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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
五章 三変人
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【73】世界を繋げる




 三変人と呼ばれる一人、スパイダー=ジョナサンは髪の短い眼鏡を掛けた髭面の男でタートルネックのニットを着ていた。そしてスパイダーはエヴァンスの両肩を掴み


「君は何でその言葉を知っている? 君もこの世界へ飛ばされて来たのか? 」


と小声でエヴァンスへ訊ねた。エヴァンスは


「ちょっと事情は違うけど、俺も前の世界の記憶が有るんですよ。ゼットフォンの生みの親スパイダー=ジョナサンさん。」


そう言うと、スパイダーは目に涙を浮かべて


「この本当の学問を理解できない世界の人間達の中で君の様な人間に出会えるとは。」


そう言うとエヴァンスに抱き付いた。この世界では訳の解らない事ばかり口走るスパイダーに抱き締められているエヴァンスを見て周りの人々は(コイツも狂人の類いか。)冷ややかな目で見ていた。エヴァンスはスパイダーを自分達のテーブルへと招きビールをご馳走した。スパイダーはよほど嬉しかったのかビールを飲み干すと


「ところで君達はどうして私に会いに来たのか? 」


そう訊ねた。エヴァンスはここは敢えて黙り、スペーディー達が何と答えるのかを待った。すると以外にも口火を切ったのはハートゥだった。


「私たちはアルスガルディア変人偉人伝と言う本を読んで貴方の事を知りました。この本の著者であるゴールドマン=フロイツがとても素晴らしい人間であった為に、この本で紹介された人達に出会えば著者に近付けるかも知れないと思ったからです。」


「そうか。しかし私はそのゴールドマンと言うと男を知らない。私が知っているのはこの世界に存在しない物ばかりだ。」


「それでも良いのです。あなたのお話しが聞きたくて捜したのですから。」


そう答えるとスパイダーは、倩と前に居た世界の話しを始めた。そして原因が解らないがこの世界に飛ばされた事や、この世界で自分に何が出来るのか。それからこのマィティー領の学問が如何にステレオタイプを生み出して、新しい発見に繋がらないのかを話した。スペーディー達は意味は理解できなくとも、このスパイダーと言う男が如何に物事を真剣に考えて、柔軟に理解しているのかは伝わった。


 そう話しを重ねて居るとビールを持ってきたウェイトレスはテーブルへビールを置くと


「このスパイダーは悪い人じゃないけど、そんな事ばかり言ってるから領主に目を付けられて変人扱いされてるのよ。あんたたちも気を付けな頭がおかしくなるよ。この領地じゃ頭の良さだけが存在証明なんだから。」


「私は決して頭はおかしくない! おかしいのはこの世界だ! 」


そう怒鳴り返したのでウェイトレスは慌てて厨房へと引っ込んで行った。エヴァンスは笑いながら


「スパイダーさん。俺の仲間になれよ。俺にはあんたの知識が必要なんだ。」


「嫌だね。私の知識にこの世界の技術は付いてこれないよ。」


「エンジニアのあんたがいつからそんな情けない事を言うようになったんだ? 夢を与えるチャンスだろ。」


スパイダーはエヴァンスのその言葉に返答出来ずに居た。そしてエヴァンスは最後に


「この世界にも通信に使える道具が有りそうなんだ。また世界を繋げてくれよ。俺達は近くに宿を取るから気が変わったら来てくれ。俺は世界一の商人になるウォーレン=エヴァンスだ。」


そう言うと立ち上り、銀貨をテーブルに二枚置いて食堂『テキトウ』を後にした。後ろから付いてくるスペーディーへエヴァンスは


「次に行く準備をしよう。残りの三変人の情報をくれないか? 」


そう訊ねるとスペーディーは


「後の二人は自称全てを治療出来る『オーヴ=カーター』と古代を語る穴堀り魔『サクジュ=ヨシノ』だよ。しかし二人はこの大陸には居ないからなぁ。」


「一度、南の大陸に戻れば問題ない。お前らも行こうぜ。面白いもん見せてやるからよ。」


そう言うとエヴァンス達はバルビの宿屋へと泊まる事にした。



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