくないわ」


アメリア妃はさも当然といわんばかりだった。


「それにウェンディが失神防止にタイガーマスクの被り物もとても良いと思うわ」


「おいおいアメリアまで被り物推進派か! 俺は歴史小説のカエサルが言った『ルータスお前もか!』の心境だよ!」


ライナス殿下は舞台俳優の真似みたく、天を仰ぐようなジェスチャーをわざとした。


アメリア妃は僕たちに、茶目っ気たっぷりにウィンクをして言った。


「ウェンディ、カール、私はあなた達の不思議なロマンスに興味深々よ!」」


「まあ、お姉さま、とっても嬉しいですわ」


とウェンディ姫は飛びあがって喜んでいたが、僕はアメリア妃に一礼しながらも、内心はこの王太子妃も姫君も変っているのでは?と対応に困惑した。






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