【第八話】再生回数、ヤバいんです。
本日二回目の投稿です。
玄関が賑やかになる。
「今日は遅かったのね?もう少し早いかと?」
「ごめんよ、さくらさん」
お父さんはお母さんのことを、さくらさんと呼ぶ。
「土木の部署、手伝っていたんだが、人骨が出てね」
「……は?」
「……な?」
晩ご飯でその話題?
「ど、どこで?」聞いてみる私。
「山手に木造の小さな橋、あったの知っているか?」
「?」
「水害で流れたんだけど、掛け替えで、作業していたら、人骨が出てきた」
「ひっ……さ、殺人事件!?」
「いや、江戸時代の人柱らしい」
「え?ひ、人柱!?」
「昔は何度も橋が流されて、大変だった、と近くのお寺に資料が残されていてね。人柱の件も記載があった」
……うわぁ、今日は色々なことが、重なるなぁ。
「この街を囲むように人骨が出るんだ」
「え?」
「いや、何年か前もあったんだ。道路工事の時、石碑の移動があってその下から古い人骨がさ」
「ええっ!?」
「これは凄かったぞ、大きな瓶の中で、瞑想している姿で埋まっていたんだ」
なにそれ?
「魔の交差点でも事故があったって?今日は早く寝た方がいいかな」
お父さんの提案である。
「そうね、早く寝て、一日を早く終わらせましょう」
同意する、お母さん。
そして私は、やっと酢豚に辿り着く!
「「「「いただきます!」」」」
ち、ちょっと!お母さん?ロズマリ!?あんたら食べていたでしょう!?
どれだけ食べるの!?
これを幸せというのか?
うちの両親は勉強しろ、なんて言わない。
ただ、悪いことはするな、と言うだけだ。
それだけしか言わない。
ロズマリは、家に来て、幸せだろうか?
私は幸せだと思うけど。
「サヨ、さくらさんから聞いたけど、お風呂場で声がしたって?」
うう、思い出させないでください!父さん!
こくこく。
「怖かった」
その言葉を聞いて、お父さんに少し怒りが走った。
お父さんは、さくらお母さんやロズマリ、私をとても大切に思ってくれるのだ!
なんせ、お父さんだし!
「男の声か?」
あ、お父さん、眉間に皺が!
「ううん、女の人の声」
綺麗な声だった。
「……若い?」
え?なに?お父さん、相手、幽霊かも、だよ?
げしげしげし!
「わっ!?さ、さくらさん!?いてっ!痛いですっ!?」
「今、若いって聞こえたけど?」
「な、何でもありません!空耳では?」
……うん、我が家は幸せ家族だ……と思う。
こども部屋に行くと、もうロズマリは寝ていた。
すぴすぴと、小さな2段ベッドの上から寝息が聞こえる。
ロズマリは高いところが好きなのだ。
私はちょっと怖い。
私の机の上には、綺麗な銅鏡が二枚、置かれている。
「?」
着信?
銅鏡横のスマホが点滅している。
あ、バスケ部長からだ。
なんだろ?
相談?
え?動画がアップされている!?
えっ!?
ええええええええええええええっ!?
削除したよね?
あの一年!あの子!消していなかった!?
「わっ!」
突然震えるスマホ。
ごんちゃん?
(今いいか?)
「うん」
(魔の交差点の事故がアップされている、多分、位置からしてあの一年生だ)
えええええええええええっ!?
「どうして……」
(再生回数がヤバい、もう50万回越えた)
「えええっ!?」
(見るなよ、異様なんだ、明らかにフェイク動画じゃない!あ、え?もう80万回越えている!?)
「そ、そんなに?」
(それで、葉枷部長に連絡したけど、通じないんだ)
「!」
まあ、夜は通じないんだよね、部長。
いつものことだし。
(今週、ライブハウスでベースのヘルプって、言っていただろ?それかも知れない)
「……私、映っていた?」
(いや、葉枷部長だけだ、部長の映像も変なんだ、時々光って……)
え!?
……怖いんですけど。
「明日、部室で相談かな?」
(ああ、そうだな、見るなよ、いいな?とにかく怖いんだ。多分、学校でも問題になると思う)
制服と魔の交差点、見る人が見れば、すぐに分かる。
「うん、分かった、ありがとう、ごんちゃん」
(ロズマリは?)
「寝ているよ」
(ロズマリらしいや、じゃ、おやすみ)
「……おやすみなさい」
どうしてアップしたの!愚か者!あれだけヤバいっ言ったのに!
それから、バスケ部長に連絡したけど……圏外!?
葉枷部長にも連絡したけど、こっちも圏外?
ロズマリは明日、話すか……今日は疲れた、もう寝よう。
就寝。
「……」
暗いお部屋。
小さな2段ベッド、上がロズマリ。
ひゅっ、と風の音が聞こえた気がした。
外は真っ白な霧の世界だろうか?
夏だよ?異常気象?
銅鏡は机に飾った。
勾玉は小さくて、無くすのが怖いから枕の下に置いた。
明日、部長に相談しよう。
ひゅっ、また風の音だ。
怖い、と思った瞬間、黒い信号機を思い出した。
それとお風呂の声。
ああ、お父さんのお話しも!
人柱?
風習なの?怖いよ!
え?
その時……カーテンが揺れた!?
あ、サッシ窓の隙間から、白い煙のようなモノが!?
霧?
いや、おかしいだろう!?
視力2.5、間違いない、霧が侵入してきている!
え?声が出ない?
身体は?
震えているけど、動く?かな?
えーと、えーと!?
!!!!!!!
その白い霧は、人の手の形に変わり始めた。
無数の大小の手が窓の隙間から侵入し、床に溜まり蠢く。
ぶぶぶぶぶ部長の嘘つきいいいいっ!
わ、私の所に来たじゃないっ!
だれか!誰かあああっ!
こ、声が出ない!
ロズマリ!お母さんっ!
お父さんっ!おとうさあああああんっ!
あ!?
部長のおまじない!
なんだっけ?
そう!約束の指!
お、親指を、に、握り締めて、えーと?
そうそう、人差し指をピンっと!
「あ?」
ひ、人差し指が!?
あ、暖かい!?
なに?
お母さんが、握っているみたい!
ああ、落ち着く!?
怖くない!?
何これ!?
自己暗示!?
改めて床を見ると、そこには何もなかった。
どういうこと!?
夢?
で、でも、なんか感謝で、涙でそう!
「そうじゃろ?」
!!!!!!!?
???????!
「わらわが握っておるのじゃ、これで、悪しき霧は近づけぬ、安心して眠るがよい」
!!!!!!!?
???????!
「また、古風なまじないを知っておるのう?感心、感心」
どなたかしら?
……私は気を失った。
眠るのと、失神の違いが今ひとつ分からないが、私の意識はここで止まった。
目が覚めると、何ともすがすがしい朝だった。
……なんで?
よく寝たから?
でもなんか、薄暗いなぁ。
カーテンを開けると、外は真っ白だった。
えっ!?
霧だ……。
霧で何も見えない!
本日は、【第九話】ここはどこって、ヤバいんです。まで投稿します。
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