【91】空気が読めません
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ストーンズの町で人々は石神の神殿の前で朝を迎えた。ストラディアヘルバードの恐怖の無くなった人々は清々しくも美しい朝日の中で、舞台へクレアスティ姫が酔っ払ったまま登っている姿に注目した。そしてクレアスティは
「エヴァンスさんこちらへいらしてください。」
そう言われてエヴァンスは全裸のままで、のそのそと舞台へ登りクレアスティの横へ立った。するとクレアスティは民衆へ向い
「このストラディアアイランドの伝承では、ストラディアヘルバードから女神ストラディアを救った石の神と結ばれストラディアアイランドが繁栄しました。その故事にならい、わたくしとストラディアヘルバードを討伐したエヴァンスさんと結婚してこのストラディアアイランドを更に繁栄させてみせます! 」
と宣言した。その宣言を聞いた民衆や兵士、そしてワルキュリアやポポロはあまりの発言に固まった。しかしエヴァンスはボーッとした顔で
「嫌だよ。」
そう言って更に周りを凍り付かせた。そして更にエヴァンスは
「結婚とか考えた事も無いし。俺は忙しいんだ。それにストラディアヘルバードを倒したのはワルキュリアだから俺じゃないぜ。」
そう言って舞台を降りてまた酒を飲み始めた。ストーンズの町のとても信頼厚く美しい姫が大衆の前で行ったプロポーズを、よく解らない全裸の男があっさりと断った事で場の空気は一気に凍り付いた。民衆や兵士達は怒ってエヴァンスに酒瓶や木の棒を投げた。その酒瓶がエヴァンスの頭に直撃してバタンと倒れて泡を吹くと、ワルキュリアが気絶したエヴァンスを担いでポポロが民衆へ向い
「ごめんなさいクレアスティ姫、ストーンズのみなさん。コイツは空気読めなくて、バカで、女心が全く解らないのよ。だからこんなのと結婚なんてしたら姫もみんなも大変よ。だからこれでいいのよ。」
そう言って頭を下げてエヴァンスを連れて宿屋へと戻った。そそくさ帰るエヴァンス一行を明るく輝く太陽の陽射しで照らされている姿を見ると、皆我に返りストーンズの町の宴はお開きとなった。
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そして後日エヴァンス一行がクレアスティ姫の下を訪れて挨拶をすると、クレアスティ姫は気不味そうにモジモジしながら
「あ、あの日、、わたくしが言ったことは、お酒が入った冗談ですからね...... コホン。」
そう言うとエヴァンス以外の人々は
(やっぱり大衆の面前でフラれて落ち込んでたんだ...... 。)
と心の中で思った。そんな空気も関係無くエヴァンスはクレアスティ姫にニコッと笑顔で
「あんたは綺麗で立派な女だよ。ただそれはこのストーンズの町の人々を元気付けなきゃならない。それに比べて俺はまだまだこの世界を駆けずり回りたいんだ。お互いこの世界で笑ってようぜ。」
そう言って立ち上り拳を前に出した。するとおどおどしながらクレアスティ姫も拳を前に出し、コツンと当てるとお互い笑顔で別れを告げた。
エヴァンス達はそれから市場へ出掛けて、通信水晶や、サンストーンや、薬になる石や、水に浸けると酒に変わる石など様々な石を買い。市場を観覧して歩いた。ポポロはエヴァンスへ
「石はそれっぽっちで良いの?あれだったらジュエルズマウンテンで掘り出しても良いんじゃない? 」
それを聞いたエヴァンスは少しスパイダーの顔を見て
「こう言った資源ってのは数に限りが有るんだ。それを誰かが大量に取れば争いに繋がり、無理に発掘を続ければ環境を破壊して人間を追い詰める事になるんだ。だからこんなもんで良いんだよ。必要になったらまた買いに来れば良いさ。」
そう言ってサンストーンでお手玉を始めた。エヴァンス達はそれから市場で食事を取ると、ドルトリア王国へと向けてモンパカ車を走らせ、ストラディアアイランドを後にした。




