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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
六章 ゲンシュタット帝国
97/109

【92】退屈するエヴァンス




◼️◻️◼️◻️



 ドルトリア王国へストラディアアイランドの石を持ち帰ったエヴァンスは、早速スパイダーへ助手にブラックを付け、モンパカ牧場の隣に研究室を与えて通信アイテムの研究に取り組んで貰った。そしてワルキュリアとポポロも交易事業へと戻り、エヴァンスは金庫屋でだらだらとしていた。


 珍しくエヴァンスがドルトリア王国へ長期滞在しているので各地の商人が商談に訪れ、エヴァンスとローバインの二人で案件を押さえて商売の範囲は更に拡がった。中でも最近はサンストーンのランプが人気を呼びポポロとライムとサファイアも縦横無尽に南の大陸を駆け回り、モンパカ交易社は更に従業員を増やした。


 エヴァンスは退屈そうに金庫を開けて中を覗くと、大量の金貨を見て欠伸をしながら扉を閉めた。そしてローバインへ


「ちょっと外へ出てくる。」


そう言って金庫屋を出て行った。エヴァンス久しぶりにドルトリアの市場へと行くと、入り口では昔からの馴染みの露店商のジダンが居た。ジダンは市場の組合長となり、ドルトリア王国の市場を取り仕切っていた。ジダンはエヴァンスを見ると近寄り肩を叩いて


「おいエヴァンス久しぶりだな。お前今朝の新聞に出てたけど、南の大陸長者番付に出てたな。儲け過ぎなんだよ。」


「ほとんど税金で持っていかれるから、長者番付になんか載ってしまうんだよ。それよりなんか楽しい事でも無いか? 」


「ほほう。金が満たされて退屈になっちまったか。そんな時は恋人でも捜してデートでもしな。今度俺も結婚することになったから、結婚式にはお前も出てくれよ。」


そう言ってジダンは隣に居る女性の肩を抱いてエヴァンスに自慢した。エヴァンスは笑顔で


「めでたいな。美味しい酒が飲めそうだよ。」


そう言ってジダンに手を振って市場の中へと歩いて行った。エヴァンスはジダンの言葉を思い返しながら


「恋人ねぇ。」


と呟いて、けだるそうに歩いた。なにやらここ最近の過激な出来事に対して急に訪れた安息は、不安は無いが興奮も無かったのである。エヴァンスは仕方無いので鼻唄でも歌いながらブラブラを続けた。




▽▲▽▲



 ドルトリア王国の北部に広がる巨大な軍事力を持つゲンシュタット帝国では領主達と軍の幹部を交えて会議を行っていた。


 ゲンシュタット帝国はワルシュク領の北に位置するゲンシュタット国が戦争で領地を広げた帝国であり。そのゲンシュタット皇帝ラミザス=ゲンシュタットにより治められていた。領地は、西よりセミパラ領、ゲンシュタット国、ワルシュク領、チェルロ領、モスキア領、ウラジル領、デリシナン領と七つの領地で成り立っていた。そしてその各領地はゲンシュタットの血族が治めていた。


 セミパラ領はルドルフ、ゲンシュタット国はラミザス、ワルシュク領はルナフレア、チェルロ領はリーガル、モスキア領はロザン、ウラジル領はレオン、デリシナン領はロードレインと全てがゲンシュタットの血を引くものであった。


 皇帝ラミザス=ゲンシュタットは白髪混じりの荒々しいオールバック姿で威厳に満ちていた。そして静かに低い声で


「この南の大陸統一に向けて我等の障害となっている国は何処だ? ルドルフ。」


「ハッ! ラミザス様。やはり南の大陸を二分するフランティア公国と思われます。」


「本当にそう思うか? ルーズゲイン将軍。」


「軍人の私としては1番の障害はドルトリア王国であります。最強の武力ワルキュリア=ドラクルス、カモミール=ドルトリアの政治力がフランティア公国への侵攻の妨げにもなっております。」


「鋼鉄の貴婦人カモミール=ドルトリア。滅獄のワルキュリア。両者共に我が耳に届く名だ。」


そう言うとラミザス=ゲンシュタットは立ち上り窓から外を眺めた。



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