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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
五章 三変人
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【83】ワルキュリア不在




 石神の神殿に集まった者達は静まり返ったと思ったら、間を置いて爆笑した。数百年に及び戦ってきた巨大な怪鳥ストラディアヘルバードを如何にも非力そうな商人の青年が討伐に名乗りを挙げたのだから当然であった。しかしエヴァンスはそれでも迷いの無い目でクレアスティ姫の目を見ている。クレアスティは優しく微笑んで


「それが叶うので有れば、あなた様の願いも叶えねばなりませんね。しかしご無理をなさらないでください。」


そう言うと、エヴァンスはガッツポーズを取り


「それではこのウォーレン=エヴァンスが率いるモンパカ交易社があの怪鳥を討伐致しますのでご覧ください。」


そう言ってエヴァンスは石神の神殿に背を向けて市場へと戻って行った。後ろからはストーンズの兵士達の笑い声しか残らなかったが、エヴァンスは全く気にせずに歩いて行った。一部始終を見ていたスパイダーは不安そうに


「エヴァンス君。幾らなんでもあの巨大な怪鳥を倒す何て事は不可能だ。死ぬのが落ちですよ。」


そう言ったがエヴァンスは気にせずにポポロ達の居る市場へと向かった。


 市場へ戻るとポポロとブラックが品物を見学していた。そこへエヴァンスは二人を見るや


「おい! 急遽あのストラディアヘルバードを倒さなければいけなくなった。お前達準備をするぞ。」


そう真剣な顔で言った。ポポロとブラックはあまりにも突然の事で


「アンタあんなでっかい鳥をどうやって倒すのよ! ワタシの魔法は補助魔法だけなのよ! 」


「おいらのミャーユメより数倍大きいあんな鳥なんて無理ですよ! 」


「そうよ! せめてワルキュリアが居れば良いけどワタシ達だけでなんて無理よ! 」


と皆がエヴァンスを非難した。しかしエヴァンスは意に介さず


「決まったんだから仕方ないだろ。それよりこの市場で戦いに使えそうなもんを探して買うぞ。」


そう言って市場の店を一つ一つ物色して回った。ポポロとブラックとスパイダーは不安な顔で目を見合わせたが、こうなったエヴァンスは気持ちを変える事は無いだろうと諦めて買い物へ付いて行った。エヴァンスはあちらこちらの店を覗いて回り、一つ一つ手に取って確かめていた。そして本屋へ寄るとストラディアヘルバードに関する記述の有る本を買い漁り、宿屋へと戻った。


 宿屋へと戻ったエヴァンスは徐にベッドへ寝転がり、本を積み重ねて1冊ずつ目を通した。鞄から干し肉を取り出して噛りながらストラディアヘルバードをモデルとした絵本を読んだり、ストーンズの町の歴史書を読んだり、石神について書かれた本を読んだりとして、ポポロやブラックが話し掛けても反応もせずに集中していた。そしてスパイダーはエヴァンスの読み終えた本を手に取り読んで、メモを取ったりしている。そんなエヴァンス達に呆れたポポロは


「ワタシ、ちょっと出掛けるから。」


そう言ってポポロは部屋を出て行った。ポポロは部屋を出るとモンパカ車のモンパカ達に餌を与えて顔を撫でるとモンパカ車に乗り


「あんなでっかい鳥に勝てる訳無いわよ。ワタシはこんな所で死ぬのはゴメンだわ。」


そう言って手綱を振るい飛んでいった。そして夜は更けてエヴァンスは食事も取らずに干し肉を噛みながら読書を続けて一つ一つノートへと記入して作戦を立てていた。そんなエヴァンスを残してスパイダーとブラックは二人で食事を取り就寝についた。エヴァンスは時折、発光する石のランプを手に取り


「ほんとこの石は便利だよな。」


と呟いて読書を続けた。


 どの本にも書かれている事は、ストラディアヘルバードはストーンズの町から少し離れた、ジュエルズマウンテンに数百年前から生息しており、度々町に降りて来ては人々を襲っている事が書かれていた。そして過去に1度も退治された記録は無く攻略は難しく書かれていた。





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