【82】クレアスティ姫
ストラディアヘルバードとストーンズの町の兵士達の戦いを見終わったエヴァンスは気持ちを切り替えて
「よし。あのでっかい鳥も居なくなったし、ストーンズの町を見学しようぜ。」
そう言って、皆を引き連れて宿屋を出て町を散策する事にした。町の外は先程の戦闘もあり人の姿は少なくなっていた。そんな中を市場へと向かっていると、一人の兵士が透明の魔石を握り話し掛けている姿を見た。エヴァンスとスパイダーはそれを見るや、兵士の元へ駆け寄り
「おい! その石を見せてくれよ! 」
「わっ! 何をするお前達! まだ通話中だから返しなさい! 」
と無理矢理奪って兵士を慌てさせていた。取り返そうとする兵士を交わしながらエヴァンスとスパイダーは真剣にその魔石を見ている。魔石はガラスの様に透明で中に何も入っていないが、相手の声が聴こえている。
「おい! どうしたんだ! 返事をしろ! 」
「もしもーし。もしもーし。」
と相手の声に返事をしながら、エヴァンスが石を擦っていると音が聴こえなくなり兵士に石を取り上げられた。兵士はエヴァンスとスパイダーに
「お前達、余所者だな。これは通信水晶と言って魔力と連動して音を出す石なんだよ。勝手に通話を切りやがって。」
と言って二人にゲンコツをした。エヴァンスとスパイダーは頭を押さえながらも
「あんな石があるとはね。エヴァンス君。」
「ああ、あれを調べてこの世界にスマホを作りたいんだよ。」
とニヤニヤしながらそんな事を話していた。そしてその様に凄い石の数々を目にしたエヴァンスとスパイダーは気分が盛り上がり、一目散に市場へと駆けて行った。市場へと着いたエヴァンスとスパイダーは市場で石を売る店を探して回り、一軒の店を見付けた。その店では様々な石が並べられており、聞いたことも見たことも無い石ばかりでエヴァンスとスパイダーは店主へと色んな質問をした。
「なあ、この発光する石は何て言う石なんだ?
」
「御主人、こちらの緑色の石はどのような効力を持っているのでしょうか? 」
等と矢継ぎ早に質問した。店の主人は二人へ
「その発光する石はサンストーンって名前で、その緑色の石は薬石と言って砕いて飲むと薬になるんですよ。」
そう答えた。エヴァンスは店主の前に金貨を5枚置いて
「これで買えるだけくれよ。」
と言うと店主は険しい顔をして、腕組みをするとエヴァンスへ
「残念だが兄さん。このストーンズの町では余所者に石を売ってはいけない決まりがあるんだ。その決まりを破ると姫様に死刑にされるんでな。」
そう言った。エヴァンスは更に店主へ質問した。
「姫って誰だよ? その姫が良いって言えば売ってくれんのかよ? 何処に居るんだ? 」
「姫はクレアスティって名前で石神の神殿に居るこのストーンズの町のお姫様なんだ。今まで石を買うことを許された余所者なんて一人だけしか居ないから、あんた等には無理だよ。」
「そっかありがとな。」
そう言うとエヴァンスは道を訊ねながら、石神の神殿へと急いだ。そこでは兵士達が集り、先程のストラディアヘルバードとの戦闘を一人の女性から称えられていた。柔らかそうな金色の巻き髪に簡素ながらも気品の有るティアラを着けており、優しい声で兵士達を労っていた。
「ストーンズの兵士諸君、先程の戦闘に置いてのストラディアヘルバードの撃退御苦労でありました。数百年に及ぶ討伐は叶いませんが、諸君等の健闘により町は救われました。私から心よりの感謝を申し上げます。」
と言っている。それを聞いたエヴァンスはいきなり大声で
「ドルトリア王国からストーンズの町と友好を結ぶために来たウォーレン=エヴァンスと言います。クレアスティ姫にお願い申し上げます。俺達があのストラディアヘルバードの討伐に成功した暁には石の購入権を頂きたい。」
と兵士達の歓声を遮って大きな声で叫んだ。その言葉に石神の神殿に集まった者達は静まり返った。




