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クソゲーの『悪役』令嬢と『デーモンスレイヤー』  作者: 傘花
第二章 砕けぬ意思と戦いの日々
15/41

第六話 回想・アッテムトの虐殺(2/3)

グロテスク・残酷な描写に注意


 復讐は当分終わりそうになかった。


『矮小なるニンゲンの門出を祝し、我が名を教えよう。我はジャブツェルコ、始祖の――』

アイスボルトの巻物(スクロール)

『――煩わしいぞ! 《ファイアボール》!』


 仕返しと言わんばかりの火球が炸裂するも、火炎の三重耐性を持つ俺には欠片も通用していなかった。


 だが、屋敷に炎が燃え移った。


 俺の持つ元素のスクロールによる魔法の矢と、ジャブツェルコの《ファイアボール》の、五度の撃ち合いが終われば、屋敷は既に倒壊していた。


『満足したか?』

「そうか」


 俺はジャブツェルコに歩み寄り、酸属性のアーティファクトを――『原初の泥の』ウォーハンマーを構えた。


 奴には酸耐性が無かった。


 幸運だった。


 手持ちの武器で殺せた。


 俺は奴の懐に潜り込み、一心不乱になって武器を振るった。


 奴の鋭利な爪を掻い潜り、巨大な角の一撃をどうにか受け流し、受けた傷よりも多く奴の肉を叩き、叩き、叩き潰した。


 余裕綽々だったジャブツェルコは、俺が傷を負ってもすぐに回復し、万全となってすぐさま反撃してくるのに焦っていた。


 焦りが手に取るように分かった。


 何故か、憎い相手のことが手に取るように分かった。


 奴の命を手中に収める――激しい攻防の最中、その時が刻一刻と迫るのを狂おしいほど待ち望んでいた。


『がァッ……! き、貴様! この都市のニンゲンは我が《支配》下にあるのだぞ! 命惜しくば――』


 ジャブツェルコの命は、数値で言うのなら後五〇%程だろう。


 分かる、理解できる、把握できる。


 俺の体はそういう(・・・・)風になっていた。


 だから叩く、潰す、マナへと返す。


 生まれ変わったような清々しさがあった。


 極限まで高まった集中力と驚くほど思い通りに動く体。


 できないことはなかった。


 俺が奴の爪撃に合わせてウォーハンマーを叩きつけると、爪が圧し折れて塵のように砕け散り、マナとなって世界へ還った。


 また一つ、俺は理解した。


 悪魔(デーモン)の体は、精神(アストラル体)を擬似的な肉にしている。


 魔法と魔法の武器以外では傷付かず、肉体の傷が精神状態に反映される。


『貴様ァァあッぁああああ!』


 ジャブツェルコは憤怒の叫びをあげ、皮膜の翼で飛び上がった。


『この都市の全ての者よ殺せ! 殺せ! 殺せェェええええ! ニンゲンは見つけ次第殺せ! ありとあらゆる手段で殺せ! 全ての力を振り絞って殺せッ! この男を殺せェぇえええエえ"え"え"ッ!』


 俺も浮遊を可能にする靴で飛び上がって追撃するが、《テレポート》で逃げられた。


 見失った。俺はギルドで保管していた悪魔(デーモン)感知の武器を取りに向かった。


 地上に降りて館を離れようとすると、大勢の人間が集まっていた。


 火事を消しに来た者、槍を構えた衛兵、野次馬の民衆、その全てが戸惑っていた。


「あ、足が勝手に」「ぎゃぁあああああ!」「うわぁぁあああ!?」「体が勝手に動いたんだ!」「人殺し!」「誰か止めろぉ!」


 衛兵が子供を刺した。


 野次馬は言葉では止めようとする一方で、レンガの塀を崩し、民家から刃物を取って路に現れた。


 子供を槍で貫いた衛兵は、苦しむ子供の体をぶら下げたまま俺の方へ歩み寄る。


「とっ、とめ、とめてくれぇ!」


 悲痛な叫びを上げる彼は人間の膂力を越えた力を発揮し、肉の盾を掲げて突進した。


 また理解できた。


 天啓が舞い降りた。


 ジャブツェルコは、始祖のデーモン第14席次“死に至る螺旋”に連なる一族の末端であり、《支配》の魔法はその一族のみが使える秘術。


 《支配》は特に優れた魔術師の《*解呪*》の魔法によってのみ解くことができ、アッテムトでは《*解呪*》ができない。


 《解呪》の魔法を掛けられた場合、魔法が解かれたフリをする。


 《支配》された者は命令を必ず実行しようとし、異常な身体能力を授かる。


 最適解は一つ。


「1、2」


 頭を二つ弾き飛ばして、数える。


 ジャブツェルコは《支配》した生物の、体だけを操り、俺を殺そうとしていた。


 長年掛けて、アッテムトに住む一万人以上の住民を《支配》して、それを使って殺しに来ていた。


 万を越す命乞いを浴びせ、油断を誘っていた。


「わぁぁあああああ!?」


 わけも分からず走る男。


 殺した。27。


「助けてぇ!」


 助けを請いながらナイフを構える若い女。


 殺した。56。


「やめてやめてやめて来ないでぇ!」


 己の子供を盾にするように掲げて石を握る母親。


 殺した。251、252。


「母さん、父さん、助けて!」


 親の幻影に助けを求めながらも武器を振る男。


 殺した。783。


「やだぁああああ!!」


 《支配》されてない冒険者を寄って集って撲殺した子供達。


 殺した。1078、1079、1080、1081、1082、1083、1084。


「あひゃひゃひゃおかしいおかしいおかしいおかしい」


 気の狂った老人。


 殺した。1483。


「た、助けてください、ギルドでいつも顔を合わせてますよねやだやだやだやだ動かないで来ないでやだぁ!!」


 顔見知りのギルドの受付嬢。


 殺した。2679。


 ありとあらゆる人間。


 数を数えて殺した。


 燃え盛る都市の中で、《支配》された住民たちが操られていない人間を殺し、死に物狂いで俺を殺しに来た。


 殺した。2723。


 返り血でむせ返る頃、俺は悪魔感知の剣を装備して都市を闊歩していた。


 物資を拝借しながら殺し渡り、一日中ジャブツェルコを目指して突き進む。


 殺した。3488。


 夜には大雨が降った。


 都市には煙の匂いが染み付いている。物資の数も心許なかった。


 水薬(ポーション)を求めて小さな商店に押し入ると、見覚えのある人間に会った。


 あの女冒険者だ。


「っ! もしかして、あ、アンタ……?」

「■■■■■■」

「私は、外の人みたいにおかしくなっていないわ」

「■■■」

「……悪いけど、今は動けない。正気の子供たちが奥にいるの。他の冒険者が命を懸けて私に託したから……」


 彼女はやつれて、覇気がなかった。


 どの道、連れて行くことはできないだろう。


 ダンジョンでは頼りにできたが、期待できない。


「……ねぇ、図々しいとは思うわ。だけど、孤児院に預けている私の弟の、様子を見てくれないかしら。助けてくれたら、その、何でもするわ」

「■■■■」

「……ありがとう。あ、そうよ、《解呪》の杖を持っているの! 弟が正気じゃなかったら、これを使って頂戴。満タンにしてあるから、他の子にも使えるわ!」

「■■■」


 この冒険者の言う、孤児院の場所は知っていた。


 ジャブツェルコが近い。


 俺は雨に打たれながらその場を後にした。


 殺した。3511。


「神よ神よ神よ神よ神よ神よ神よ神よ神よ神よ」


 自ら目を潰し、おかしくなったシスター。


 殺した。3512、3513。


 泣き叫ぶ子供。


 殺した。3514、3515、3516、3517、3518、3519、3520、3521、3522、3523、3524、3525、3526、3527、3528、3529、3530、3531、3532、3533、3534、3535、3536、3537。


 孤児院にマトモな人間は居なかった。


 夜襲が続いた。


 3688。


 だが、朝が来れば、不気味なほど街は静まり返っていた。


 ジャブツェルコは俺が近づいても逃げるだけで、反撃をしてこなかった。


 奴はこの街から逃げないと知っていた。


 奴ら上級悪魔(グレーターデーモン)は身内すら信用していない。


 俺を逃せば、それは他の悪魔(デーモン)に手柄と獲物を横取りされるのと同義で、なおかつ、なるべく手の内を明かさないように俺をいたぶりに来る。


 あと二日以内に殺しに来る。


 3690。


 俺は大きな商店に押し入り、魔法のポーチや物資をかき集めた。


 その途中、地下倉庫に篭った冒険者を二人見つけた。


 戦士と魔術師だ。


 《支配》を受けているわけではなかった。


「……おいアンタ、外はどうなってる」

「■■■」

「警告どうも、それだけで十分だぜ」

「なぁ兄さん、帰還手段とかないか?」

「バカおめぇ、そんな物があったらとっくに出ていってるよ」

「■■」


 俺はディセンブルグに通じる《帰還》の魔法棒を渡した。


「マジか……」

「兄さん、逃げねぇのか?」

「■■■■■■■■■」


 二人はありったけの物資を俺に渡し、《帰還》した。


 地上に出ると、《支配》されていない九歳程の子供が一人、道の真ん中に現立っていた。


 ジャブツェルコが近くに居る。


 罠だ。


 だが、■らねば。


 俺が近づくと、子供の腹部が内から破裂して臓物が降り注いだ。


 1。


『同族が死んでも声一つ出さないのか? 悲しまないのか? 慈悲を乞えよ、下等生物!』

「■■■」

『チッ……さぁ、神聖少年騎士団の登場だ! 《支配》はしていないぞ? お前を殺せば両親を開放! うーん、素晴らしき親子愛だッ!』


 ガチガチと震える手で短槍を構え、ブカブカの革鎧に身を包んだ年端もいかない子供が十人。


『いい見世物になれ。動けば子供を一人ずつ苦しめる』

「うわぁぁああああ!」

「ああああああッ!」

「お母さん! お母さん!」


 絶叫とともに駆ける子供の、槍の穂先を砕いて受け流す。


『動いたな?』


 臓物が降り注ぐ。


 2。


「たすけて!」

『泣け、鳴け、哭け! 跪いて許しを請え!』


 3、4、5、6、7、8、9、10、11。


 頭を飛ばして一撃で仕留める。


「……ジャブツェルコ」

『はぁ、次も用意しておこう。《テレポート》』


 奴が逃走した。


 俺は飛び出して、魔法のポーチから剛力の弓と悪魔祓いの矢を構えて追跡する。


 悪魔を感知する装備などダンジョンからいくらでも拾える。


 悪魔(デーモン)共は身内に盗られて逆襲されるのを警戒するあまり、魔法の武具を持たない。


 だから俺が追い詰めていた。


 視界に空を飛ぶジャブツェルコが映った。


 気づかれないように先回りし、有利な場所で遮蔽物に隠れて待ち構えた。


 一刻も早く殺す。


 俺は悪魔祓いの矢をつがえ、急所目掛けて放った。


『ぐぁッ!? 何だ!?』


 続けざまに四発。


 ジャブツェルコはようやく俺の姿を捉え、《ファイアボール》を放つ。


 咄嗟に奴の視界外へ飛び込み、爆心地から離れた。


 奴が嬲るように俺を殺すつもりなら、俺も同じ手段で殺す。


『《テレポート》!』


 逃げた奴の場所は分かる。


 追いかけ、矢を射かけ、魔法を耐性と距離減衰でやり過ごし、逃げた奴をまた追いかける。


 ジャブツェルコの自然回復能力は俺と比べても劣る。


 奴が時間を稼がない限り、この削り合いは俺が制する。


『――来たれッ、《悪魔召喚》!』


 俺を囲むように混沌の下級悪魔(レッサーデーモン)が十体現れた。


 下級(レッサー)上級(グレーター)では存在の格が違う。ただの障害物だ。


 ジャブツェルコは時間を稼げれば十分で、狭い路地へ飛び込んだ。


 素早く弓からウォーハンマーに持ち替えて、襲い来る下級(レッサー)を蹴散らし、奴が待ち構えている奥へ乗り込んだ。


 その間にも、四方八方から下級悪魔(レッサーデーモン)がこの地を目指して集まっているのが分かる。


 予め召喚しておいたようだ。


 そして、奴が用意したのは同じ血族の下級悪魔(レッサーデーモン)ではなく、召喚魔法によって混沌から呼び出される下級悪魔(レッサーデーモン)


 ジャブツェルコにとっては裏切られる心配は無く、使い捨てられる程の数を揃えられる。


 飛行している混沌の下級悪魔(レッサーデーモン)は、路地を埋め尽くすように上下左右前後全方向からやってきた。


 目くらましや混乱の呪文を唱えるか、軽い物理攻撃を加えてくるだけだ。ざっと二〇〇は居るが、障害にはならない。


 ウォーハンマーで弾き飛ばし、浮遊して撃ち落とし、投げ飛ばして複数体を巻き添えにする。


 ただ前へ、前へと突き進めば、奴の虎の子――血族の下級悪魔(レッサーデーモン)が五体、ジャブツェルコと共に開けた場所から魔法を一斉に放った。


 魔法で圧殺。


 その手段を採ることは知っていた。


 部屋に飛び込む前に《テレポート・アウェイ》の魔法棒で三体の下級悪魔(レッサーデーモン)をランダムにテレポートさせ、残りの二体を撲殺した。


 逃走したジャブツェルコを矢で射ながら、途切れた強化を掛け直した。


 奴は召喚した混沌の下級悪魔(レッサーデーモン)を置いて大通りに出た。


 アッテムトのメインストリートで道幅は広く、つい二日前までは数多くの人が行き交っていた場所だ。


 今は違う。


 軍隊のように隊伍を組んだ市民が血の匂いと腐敗臭の漂う中、不安を口にしながら立たされていた。


 数は、恐らく都市中の生存者全て。


 ジャブツェルコが上空を通過すると悲鳴が上がった。


『さぁ、今度は市民の義勇兵だ! 同胞の死骸を踏み付け、肉の山、血の河、骨の塚を築くまで、死力を尽くして殺しに来るぞ! 数は七千、お前に全て殺せるか?』


 俺も浮遊して飛び出した。


 《支配》された市民の中には僅かに、衛兵の持っていた血塗れの槍を持つ者がいた。


 彼らは俺の移動に合わせて投槍を行い、武器を受け渡していた。


 あちこちで絶叫がした。


 3721。


「頼むぅううう! その悪魔を殺してくれぇ!!」

『ん?』

「殺して! あいつ殺してよぉ!」

「ころせぇぇええええ!」

「もうたくさんだ!」

「娘の仇を取ってぇぇええええええ!!」


 怨嗟の声が街中に木霊する。


『おやおや意外ですね、英雄気分が味わえますよ? 楽しんだらどうですか?』


 ジャブツェルコが空中で静止した。


 今度は『原初の泥の』ウォーハンマーではなく、悪魔祓いのロングソードを構えて奴の懐に飛び込んだ。


『踊りなさい、《真・吸血(トゥルー・サック)》』


 交差する瞬間、暗緑色の光が俺から生命力を奪い去り、奴の元へ注がれていった。


 俺の生命力は奴と比べて低いので回復量に問題はないが、ダメージは大きい。


 これが奴の不自然な自信の元だった。


 ――暗黒魔法、死の力を操る強力な魔法だ。


 思いきり斬りつけたが、ジャブツェルコはこちらの斬撃が浅いと見るや、手拍子を打って市民に命令する。


『ほらほらみなさん、この男を殺しなさい! 生きたいならね!』


 直後、無数の槍が上空から降り注いだ。


 回避して当たるものを剣で弾くが、下の市民に次々と突き刺さった。


 3726。


 運良く無事だった者が傷口を抉るように槍を取り出して3728、俺目掛けて穂先を振った。


 息ある者すら踏み付けて群がる彼らの攻撃を、靴や具足で弾きつつ、ジャブツェルコに肉薄して再び接近戦に持ち込んだ。


『楽しかったですか? 沢山救った気分ですよねぇ? 皆さん、あなたを英雄のように思っていますよ? まぁ勝てないんですが』


 ジャブツェルコと俺の近接能力は同程度だ。


 二回に一回は攻撃が外れる。


 だが、もう一つ武器が在れば別だ。


 手数は倍、『天下無双の』ガントレットが二振りの得物を自由自在に使いこなす補助をした。


 悪魔祓いのロングソードに短剣も握り締め、苛烈に攻め立てた。


 奴の《真・吸血(トゥルー・サック)》の回復量を上回り始めた。


 俺は山程ストックしてある*体力回復の薬*で素早く全ての傷を癒やした。


 ジャブツェルコの命が削れていくのが分かる。


 焦りが分かる。


 《テレポート》で逃げようとするのが分かる。


 懐に捨て身で飛び込んで短剣で一閃、胸に一文字の傷を刻み、ロングソードを投げ捨てて、魔法のアミュレットを傷口に捩じ込んだ。


『ガァッ! 貴様ッ、《暗黒の嵐》!』


 魔力を帯びた邪悪な意志が渦を巻き、有象無象を呑み込まんと荒れ狂う。


 《支配》された者が居ようともお構いなしだ。


 奴の命は七割も残っていた。


 だが、もうジャブツェルコは逃げられない。


 虎の子の魔法でさえ回復が追いつく。


 悪魔(デーモン)は魔力の回復手段を持たないと知っていた。持てば必要な時に奪われるから。


『化け物が……《テレポート》』


 《テレポート》は発動するが、効果はかき消された。


『は……《テレポート》! どうなっている!? 《テレポート》!』


 傷口に捩じ込んだ反テレポートのアミュレットが、ジャブツェルコの《テレポート》を阻害した。


 奴もそれに気づき、自らの傷口に手を差し入れようとした。


『グギャァアアアア!』


 させるはずもない。


 再び『原初の泥の』ウォーハンマーを手に取って、腕ごと手を砕いた。


 奴の動きが随分と分かりやすくなってきた。


『あ、ありえん……』


 倍の手数で切り裂き、叩き潰し、ジャブツェルコの持ちうる手段を封じた。


 奴の恐怖が分かる。


 有りもしない未来の為に、全てを出し惜しんだことを後悔し、惨めな敗残者として何もかも失うのだ。


『俺が、この俺が、ニンゲン如きにッ!』


 デタラメに繰り返された《暗黒の嵐》に《真・吸血(トゥルー・サック)》。


 受けた傷は生命の薬で完全に癒やした。


 回復手段が豊富に有り、魔力も完全に回復した俺。


 傷は癒せず魔力も尽きかけ、逃走もできないジャブツェルコ。


『負けるハズがぁぁぁぁああああああああ!!』


 命が今、俺の手の中にある。


『やめろぉぉぉぉおぉおおおおおお!』


 背を見せて逃げ出したジャブツェルコの、角を掴んで地面に叩きつけた。


『助けてくれ、悪かった、反省するがぁぁああああ!?』


 地に伏した奴の肩を抑えつけて、翼を毟り取る。


『殺さないでくれ! 《支配》も解く、やめろ! やめろ! 誰か助けろ! 下級悪魔(レッサーデーモン)どもぉぉおおおお!』


 ウォーハンマーを渾身の力で振り下ろし、ジャブツェルコの頭を、完全に砕いた。


 精神が人型を成すならば、急所もまた人型と似通う。


 精神の核――魂が完全に崩壊したジャブツェルコは、そのまま肉体がマナへと還った。


 終わった。



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