第七話後編 戦士と軍人
解説
ウスターリア共和国:この物語の舞台。社会民主党と神聖国民党の連立政権が成立している。元々は強大な帝国だが、世界大戦に敗北したことで、農業および工業地帯が別の国として独立してしまい、誰も愛国心を抱かない小国へと成り下がった。
マジュリー・ソヴィエト共和国:ウスターリアの東の隣国。つい数ヶ月前共産主義革命が起きた
ゼロワン:ウスターリア共和国国防軍のエースの1人。女性。本名はミノル・ミツオカ
サクラ:社会民主党のナンバー2にして、ゼロワンたちの形式的なリーダー。女性。本名はアグネス・レントゲン
フローリアン:ゼロワンの同僚。男性。軽い感じはするが明るくいいヤツ
カプチーノ:ゼロワンの同僚。女性。元貴族の家系で、お嬢様言葉を話す
アルシオーネ:ゼロワンの同僚。男性。自信過剰で血気盛んな金持ちの息子
グランタ:マジュリー軍(赤軍)のエース。男性。誇り高き戦士であろうとする
フローリアンとカプチーノの挟み撃ちは失敗に終わった。混乱するゼロワンとフローリアンをよそに、グランタのハンマーとアルシオーネのハルバードが金属音を響かせ、火花を散らす。
「はぁぁぁぁっ!」
渾身の一撃でグランタのハンマーを迎え撃つアルシオーネは、明らかにグランタより消耗がはやい。すでにフローリアンに命じてカプチーノを退避させたゼロワンは、打開策を捻っていた。
玉のような汗を散らし、互角の戦いを繰り広げたアルシオーネも、ついに体力の限界を迎え、ハルバードとともに弾き飛ばされた。もう一刻の猶予もない。ゼロワンは賭けに出ることにした。
「グランタ!倒れた相手に深追いなど卑怯な真似はするまい。この私が相手だ!」
「おい・・・・・・まだ倒れてなど」
「いいから下がれ!」
尚も立ちあがろうとするアルシオーネを下がらせ、グランタの目を見据えるゼロワン。彼の眼は誇りある戦士と対決する喜びに輝いているようだった。
するとゼロワンは突然刀を斜め方向に投げた。何事かと思って目を向けたグランタは、その刀が街頭にぶつかって自分へと跳ね返ってきたことに多少の動揺を見せるも、銃弾を弾いた謎のシールドに守られた。
それとほぼ同時に、ゼロワンは前方へ駆け出すと、落ちているハルバードを手に取り構える。
「今こそ決着を!」
グランタはハンマーを力任せに振り回そうとした。
が、その時。不意に上空に気配を感じたグランタが上を見ると、先ほどとは別の刀が自分の額めがけて落下してきていた。
刀を投げた隙に上空にもう一本を投げていた、と頭で理解しても、ハンマーを前方へ振ろうとしていた体はすぐに反応できなかった。額に触れた刀から電流が流れ、たまらず絶叫するグランタ。その口元を目掛け、ゼロワンはハルバードを突き刺す。その一撃は脳幹を貫き、直ちにグランタの生命活動を停止させた。
「サクラ、目標は死亡。この地域の顕著な脅威は取り除かれたわ」
東方のエースに対する勝利により、ウスターリアはその領土を取り戻し、束の間の平和を得た。エースたちの活躍がこの共和国の未来を栄光へと導けるかどうかはまだ分からないが、ゼロワンはこの戦いにより確かな誇りと自信を得ることとなった。
自分の初めての創作はとりあえず完結です。何も考えずに書いたら終えられなくなりそうだったので強引にでも終わらせました。また別の作品の執筆にチャレンジしていく所存ですのでぜひ応援よろしくお願いします。
これまでお読みいただいた読者の皆様、本当にほんとうにありがとうございました。