【第六話】お家に帰って、ヤバいんです。
2023/08/02 本日はこれまでです。
第六話、お楽しみください。
あ、お母さんだ。
ぽちっ、と。
『ちょっと!サヨ!交差点で事故があったって聞いたけど!?』
「うん、近くにいた」
『!!!!!!!!!ロズマリは!?ロズマリは大丈夫なの!?』
……おい、実母さん?実子の心配は?まあ、いいけど。
「ロズマリ?大丈夫よ、どこも怪我していないわ!」
『そう、よかった!早く帰ってきなさい!いいわね?』
「あの……私は?」
『?』
「怪我は無い?とか、大丈夫?とか?」
『声で分かるわよ!元気なことくらい!今日はあんたの好きな酢豚よ!早く帰ってきなさい!』
「はい!」
酢豚と聞いて、気分が上がる私。
そう、私は単純。
もう、頭の中は晩ご飯!すぶたっ!これ一色!
「ひひひひっ、す、ぶ、た!」
これはロズマリ。
ロズマリの笑い声は独特だ。
「な、なあ、連絡先教えてくれないか?」
え?私!?
バスケ部長が、なぜか私に言う。
「え?」
ここは葉枷部長でしょう?
「わたし?」
こくこく。
あ、バスケ部全員、こくこくした。
しっかしバスケ部の3人、でけーなーぁ。
うちの部長より小さいけど、それでも170は軽く越えているよよね?
首、痛くなっちゃうよ!
「なんで?うちの部長じゃなくて?」
「いや、葉枷はこえぇよ、連絡したら、タブとかスマホとか壊れたりしない?呪われたりしないか?」
チラッ。
あ、部長、泣きそうなお顔だ。
異能者なのに、メンタル弱め?
いいの?それで?
「所取副部長、君はぁ僕のジョシュだ!代わりに教えておきなさい……」
上から?かなり上から?……そういう設定にしないと、崩れ落ちそうなのですね?
という目を送ると、なぜかごんちゃんとロズマリが生暖かい視線になっていた。
まあ、必要以上に警戒されると、誰だって落ち込むよね。
私達は連絡先を交換する。
そして、それぞれ帰路についた。
日は暮れ、星がチラチラと空に見え始めていた。
「「ただいまぁ」ですの!」二人で元気よく帰宅である。
にっこ、にこである。
酢豚である!
事故のことも忘れて、頭の中は酢豚、一色!
そう、私は脳筋。
テーブルには大皿三枚山盛りの酢豚!
「二人とも、お風呂先に入りなさい!なんか臭うわよ!」
「え゛!?」
お互いに見つめ合うロズマリと私。
「わ。私、シャワー浴びてきたよ!?ロズマリじゃない!?」
「ち、違うですの!ロズマリだって汗の臭いしませんですの!スプレーしていますですのっ!」
「はいはい、さっさと二人ともお風呂!それで解決!」
どかどかとお風呂場を目指す私達。
我が家のお風呂はちょっと狭い。
大人2人、ギリギリかな?
しかし!わーい、ロズマリとお風呂だ!
え?半年?一年ぶり?
ふふん、ふうんっ!背中、流してやろうっと!
ピタリと止まるロズマリ。
「……一緒に、入るですの……?」
こくこく、頷く私。
あ、なんかヤナお顔。
あ!?
「生理?」
「ち、ちがうですの!」
「背中、流してあげるよ!」
びくっ、と震えるロズマリ。
背中?背中という言葉に反応した?そんな感じだ。
「……その、ロズマリ、毛が……」
け?けとは?
なんか、目茶苦茶言いにくそうだけど?
どうかしたの?
け?
「け?……あ!?い、いやぁねぇ!ロズマリ!私だって!もー!」
「ち、ちがうですの!背中に……」
「え?」
「背中に、毛が生えたですの……」
は?
え?女の子って、背中にも毛が生えるの?
いや、産毛?生えるかも?だけど……?
あの、元気印のロズマリが、シュンとしている!?
どんな毛?
そんなに困るような毛なの!?
「お母さんに話した?」
俯き、首を横に振る。
「痛いの?」
「時々」
え!?時々痛いの!?痛いんだったら、病院!
「かゆい」
……ごめんロズマリ、今ちょっとだけ笑いそうになった。
会話の間に、私は真っ裸になっていた。
そう、私はせっかち。
でも、さすがに心配。
「見ていい?」
こくこく。
ロズマリ、弱っている?
静々と身をくねらせ、服を脱ぐロズマリ。
私とは別の、凄い筋肉がその白い皮膚の下で動く。
……あれ?なんだろう?ちょっとドキドキ?
うわーロズマリ、肌、すべすべ!?きれーっ!
モジモジと胸を隠し、背中を見せるロズマリ。
そしてその背中には?
「!!!!!!!!!!!」
「ね?背骨に沿って、生えてますの……」
その体毛は肩甲骨の間、背骨に沿って、タテガミのように生えていた。
色は金色?長さは5、6㎝で、第3胸椎辺りから12くらいまでかな?
そう、陸上部でもあり、格闘大好きの私は、骨や筋肉に詳しいのだ!
15種23コ、漢字で書けます!(*作者注*頭部を構成している骨です)
「……ロズマリ。病気ですの?」
「……」
「サヨ?」
「綺麗……」
それは神秘的で、ロズマリの引き締まった身体にマッチしていた。
「綺麗ですの!?」
格好いい!?
ボーッとする私。魅せられているのだ。
「ひゃん!」
「あ、ご、ごめんなさい!」
思わず触ってしまった。
あ、背中だよ、背中!
「き、きれい?ですの?」
「うん、凄く!ロズマリ、神秘的!」
ああ、そうだ!神秘的なんだ!
あ、今、ロズマリ、ニヤけた。
途端に気分がよくなるロズマリ。
あからさまに嬉しいお顔だ。
なんか大丈夫みたい!
「取敢えず、お風呂、入ろう!酢豚、酢豚!」
「そ、そうですの!」
軽く身体を濯いで、ドボン、と湯船に。
我が家のお風呂はユニットバス、それもやや小さめ。
湯船は二人でMAXになる。
それから、ロズマリの背中を優しく泡いっぱいの手で、ペタペタと洗った。
「ないしょですの」
ペタペタ、アワアワ。
髪も優しくキュッキュッ!
「ええ、誰にも言わない」
「シャワーで流すよ?」
こくこく。
「約束ですの」
う、ロズマリ、かわいいっ!
「約束するよ!」
ぐうううううぅきゅるるるるるるっ。
……私ではない。
「先に上がる?」
まあ、狭いし。
こくこく、頷くロズマリ。
ロズマリが動く度に、巨大な何かが揺れる。
羨ましい程に……揺れる。
「でも脱衣所で待っていてね?」
「なんで、ですの?」
そりゃーあーた。
「一人じゃ怖いの!」
髪洗うんだよ!こわいじゃん!
実は、こっちが本音。
「脱衣室で待っていて!お願いっ!」
「いいですの」
半透明のドアの向こうに、ロズマリが見える。
体をごしごし、ぺたぺた。
……ロズチチ、でかかったなぁ。
頑張れ、マイチチ!
さあ次は髪だ!
「ロ、ロズマリ、いる?」
「いますよ」
よし、では、まず、髪を濡らして、ごしごし。
シャンプーでごしごし。
目を閉じる。すると……あ、なんか気配するかも?
「ロ、ロ、ロズマリ!いる?ちゃんといる!?」
「いますよ」
……私は、こどもか!
こどもだよ!
怖いものは怖いんです!
なるべく、魔の交差点は思い出さないようにっと。
えっとここかな?シャワーのハンドル。
暖かいお湯が髪に当たる。
はい、綺麗になった!
「ロズマリ!ありがとう!」
「……」
「?」
お風呂から上がると、ロズマリはいなかった。
「あれ?先に行ったのかな?もう!」
リビングに行くと、豪快にロズマリとお母さんが、酢豚を食べていた。
「母を許せ、サヨ、待ちきれなかった!もぐもぐ」
まあ、いいけど、作った本人だし。問題はこいつだ!
「ロズマリ!待っててくれても、いいじゃん!」
「友情より、酢豚ですの!もぐもぐもぐもぐ」
う、その気持ち、分からんでもないっ!
凄く美味しそうなんだ!マイ、マザーの酢豚!
「でも、ありがと、怖くなかったよ!」
さ、私も酢豚!ご飯!ご飯!
「?」
「どうしたの?ロズマリ?」
ロズマリの、大きな綺麗な目がパチパチする?
「ロズマリ、お風呂から上がって、髪も乾かさず、酢豚、直行ですの」
「え!?」
え?は?どゆこと?
返事したよね?いますよって!
います……よ?
います……ですの?ではなく、いますよ?
あ、髪を乾かすドライヤーの音、聞こえてこなかった!?
「どうしたのサヨ?無くなっちゃうわよ!」
「お……おかあさん……」
あ、涙でてる……。
「ど!?どうしたのサヨ!?」
「どうしたですの!?」
「お、お風呂場に……誰かいた……」
次回投稿は 2023/08/03 16時から17時の予定です。
サブタイトルは 【第七話】勾玉出てきて、コワいんです。を用意しております。
お楽しみに。
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