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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
四章 五酒豊祭
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【69】忘れていたライバル




▽▲▽▲



 口の中に入った水を吐き出してエヴァンスが目を覚ますと、そこには見知らぬ土地があった。


(全身が痛え。ここは何処だ? 俺は助かったのか? )


そんな事を考えて居ると目の前に同じ歳ぐらいの男女が顔を覗き込んで


「やったー! 目を覚ましたぞ! 」


「空から全裸で落ちてくるなんて三変人の一人かも知れないぜ! 」


「この金髪だったら、もしかしてスパイダー=ジョナサンかしら? 」


「スパイダーなら歳が違うわよ。変人かも知れないけど、この人綺麗な顔をしているわね。」


そんな声が耳に入り、エヴァンスは身体を起こして。


「悪いがスパイダーなんとかじゃねぇんだ。俺はウォーレン=エヴァンスって者だが此処はどこだ? あんた達が助けてくれたのか? 」


そう言うと、四人の若者達は驚きに声を止めた。真ん中の赤い癖っ毛にソバカスのある青年は目を輝かせ口を開き、その右側に居る若草色の髪の乙女は口を押さえて涙を流し、その両脇に居る男女も涙を流してお互い抱き合っていた。


 エヴァンスはそんな四人の反応を不思議に思いながら立ち上り背伸びをして


「助けてくれたんならありがとうな。いつかお礼をするぜ。」


そう青年達に言うと、赤い癖っ毛の青年が声を震わせながら


「貴方がウォーレン=エヴァンスさんなら僕達はお礼は受け取れません。貴方に命を救われた者達ですから。この『アルスガルディア偉人変人伝』の著者ゴールドマン=フロイツと『七輪』を開発したエヴァンスさんに。」


そう言い、若草色の髪の乙女は


「数年前に私たちの住んでいたエッゾ村は物凄い寒波に襲われて薪も無く村人の三分の一が亡くなっている様な時に移動式のコンロを大量に運んできたフロイツさんのお陰で私たちは命を救われたのです。」


そしてその隣の水色の髪の逞しい青年は


「その後にフロイツさんの残した『アルスガルディア変人偉人伝』を読んでそのコンロが『七輪』と言う物でそれを開発したのが俺達と変わらない子供だったって知って励まされたんです。」


そんな彼等の言葉を聞いてエヴァンスは居ても立ってもいられずに、赤い髪の青年からアルスガルディア変人偉人伝を取り上げて目を通した。そこには確かに自分の事が書かれていた。そして最後に


『彼は今、挫折と絶望の中に居るが必ずや復活して世界に名を轟かせるであろう。何故なら彼は私のライバルなのだから。』


そう書かれていた。エヴァンスは子供の時のフロイツとの想い出を頭に過らせ、溢れそうな涙を飲み込むと、その本を赤い髪の青年へと渡して座り込んだ。すると赤い髪の青年はエヴァンスの隣に座り水色の髪の逞しい青年へ


「おいダイヤン、エヴァンスさんへ服を持ってきてあげなよ。エヴァンスさん僕の名前はスペーディーって言います。僕達はずっとエヴァンスさんやこの本に書かれている人物達に会いたくて旅をしていたんです。是非あなたの話しを聞かせてください。」


そう話し掛けてきた。エヴァンスはフロイツの本音を知れた事や命を助けられた事も相まって、優しい表情を見せて


「良いぜ。なんでも聞いてくれ。その変わりにそのフロイツって人の事を聞かせてくれよ。」


そう言うとスペーディーは立ち上り、エヴァンスを自分達のテントへと案内してくれた。そして彼等は焚き火を起こして食事の準備を始めて、その間にエヴァンスはダイヤンに渡された服を着て焚き火で暖を取った。黒髪のショートカットに日焼けした肌のクラビィと言う女性がエヴァンスへスープの入ったカップを渡して、四人はエヴァンスの下へ集まった。そして若草色の髪の乙女は名前をハートゥと名乗りエヴァンスへチーズとパンを渡した。するとスペーディーが手を合わせて祈りを捧げると彼等の夕食の時間が始まり、エヴァンスもそれの真似をして食事を始めた。



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