4th Stage
タジマコーヘイは、楽屋に入ってからキョロキョロと周りを何度も見回している。タジマ自身の落ち着きのない様子に、俺たちも気になって仕方がない。
「椅子に座ってゆっくりすればいいのに」
「それはそうと、タジマはお笑いライブに出演していないはずだけど……」
青田の指摘を受けて、俺は『OWARAIヒットカーニバル』の出演者一覧を改めて目を通すことにした。すると、出演者の中にタジマコーヘイの名前は記されていない。
「出演者になりすましてここへ入っているのか」
俺は紙面から顔を上げると、タジマが自分とは別のハンドバッグのチャックを開けているのを目に入った。このまま黙って見過ごすわけにはいかないと立ち上がるとすぐに強い口調で声を張り上げた。
「おい! ここで何やっているんだ!」
「わわっ!」
タジマは、楽屋から出ようと慌ててドアノブに手をかけようとしていた。これを見た俺は、タジマを逃がさないように右手で相手の左肩をつかんだ。
「ちょ、ちょっと何をするんだ!」
「何をするんだじゃないよ! バッグのチャックを開けようとしていたのだろ」
タジマは、この件で俺が詰め寄っても自分はやっていないと否定する素振りを見せるばかりだ。そこへ、サンニンビンゴの竹本夜月が自らのハンドバッグをタジマの目の前に突きつけた。
「あんた! 自分が何をやったのか分かっているのか!」
「誤解だよ、そ、そんなことやってないって!」
怒りの表情を見せた竹本だったが、タジマの口から出たのは予想外の言葉だ。竹本は、不行跡を否定し続けるタジマの姿に唖然としたまま何も言うことができない。
この状況を打開しようと、俺はスマホを取り出すとこの楽屋のライブ配信を行っているCeroTubeにアクセスすることにした。そこには、楽屋が現在どうなっているのかを画面を通してリアルタイムで発信されている。
「これは、ライブ配信中でも巻き戻し再生ができるわけで」
「巻き戻し再生?」
「こうすれば、タジマがハンドバッグのチャックを開けているのかどうかが分かるぞ」
ライブ配信の画面を巻き戻すと、タジマがスポーツバッグを持って楽屋へ入るところから改めて再生することにした。その画面には、俺たちやサンニンビンゴのメンバーとともにタジマの姿がはっきりと映っている。
青田と黄島は、俺のスマホに映る画面を見ようと両隣からそれぞれ覗いている。さらに再生を進めると、問題のシーンが流れてきた。周りを警戒するように見回すと、テーブルの上に置かれたダークブルーのハンドバッグにタジマが手を伸ばしてきた。
幸いなことに、竹本のハンドバッグは何も取られずに済んだようだ。それにしても、将来を嘱望されているにもかかわらず芸人人生を危うくする行動をするとは……。




