【80】ストラディアアイランド
エヴァンス達は入国の厳しいゲンシュタット帝国を迂回してバスキリア帝国上空を通り、ストラディアアイランドへと向かった。荷台の上でエヴァンスはゴソゴソとバッグを漁ると干し肉とウィスキネ領のウィスキーを取り出して酒を、スパイダーへと渡した。スパイダーは酒を受け取るとひと口飲んで
「この世界に来て酒を飲むようになったが、初めて酒が美味しいと思ったよ。前の世界ではいつも何かに追われている気がしていたが、好きな物を好きな時に楽しめるのも良いものだ。」
そう言うと酒瓶をブラックへと回して3人で回し飲みを始めた。それを冷ややかな目でポポロは
「アンタ達、ワタシが運転してるからって、好き勝手飲んで覚えてらっしゃい。」
そう言うと手綱を振るってモンパカ車のスピードを上げてストラディアアイランドへと急いだ。雲を抜けて下降して島を見付けるとポポロは手綱を軽く返してぐるりと回りながら降り、島の砂浜へと着陸した。
ストラディアアイランドは南の大陸から一番赤道に近い位置にあり常夏の島であった。不思議な事に侵略戦争を繰り返すゲンシュタット帝国の近くに在りながらも、何処からの支配もされずに存在していた。アルスガルディア渡航譚の中でもストラディアアイランドの事は書かれていたがエヴァンスは敢えてそこのページは読んでいなかった。
そしてエヴァンス達はモンパカ車を走らせて、この島に居る住民達の集落を探す事にした。エヴァンス達は酒を飲んでしまい、荷台で寝転がってゴロゴロしていた。そしてエヴァンスはブラックに
「そう言やブラックは以前にここに来た事あるんだよな? お前は寝てないでポポロの助手席で案内しろよ。」
そう言ってブラックを起こしてポポロの横へと移動させた。そしてブラックは渋々重い腰を上げて助手席へと移りポポロを集落へと案内した。エヴァンス達が到着した砂浜から林を抜けて川の在る辺りで煙が上がるのを見付けた。そして一時間程走るとそこには想像していたよりも、遥かに大きく立派な町が目に入った。
町は煉瓦作りの塀で囲まれており、入り口には立派な門が構えていたが開いていたのでその手前にモンパカ車を停めた。そこでブラックはモンパカ車から降りると門の所まで歩いて門番の兵士と何やら談笑を始めた。すると兵士は手招きしてモンパカ車を町の中へ入れると兵士は
「あんた達はブラックさんの友達だってね。私達は敵とは戦うが、友達になりたい人間は受け入れるよ。」
そう笑顔でエヴァンス達を受け入れた。ブラックはまたモンパカ車に乗るとポポロへ宿屋への道順を教えた。ブラックは後ろを振り向いてエヴァンス達に語った。
「この町の人間は戦争になるとめっちゃ強いですけど、仲間になりたいと言えば凄く友好的なんですよ。」
「結構立派な町じゃないか。どんな町なんだ? 」
「この村は大地を崇めていて、凄く石に詳しい民族なんですよ。その事も有って地の魔法を得意としている者も多いんです。」
そう語るブラックの話しに、エヴァンスとスパイダーは石と言われる物は鉱物を含んでいる事も考えていた。そしてそこへ魔法を加える事でこの世界独特の化学の発展が有ったのではないかと想像した。その根拠に、この町は石造りの建物が多い。そしてよく見ればその石組みにはほとんど隙間の無い加工が為されていて、他の国に見ない技術の存在を確認出来たからであった。
エヴァンス達の到着した宿も石造りであり、受付をするために宿屋の中へ入ると床は大理石で出来ており、番台やテーブルや椅子も全て石で作られていた。その加工技術に興味をそそられながらもエヴァンスは受付を済ませて、モンパカ車を預けて四人で宿泊の準備をした。とりあえず案内された部屋へ案内されると四人一部屋で、他の部屋は空いていなかったのでポポロは渋々相部屋を了解した。




