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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
五章 三変人
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【89】悪足掻き




 ストラディアヘルバードが動かなくなったのでエヴァンスとブラックは地上へ降りてシルバードラゴンを戻すと、歩いてストラディアヘルバードへと近付いた。あまりに大きいので近くに見えたが、少し距離があり歩いて近付くにつれて1キロメートルの巨体の大きさを実感した。


 エヴァンス達が近付くといきなりストラディアヘルバードは息を吹き返して雄叫びを上げた。そのあまりの迫力にエヴァンスとブラックは腰を抜かして座り込んでしまった。ストラディアヘルバードは立ち上りエヴァンス達を探している。絶体絶命のピンチとなってしまった。


 しかしその時に、一人の戦士が空から飛び降りてストラディアヘルバードの頭を一瞬で斬り裂いた。それはこの場に居るはずの無いワルキュリアであった。ワルキュリアは剣を鞘に納めるとエヴァンス達の所へ駆け付け、そしてすぐに近くへポポロがモンパカ車を停車した。ポポロは怒った顔をして


「あんた達、バカじゃないの。あんな化け物相手にワルキュリア抜きで戦闘だなんて。徹夜でワルキュリアを連れてきたワタシに感謝するのよ。」


そう言った。するとエヴァンスは気の抜けた笑顔を浮かべて


「よっ。遅かったじゃねぇか。俺の計算だともう少し早目に帰って来ると思ってたんだけどな。」


そう言って仰向けに倒れた。ブラックもワルキュリアとポポロの姿を見るや一気に張り詰めた気持ちが途切れて魔力も使い果たして笑いながら倒れた。ワルキュリアは


「本当に仕方無い人達ですよね。」


と二人を掲げてモンパカ車の荷台へ乗せるとストーンズの町へと戻る事にした。


しかし


「ギィイイイヤァオァアアア!!! 」


「ギョアァイアァアアア!!! 」


とけたたましい雄叫びが2つ鳴り響いた。その激しい音にワルキュリアとポポロが振り返った。


 何とストラディアヘルバードの死体の下へ更に2匹のストラディアヘルバードが現れた。最近ストラディアヘルバードの襲撃が増えていたのは、3匹のストラディアヘルバードが交互に襲撃を仕掛けているからだったのだ。やっとの思いで倒したストラディアヘルバードであったが、更に2匹を同時に相手しなくてはいけない状況になってしまった。


 ブラックはガタガタと震えて恐怖したが、エポポロは笑い。エヴァンスもつられて笑いながら


「ワルキュリア。さっさと済ませてくれ。」


と言った。するとワルキュリアは背を向けて軽く振り向くと微笑んで頷き、荷台から軽やかな羽毛の様に飛び降りると同時にストラディアヘルバード達へと向かって走り出した。


 走り向かって来るワルキュリアに怒り狂った2匹のストラディアヘルバードは我を忘れて襲い掛かった。涎を滴ながら鋭い無数の牙を見せ付け大きく口を開いてワルキュリアへと走った。ワルキュリアは鞘から剣を抜くと走りながら構えて呟いた。


「滅」


「獄」


その言葉と共にワルキュリア周囲の空間を斬撃が埋め尽くして直径200メートルの球状に全ての物を消滅させる程に斬り付けた。


 ワルキュリアへ襲い掛かったストラディアヘルバードは2匹共、走りながら首から上を失い雪崩れ込む様に体を崩して倒れ。滅獄で空いた半径100メートルの半球の穴へと滑り落ちた。ワルキュリアは涼しげな顔のままに金色の長い髪を風になびかせながら剣を鞘に納めた。そして跳ねる様に穴から走り出るとモンパカ車の荷台へ戻り


「終わりました。」


そう微笑んだ。エヴァンスとポポロは見慣れていたが、ワルキュリアの強さを初めて目の当たりにしたブラックは驚いた。噂は耳にしていたが、滅獄のワルキュリアの強さは想像を遥かに超えていたからである。自分達があれほど苦戦して倒せなかったストラディアヘルバードを2匹も瞬殺していしまう実力の違いにもはや笑うしかなかった。




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