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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
五章 三変人
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【72】スイーク帝国マィティー領




 エヴァンスはキングメロリアを1つ手に取り、スペーディー達へ市場の前で待つように指示を出して市場の中へと出掛けた。そして数時間経つとスペーディー達の下へと笑顔で戻り馬車でそのまま移動して大きな屋敷を中心に、あちらこちらで行商を行った。そして言葉巧みにエヴァンスは数時間でキングメロリアを全て売ってしまい金貨を数十枚手に入れた。


 そしてその日はバルビの宿屋で1泊すると、エヴァンス達は食料と水を買い込みマィティー領を目指した。



▽▲▽▲



 それから4日間移動してマィティー領までの道程は険しくもエヴァンス達は無事にマィティー領へと到着した。マィティーの町は学問の都と呼ばれ、王立の学問所が無数に有りそこで成績が日夜競われていた。


 エヴァンス達はとりあえずマィティー城へと向い、町の中をのんびりと見物していた。通りを行き交う人々は皆、何らかの本を持って読みながら歩いている。エヴァンスはそれを見て


「何か勤勉な町だな。何か変だけどよ。」


そう呟くと、スペーディーも


「歩きながら本を読んで危険じゃないんですかね。」


そんな事を呟いていた。そしてマィティー城へと辿り着くと、そこには横に長い看板が立てられており何やら数字と名前が書かれていた。エヴァンスはそれを見て前世での成績表を思い出し


「これって成績の順位と名前だ。国の中で成績を付けられてやがる。窮屈な国だな。」


そう言うと、スペーディー達も勉強は好きでは無いらしく嫌な顔をしていた。エヴァンス達は気を取り直して美味しい物でも食べようと城の近くに在る小綺麗な飲食店へと入ろうとすると、店員から止められ


「お客様、こちらは学問成績Bクラス以上の方の店ですので成績表の提示をお願い致します。」


「俺達は旅の途中でこの町に寄っただけだから成績表なんて物は持っていないよ。」


「それでしたら、この町の入り口付近に在りますEクラスのお店をご利用ください。このマィティー領は何よりも学問と成績を重んじますので、もし当店をご利用になりたいので御座いましたら毎日行われております学問試験をお受けになってください。」


そう言っていきなり店のドアを閉められた。その感じの悪い態度にエヴァンスは悪態を吐きながら、マィティー領入り口のEクラス区画へと向かって行った。


 Eクラス区画は上位クラスとは違い見窄らしい建物が多く、貧相な人々が通りをうつむいて歩いていた。その陰気な空気の中を通り抜けて看板の取れなかったボロい店へと辿り着いた。店の名前は『テキトウ』と言う名前で嫌な予感はしたが腹が減っている為に文句を言わずに入る事にした。


 店の中も外観と変わらずボロボロで、その中では昼間にも拘わらずに酔っ払い達が酒を飲んで管を巻いていた。それをクラビィとハートゥは怪訝な顔付きで見ていたが男達は然程気にせずにテーブル席へと着いた。そしてエヴァンスはビールと芋とハムの料理を頼み、他の者達も各々注文をした。


 見た目はあまり良くは無かったが、味はそこそこでエヴァンス達は特に文句も言わずに料理を食べて周りを見ていると壁に向かって一人でブツブツ話している男が居た。そしてその男にウェイトレスの女が


「ねえスパイダー。いい加減にたしてよ。昔は学問試験で1番になったかも知れないけど今じゃ目も当てられないわよ。」


その言葉がエヴァンス達の耳に入り、エヴァンス達は一斉に席から立ち上がった。なんと目的の三変人の一人スパイダー=ジョナサンにさっそく出会う事が出来たのであった。エヴァンスは逸るスペーディー達を抑制して、一人でスパイダー=ジョナサンの近くへと行き話し掛けたが反応は無かった。


 エヴァンスはそんなスパイダーの耳元でソッと耳打ちをした。するとスパイダーはメガネの奥の目を見開いてエヴァンスの顔を凝視した。






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