第五話 作戦
解説
ウスターリア共和国:この物語の舞台。社会民主党と神聖国民党の連立政権が成立している
マジュリー・ソヴィエト共和国:ウスターリアの東の隣国。つい数ヶ月前革命が起きた
ゼロワン:ウスターリア共和国国防軍のエースの1人。女性。本名はミノル・ミツオカ
サクラ:社会民主党のナンバー2にして、ゼロワンたちの形式的なリーダー。女性。本名はアグネス・レントゲン
フローリアン:ゼロワンの同僚。男性。軽い感じはするが明るくいいヤツ
カプチーノ:ゼロワンの同僚。女性。家族の家系で、お嬢様言葉を話す
アルシオーネ:ゼロワンの同僚。男性。自信過剰で血気盛んな金持ちの息子
グランタ:マジュリー軍(赤軍)のエース。男性。誇り高き戦士であろうとする
聖歴2572年 10月1日
ゼロワンは回復し、ウスターリアの4人のエースは、マジュリーのエース、グランタを倒すための作戦会議をしていた。といっても、4人の能力が自由に発揮されることの重要性を鑑みて、普段からあまり厳格な作戦は立てられていなかったので、実質的には単なる話し合いだった。
「ところで、ソイツは相手の動きを先読みする能力に長けているのに、ゼロワンの話だと最初からその力を使ってはいなかったみたいっすね」
「そうね……彼は名誉が云々と言っていたから、戦いの正しい段取りにも執着しているのかも」
「誇り高い戦士と言うべきか。ならばこの僕アルシオーネが、一対一で真正面から相手をしてやるとするか」
「そんな必要はありません。敵に気をつかう必要など、ありませんわ」
「それは私も同意見よ。軍人である私たちの使命は、確実に勝利すること。今回は非殺傷武器以外の使用も許可されるし——」
すると、ドアが開き、サクラとテラーが入室した。いつもの如くテラーは猫背で、視点も定まっていない様子だった。
「よおアグネス……と、誰っすか?」
「こちらはベーラ・テラーさん。我が国の兵器開発を担うエンジニアです。ほら、挨拶を」
「あ、ども。テラーといいます」
「どうしてそんな頼りなさげな人物をわざわざ連れてくるんですの?」
カプチーノ軽蔑を込めた目でテラーを見つめていった。
「そんないうことないだろ……あ、えーと、僕はマジュリーで働いてたこともあって、そのグランタとかいうのの武器も、僕が作ったやつなんで、効果を防ぐもの、持ってきたんですよ」
そう言ってテラーは小さめのケースをテーブルに置いた。中に入っているのは4つの手袋と小さな小手だった。
「これ使えば、体内への振動は防げるはずです」
「助かるわ、これで問題なのはあいつの単純な馬鹿力だけね」 「っていうか、そもそも飛び道具持ってないなら俺とカプチーノが反対から攻撃すれば一発なんじゃないっすか?」
「それまで敵を引きつけるやくは僕に果たさせてもらうよ」
「大体の作戦はそれで良さそうね。私は……状況に応じてって感じね」
「では作戦は明日決行です。できる限り無事で戻ってきてくださいね」
こうして4人は決意を胸に、眠りにつくのだった。