プロローグ 3度も駆け落ちされた男
※ 気の毒な貴公子の物語が浮かんだので書いてみたくなりました。
この主人公は果たして妻を娶ることができるのでしょうか。
※ 2025/9/25~修正中
◇ ◇ ◇ ◇
「許して、カール。あなたはいい人だからきっと私より素敵な人が見つかるわ!」
婚約者のエリーゼが結婚式前日に“書き置き”を残して僕の目前から忽然と姿を消した。
「ああ、また……」と僕は深い絶望と悲しみに心が壊れそうになった。
──これでもう3度目だ。
3度目といったのは、過去にも僕のフィアンセになった令嬢に何度も駆け落ちされたからだ。
この一件はたちまちスミソナイト王国の、王都の貴族たちの間で一大醜聞となって貴族社交界に駆け巡った。
「3度も婚約者に駆け落ちされたカーラル・マンスフィールド子爵は無様な男!」と貴族たちから、ことごとく揶揄された。
この恥ずかしいスキャンダルはとうとう王室まで噂が伝わり、王族の人々の耳に迄達した。
「あはは、カール!さすがにお前やばすぎる。3度もフィアンせに逃げられるとは恐れ入った。腹の皮が捩れるくらい可笑しいぞ!」
僕の友人でもある王太子のライナス様が、同情しながらも憎たらしいくらい、腹を抱えてゲラゲラ笑いながら言われた。
──ライナス殿下、そこまで笑わなくとも! 令嬢殺しと云われる自慢の美貌が台無しですよ!
内心、僕は殿下に忠告したいくらい王太子の顔は歪みまくっていた。
「ふはは、なんだな、カールは正教会へ行って、隅々までお祓いでもしてもらった方が良さそういだな!」
「………」
僕は唇を噛みしめて悔しさを我慢した。
フィアンセに面目を潰された憤りと、その憐れな男を事もあろうに面前で笑い転げる王子に辟易した。
この時ばかりは王族への臣下の証である軍服の腕章を、衝動的に剥ぎ取りたくなった。
とはいえこれは今に始まった事ではない。
ライナス王太子は兎に角、昔からよく笑う御方だ。
同年のせいか貴族学院時代から、何故だか僕に目をかけてくださる。
王太子にもかかわらず、とても気さくで部下思いの家令から好かれる性格だ。
だが彼には1つだけ欠点があった。王太子は一度笑い出したら中々止まらない。
自慢のブルーアイズも麗しく、高貴な令嬢たちが失神するくらい精悍な顔立だが、一度笑い出すとミミズのような細目1本線になる。
大きく口を開いた顔は、整った輪郭の美貌を崩すほど哄笑する。
つまり生粋の笑い上戸だった。
臣下の間では“笑いの王子”と揶揄されるほどだ。
──ああ僕はこの先、一生こうやって殿下からも貴族からも、同情を通り越して嘲笑されて生きていくんだろう。
もう女は懲り懲りだ。
僕は金輪際フィアンセなど必要ない、もちろん妻も娶らん!
僕は馬鹿笑いする王子を尻目に、腹の底からこれまで逃げられた令嬢たちを嫌悪した。
※1年以上前に書いた作品ですが、1話の文字数が多いため、話数を分割修正していきます。もし再読している方がいましたら申し訳ありません。<(_ _)>
(1日1話単位で修正していくので少々時間かかります)
できれば全て改稿済みになってから再読いただければ幸いです。




