【74】この世界の魔法
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エヴァンス達は宿屋で朝食を取り、南の大陸へ渡る方法を話し合っていた。クラビィが言うにはスイーク帝国から、カボジカ王国へと戻りその港から出ている船で南の大陸フランティア公国マリシア領へと渡れるとの事であった。そしてスペーディー達は一緒に南の大陸へ行く事に合意した。
ダイヤンは朝食のパンを千切っては食べながらエヴァンスへ話し掛けた。
「しかしスパイダー=ジョナサンは残念だったね。」
「運命なんてのはそうしたものだ。常に今が正解なんだ。残念なんてものは無い。」
「でも仲間にしたかったんだろ? 」
「願望と結果は常に違うんだよ。それでも今が正解なんだ。」
そう話していると、スペーディー達は黙って食事を続けた。そしてエヴァンスがカップに入ったスープを飲んでいると宿屋のドアが開き朝日が溢れ入ってきた。そしてその中に目を赤くしたスパイダー=ジョナサンが立っている。
スパイダーはテキパキと歩いてエヴァンス達のテーブルへ来るとテーブルに手を突いた。エヴァンスはそんなスパイダーに訊ねた。
「一晩目を赤くするほど考えて気が変わったのか? 」
「気が変わる前に一つ質問がしたい。」
「何だそれは? 」
「君が選ばない選択はなんだ? 」
「楽しく無いもんだ。」
「君にとってその楽しみとは? 」
「質問が二つになったぜ。でもいいか、ワクワクする事だよ。」
「私は君をワクワクさせる事が出来るのか? 」
「三つ目は認めない。お前の肌で感じろよ。」
「そうだな。私は二つも約束を破ってしまった。これからは君との約束を守る事にする。」
エヴァンスはスープを飲み干してカップを置くと立ち上り微笑んで表の馬車へと出て行った。スペーディーもそれに続いて立ち上り、手に持ったパンをスパイダーに渡すと外へと出て行った。そしてハートゥはスパイダーの手を握ると一緒に馬車へと向い、エヴァンス達は南の大陸を目指して出発した。
5日間の道程を終えてやっとカボジカ王国へと辿り着くとフランティア公国行きの船を待つ事にした。エヴァンス達はカボジカ王国名物のカボチャのポタージュスープを飲んだり、魚料理を食べたりしていたがその日に船が到着する事は無かった。エヴァンス達はカボジカ王国で一晩泊まる事になり宿屋を探し、港付近に宿を見付けてそこに泊まった。
そこではエヴァンスとスパイダーがこの世界での通信手段や、それに対する改善の設備投資等の話しをしていた。スペーディー達からしてみれば異世界の話しで少しも理解できなかったが、自分達の興味を持った人間二人の話しを真剣に聞き込んでいた。スパイダーはこの世界の学問を見下していたが、実は興味を持つ分野もあった
「ところであなた方に『魔法』を使える人は居ますか? 私は実はこの世界の『魔法』に興味があったのですが問う相手が居なかったので。何せ私はこの世界では変人ですからね。」
「良いんじゃねぇの変人でも。フーリッシュなんて元々紙一重だよ。」
「私たちは魔法を使えますよスパイダーさん。」
スパイダーの問いにハートゥが答え、ハートゥとクラビィが魔導師である事が解った。ハートゥは火の属性を得意とし、クラビィは雷の属性を得意としていた。クラビィが指先からパチパチと電気を放つとスパイダーとエヴァンスは目を輝かせて見入った。そしてハートゥも指先から小さい炎を出して見せ、6人は魔法談義へと花を咲かせた。
ハートゥの説明では、この世界には火、水、雷、風、土、毒、光、闇の8つの属性が有り、その組合わせ次第では特殊な属性を作り出せる事などを説明した。その属性を説明するのには四角を2つ重ねた八芒星を使われていた。それにはエヴァンスもスパイダーも感心して話しを聞き入っていた。




