【第十一話】再び五叉路がヤバいんです
今晩は。
投稿です。
すみません、少し遅れました。
近くの神社にお参りして、鳥居横を見てみた。
あった。
大きな石碑?に『猿田彦大神』と彫ってある!
ネットで教わったとおりだ!
神社の神様にも、猿田彦大神さにもお願いした。
一升瓶のお供え物。
どうか皆が無事でありますように、辿り着けますように、無事、帰れますように。
こんなに一生懸命お祈りしたのは、高校受験の合格発表以来だ。
でも、お酒とお賽銭だけでいいのかな?
無事帰れたら、お礼参りしないとね。
「どうしたの?お母さん?」
「いや、ここの神社、よくお参りに来ていたからね」
「え?そうなの?」
「特にこの石碑、道路の神様って聞いたから、皆でお参りして、ここらの道路、清掃していたんだ」
……お参りするレディース、プラス地域清掃!?
無敵じゃね?
あ、そういえばお母さんもお父さんも、時々、道のゴミ、拾っているな。まあお父さんは職業柄か?
……私もロズマリも、一緒に小さい時からしている気がする。
「ゴキュ、ゴキュ」
……え?
……は?
一升瓶、ラッパ呑み!?
「かあああっうめえええっ!さすが大吟醸!」
半分くらい呑んだ!
お、お母さん?
それお供え物!
「いいって、いいって、こういうのは上げ物、下げ物って言って皆で分けるんだよ!呑むか?」
いや、だから16だって!
「さあ、交差点に向うぞ!」
酔ってない?酔っていない?
徒歩で20分くらいだろうか?
歩く間、勾玉を握り締め、必死に祈った。
皆の無事と、みんなが無事に、ちゃんと帰れますようにと。
卑弥呼さまの勾玉。
本物か偽物か分からないけど、ここまで辿り着けた。
感謝だ。
更にお願いするのは、こころ苦しいけど、お願いしか出来ない!
お供え物、お酒かな?それでいいのかな?
やっぱり、私の大事な物とかあげないと、駄目なのかな?
私の大事なもの?……ドーナツ?
目の前で、ドーナツ消えたら泣くかも。
それくらい大事な大好き、大好物、ドーナツ。
いや、これじゃ駄目だろ?
そして、到着する魔の交差点。
「あ、お父さんだ!」
作業着のお父さん、しきりと道路の白線を見ている。
「おかしいな、このラインだったら、ここらに道があってもいいんだが?通りが悪いな?」
あ!ごんちゃんもいる!
「お父さん!」
「お?来たのか?サヨ体調はどうだ?」
「陸上部、体育会系!」
大丈夫!
「ごんちゃんも?」
「ああ、あの時、俺もいたけど何も出来なかった……あの日から、ここで毎日交差点見ているんだ。たらさ、サヨのお父さんと知り合って……」
「ごんちゃん、なかなか気が利いて使える、卒業したら、うちの会社へこい!」
あ、スカウトしている!まだ一年生だよ!お父さん!同級生勧誘するのやめてくれる?
「ん?……さくらさん?そのゴルフバックは何かな?」
ちょっとお父さんのお顔が、青くなる。
「ゴルフバックよ?」
ニッコリと笑うお母さん。
いや、そうだけど。
ゴルフバックから一升瓶を出すお母さん。
中には銅鏡二枚と木刀3本。
3本?
「呑む?」
「ここで?」
「御神酒よ?」
「ゴキュ、ゴキュ」
お父さんもラッパ呑み?
あ、でもお母さんほど、呑んでいないかも。
「かあああっうめえええっ!さすが大吟醸!」
……うん、間違いなく夫婦、似たもの同士だ!
「ごんちゃん?」
じっと大吟醸を見つめている?
「だ、駄目だよ!?お酒は大人になってからだよ!?」
「……え?でも大吟醸だよ?」
おいおい、16才!髙1だよ?
「いや、駄目だって!」
ごんちゃん、何で知っているの?酒好き?
交差点を見て回り、違和感を探す私達。
……お酒臭い。
辺りは暗くなり、星が見え始める。
そして、静かにどこからか流れ出る白い霧。
……きた。
サアアアッと地面を這って広がり出す。
そして吹き上がり、方向感覚がおかしくなる。
もう、辺りは真っ白で、方向が分からない。
東はどっちだ?
何かが、閃く。
多分、こっち。
では、その逆に進むと?
「お父さん、お母さん、ごんちゃん!こっち、いい?」
「おう」
「そっちだね」
大丈夫かな?酔っ払い二人だよ?
ごんちゃん、頼りにしているよ!
右手の中には、綺麗な勾玉。
白い霧の中で、何かが蠢いている!
声が!?
この声!
叫んだのはお母さん。
「ロズマリ!」
「はいですの!」
いた!見つけた!
……まて、ちょっと待て、本物か?
近づくとそこには、ロズマリと部長、バスケ部3人がいた。
「ジョシュ!なんで戻ってきた!?」
え?
「え?だって、じ、時間が、早くしないと……」
早く助けたくて、戻ってきたんだけど?
軽く、パニックになる私。
「10分くらい前だったぞ?」
「違いますの、30分くらいですの!」
えええっ?時間の流れが変!?
「わ、私達、助かるの!?」
え?この声!
バスケ部の3人!
3人とも元に戻っている!?
「憑きものは落とした、だが……」
霧の中から、ボッ、と現れる人影、口の裂けた蛇のような異形の物。
ロズマリが拳を振るうと、黒い霧になって消え去る。
「この繰り返しですの!」
ごんちゃんが、綺麗に一本背負いを決めると、ブワッと消え去る。
「手応えがない、でも触った感触はある?」
「!」
移動する感覚だ!
バラバラにまた!?
と思ったが、今回は一緒に移動した。
サアアアッと霧が晴れたかと思うと、目の前に、巨大なビルが一棟立ちはだかっていた。
都庁並の大きさである。
そして、形が?
なんか変?
禍々しい?
窓の位置、大きさ、不規則で、見上げると、目眩の感覚に襲われる。
周囲は異様に明るく、空を見ると、大きな満月が現れ、幻想的な風景になっていた。
霧は遠ざかり、渦になってゆっくりと回っている。
手入れのされた庭、噴水?
どう見ても新しい、新品?新築?のビルに見える。
目くらましだろうか?
正面の大きなガラスのドアが無音で開き、私達は吸い込まれるように、中に導かれた。
その時、パン、パン!と何かが破裂する音が響いた。
音の出所は、お母さんのゴルフバッグだ。
……イヤな予感がする。
お母さんはゴルフバッグを開けると、銅鏡が二枚、砕けていた。
「ヤバいな」
部長が呟く。
お母さんは木刀を取り出し、一升瓶を咥え、ぶっ、と、お酒を木刀に吹きかける。
……お母さん?何者ですか?
木刀をお父さんに渡すと、この夫婦、目が鋭くなった。
……酔いが進んだ?
え?違うの?
ビルの中は……臭かった。
いや、お酒の匂いじゃなくて。
それはもう酷い臭いで、嘔吐、ギリギリである。
何かが腐った臭い?それプラス腐った臭い、と言うくらい臭かった。
エントランスは吹き抜けで、中央に階段があり、その頂点には椅子が一脚置いてある。
かなり豪華な椅子で、宝石のような物がちりばめられていた。
玉座?
日本刀や筆箱?らしき物も飾ってある。
本物っぽい?
下からだと上手く見えない!
そこに、フッ、と現れる黒い影。
「あいつが五叉路の主だ」
部長の目が鋭くなる。
次回投稿は 2023/08/05 20時頃の予定です。
サブタイトルは 第十二話】ビルの中が、ヤバいんです。 を用意しています。
お楽しみに。