【第十話】うちの母が、ヤバいんです。
こんにちは。
投稿です。
行方不明者は私以外5人。
バスケ部3人と、部長とロズマリ。
取敢えず、何も覚えていない、と言うことにした。
まず、警察。
これが酷かった。
私は薬物中毒者として扱われたのだ。
検査で、陰性と判定されても、なんと警察は隠そうとした。
どうしても自分達が描いたシナリオで、事件を進めたいらしい。
いや、私、何も悪いこと、していないよ?
学校、保護者、両親、そしてマスコミ。
マスコミは面白おかしく記事を作り、ロズマリや私の両親の過去を、世界に垂れ流した。
おい、そこか?
まだ部長やロズマリは、あの霧の中で戦っているかもしれないのに!
助けに行けよ!
バスケの3人!どうにかしてやってよ!怪物になっていたのよ!
話しても、誰も信じないだろう。
それこそ警察の薬物中毒者説、濃厚、となるではないか!
どうしたらいい?
助けに行きたい。
何か方法は?手がない!
ううう、私に異能力なんて絞り出しても出てこない!
誰か?
お父さん、お母さんに話しても……信じてくれるかな?
私は、匿名でネットに助けを求めた。
使ったこと、質問なんてしたことないけど、情報が欲しかった。
誹謗、中傷、憶測、色々あるかも知れないけど助けが欲しかった。
それも一日でも早く!
1:某:****/08/04(金)16:30:11
霧と神隠しについて詳しい人いませんか?友達が捕まっているんです、誰か助けてください。
私は祈るような気持ちで画面を見つめた。
:この時期に?
:不謹慎だな、こいつ。
:ああ、あの事件!
:そうそう、大門大第一高等学校神隠し
:をい、名前出すんじゃね!
:みんな知っているよ?
:こいつ、まさか所○小夜子じゃね?
j:霧の中から生還したって?
:まだ行方不明者いるのに、ふざけんな!
:遊びでも酷いぞ!
:あ、その小夜子って子、アブナイ薬の常習者って聞いたぞ?
:ふーん、それで行方不明で、なんか口走っているって?
反応あった!?
でも、学校も、私の名前も皆知っている?
……そんなことよりロズマリと部長が大事だ!
……まあ、正直に言うと、バスケ部長達だけだったら、動かなかったかも。
ごめんねバスケ部3人、優先順位はロズマリと部長が圧倒的に上なの!
某:事件の始まりは魔の交差点なんです。そこは事故が多く、深夜になると交差点が五叉路になるという噂があったり、信号がおかしく見えたりする、変な交差点なんです。あ、昔は刑場だったってお話もあります。五叉路の先には高いビルがあるとか、変な屋敷があるとか。そこで事故を目撃したんです。
正直に綴ったけど、伝わるかな?無駄かな?
このまま、深夜交差点に行っても、助けること、できるだろうか?
無理だよね、どうしたらいい?
うう、泣きそう!
誰か!
:魔の交差点だと。
:深夜、五叉路?都市伝説やん。
j:どんな事故?
:ありきたり。
:交差点で事故は発生しやすいよ?どの街でも同じだ。
:そうそう、注意しないと。
よし!質問が来た!
興味持った!?
某:信号無視のトラックが軽自動車2台跳ね飛ばし、炎上した事故です。
:ホントか?ちょっと待て。
:はい、うっそ。
:終了。
:そんな事故、起きていません!
:炎上違いってか?
:そんな事故、起きていないよん。
:俺の情報網、舐めたいかんよ?
:ははっ、よく言うよ、ネット限定のくせに!
:んだと?ごらぁ?事故は無い!無かった!
某:そうなんです、朝起きると、事故が、起きていないことになっていたんです!
信じてください!
:なにそれ?文法おかしくね?いや、おかしのは頭か?
:あ、やっぱアブナイやつ、ヤっているな!
:飛んでね?
j:あ、それ「不動返し」じゃないか?
:意味不明
:朝起きると、薬が切れたと?
!
不動返し?
某:「不動返し」って何ですか?
j:無かったことにする神業、ああ、これ確か霧が関係していたっけ?煙だったかな?
こ、この人詳しい!?
某:どうしたら、その霧、祓えますか?また、そこへ行けますか?霧の中に友達が捕まっているんです。知っていること、教えてください。お願いします。
j:「不動返し」は神業だけど、一部じゃ悪神の仕業とか言われているよ。普通の術じゃない、危険度MAXだよ。それでも霧の中で友達見つけたかったら、まず、案内役が必要だ。近くの神社の鳥居横に石碑がないかな?その石碑、大抵「猿田彦大神」って彫ってあるはず。この神様にお願いすれば辿り着くよ。まあ、日頃のあなたの行い次第だけど。
行い次第?
え?でも、本当?辿り着けるの?
なんか、簡単?
いや、知らなければ到底無理?
某:ありがとうございます!
j:あ、お酒、御神酒を忘れずにね、帰りもお願いすれば霧の中から導いてくれるはず。この神様は道案内の神様だから、ゴミ拾いや道路の清掃とかすると、喜ばれるよ。
:あぶねー!
:ホントかよ?
:アブナイやつ二人目!
:え?jさん、そんな人だったの?
:そんな簡単なわけねーじゃん!
:信じる者は笑われる。
信じるしかない、よし、これから神社に行こう!
某:ありがとうございます、これから酒屋に行って、神社に向います
j:ちょっと待って、不動返しは神業なんだ、滅多に起きないし、その煙の中から逃げたんでしょう?某さん、君何か身体に変な形の痣とか星座のような黒子とかない?あ、あとお守りとか持っていなかった?
痣?あ、ロズマリは背中に……あ、私か?私は?痣とかないし……お守り?あああっ!?勾玉!
某:お守り、持っていました。
ポケットの中の勾玉を握り締める。
答えを持っている、いい人に巡り会えた!
ありがとうございます!
なぜか、勾玉に感謝した。
j:どこのお守りかは聞かないけど、それ、強力過ぎるお守りだよ、注意してね、お守り以上のお守りだから、多分、依代級じゃないかな。
某:注意ってなんですか?
j;いいことに使ってね、人を恨んだりしたら駄目だよ、自分に返ってくる。いいことも、悪いことも自分に返ってくるからね、それに依代は直で神様や眷属、精霊が宿るから粗末にしたら駄目だよ。
某:本当にありがとうございました、これから行ってきます。
よし、行くぞ!
ロズマリ、部長、無事でいて!
部屋を飛び出ると、お母さんとばったり、出くわした。
「どこに行くんだい?」
凄みのある声。
「ちょっと酒屋と神社」
「……昔、今のサヨみたいな目をした女の子達、いっぱい見てきた」
「……」
「眩しいくらい真っ直ぐな、大人の濁った目じゃない、真剣な眼差しだ」
……そんな格好良くないよ、ただ、今動かなかったら後悔すると思って。
ロズマリや部長に会いたいだけよ。
ダチに逢いたいんだ!
「五叉路に行くんだろ?」
「!」
「あの日から、お父さんは毎日、魔の交差点に通っている、ロズマリを探しにね。私や、お父さんのダチも、あそこで事故に遭ったり、いなくなったりしているからね」
「え?」
「あの場所が関係しているんだろ?あそこには何かあるって、思うけど、そこまでなんだ、さあ、行こう?つきあうよ」
自然と視線が、母の手に移る、
お母さま?……その左手の木刀は何?
次回投稿は2023/08/04 本日20時の予定です。
サブタイトルは 【第十一話】再び五叉路がヤバいんです を用意しております。
お楽しみに。