【第十三話】やっぱり部長は、ヤバいんです!
今晩は。
最終話です。
あの世界が現実なのか、半分夢なのか分からないが、県知事は執務室で、ミイラのように干からび死んでいたらしい。
警察は否定したけど、そんな噂が流れている。
私は再び警察のお世話になるのだが、何も思い出せないで通した。
シナリオでは、薬物中毒で病院へ送ることになっていたらしい。
なんと、薬物まで用意していた。
シナリオを書いていたのは県知事と県警幹部。
もう亡くなっていないけど。
過去の亡霊にその魂まで食べられていたのだろう。
関係者は全て、砂のように枯れしまったという噂だが?
警察は私に簡単に手が出せなくなった。
それどころか、闇の行動が表に現れ、大変なことになっている。
そんな中、有名で偉い弁護士団体が私達についた。
彼らは、私達、家族の行動、交差点から消えて、五叉路になって出現するまで、一部始終全てネットで見ていたらしい。
それは、私の行動を知った一部のネット民が、こっそり魔の交差点に集合し、ライブ中継をしていたのだ。
実は、jさんが悪ノリで動いて、呼びかけたとのこと。
j:必ず、何か起きる、近くの者は来い、私は機材一式持って、行ってくる。
しっかりと削除されずに残っている一文。
映像は、簡単なトリックに見えるのだが、リアリティーもある。
一升瓶をラッパ飲みするお父さん、バッチリ映っていた。
そこには、霧が現れ、オーブが飛び交い、黒い影や、白い影が映り込む。
そして、霧の中で突然消える私達。
それを見た人達が、さらに続々と現場交差点に集まり始めた。
勿論警察も。
集まった人達は千人以上!現場は大混乱!
そこに、突然現れた私達!
現場は熱狂、暴走した。
なんでも機動隊まで出たそうだ。
私はダウンしているし、お父さんお母さんは私やロズマリ、バスケ部員達を守ろうと、機動隊相手に第2戦をしたらしい。
これもネットに流れ、市民団体やら弁護士団体やらが動き出した。
……とんでもない夏休みになったのは言うまでもない。
弁護士団体の団長は、jを名乗るお爺ちゃん。
あの人だった。
jさんは言った。
「助けてやれ、と言われたので動いたまで。サヨさん、全て偶然ではありませんよ」
私は聞いた。
「ど、どなたにですか?その方にも、お礼を言いたいのですが?」
「今度、会いに行くにではないのか?」
「え?」
私はこれ以上、怖くて聞けなかった。
あと五日で夏休みが終わる。
私は今、汽車の中である。
右にロズマリ、正面は部長、部長の横はお父さん。
通路挟んでお母さんだ。
バスケ部メンバーも、ついてきている。
行き先は奈良と鹿児島。
銅鏡と勾玉のお礼参りなのである。
しかし、鹿児島と奈良?離れすぎていないか?
絶対嘘だよ!部長の邪馬台国説!
これ、コンコン狐さんか、ぽんぽこ狸さんの仕業だよ!
騙されているって!
「なんであんなビル、作ったのですの?」
そう、実際にビルはあった。
半壊した、ボロボロのビル。
昔は武家屋敷があったとか、無かったとか。
「あいつは玉手箱を取られまいと、色々と考えたんだ。そこで呪いで固めた、精霊が近づけない建物を作ろうとしたんだ。そんなことできっこないのにな」
そう、あそこは五叉路だったのだ。
十字路に見えていたが、今はちゃんと五叉路。
何とも不思議な現象だ。
街の皆は交差点、十字路と思い込んでいたのだ。
「玉手箱は時間と記憶を操作できる神様の道具なんだ。物質を根本的に支配、操作できる呪物。浦島太郎は使い方を間違って老人になった」
あいつ、どこで手に入れた?その玉手箱?
太郎が使ったあと、盗んだ?
「浦島太郎は封印していた自分の時間を、間違って使ったのさ」
「その玉手箱を使って、悪用したのがあいつですの?」
「一度は俺の先祖達が封印したけどな」
神様の道具?
そんな危険なモノ、何百年も人間の世界に放置!?
迷惑じゃん!
「そんな危険な道具、ちゃんと管理してほしいですの!」
だよね、ロズマリ。
ロズマリはあの事件のあと、背中のたてがみは抜けたそうだ。
もう、かゆくないって、喜んでいる。
いったい、あれは何だったのだろう?
もう、生えてこないことを祈るばかりだ。
強いロズマリは格好いいけど、強すぎるロズマリはこわい。
私はフリル、フリフリの優しいロズマリが大好きなのだ!
「管理?いや、それが精霊の時間と人間の時間、流れが違うんだ」
「でも、迷惑ですの!」
あ、あの箱はどうなったのかな?
私が壊したあと!?
聞いたけど、部長は寂しく笑うだけだ、何か知っている?
バスケ部3人は後ろで、キャッキャとはしゃいでいる。
明るくなったバスケ部部長が、椅子を乗り越え話し掛けてくる。
「皆の分もありますよ!食べませんか!?ドーナツ!」
おお、ドーナツ!ドーナツ最高!ドーナツ正義!
みんな和やかに細長い箱からドーナツを選び、受け取る。
ラスト!私の番!
?
あれ?
空っぽ!?
えっ?
「もう食べたのか?ジョシュはドーナツ大好きだな?」
「え?部長?私、食べていませんし、箱の中空っぽ!」
そしてロズマリが、恐ろしいことを言った。
「一番に取って、食べていましたの!」
え?
誰が?私が!?……いや、いや、いや、私は食べていないって!
あ、それ、もしかして……そういえば、ドーナツ、お供えするって、言ったかな?私?
……となると、食べたのは……?
え?まだ私の側にいるの!?
とある海岸。
ごんちゃんは一人、玉手箱を握り締め海を目指す。
探すの大変だったなぁ。
それに、俺一人じゃ取り戻せなかった。
あいつらには感謝だな。
ちゃんと、取り戻せましたよ、姫。
……太郎、なんで開けたんだよ、開け方、知っていただろう?
ごんちゃんはいつしか、大きなウミガメになっていた。
……ああ、あの大吟醸、呑みたかったなぁ。
今日の配信、見れるかな?
竜宮城、圏外かな?
圏内であることを祈り、ごんちゃんは、お城に帰って行った。
鹿児島の帰りの新幹線。
外の景色をボンヤリと見ている。
あ、今、綺麗な三角形のお山が見えた!
自然と目が部長に向く。
あ、目が合った!部長もあの綺麗なお山を、見ていた?
「知っているか?ここら、UFOの基地があるんだぜ」
……もういいです。
やっぱり部長はヤバいヤツだ!
こうして大門大第一高等学校神隠し事件は終わった。
部活の部長がヤバいんです! 完
全十三話のお話し、お付き合いいただき、ありがとうございました。
作中に出てきた、約束の指は、作者が小さい時、悪夢ばかり見て怖いと祖母に訴えた時に教わったものです。祖母は、私を落ち着かせるため、その場で思いつき、教えたとのこと。
小さな私は、素直に信じ、悪夢が止まりました。
ですからこれは、祖母の思いつき。あくまで、作中でしか効果がありません。
信じる人、いないと思いますが。
この物語はフィクションです。