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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
四章 五酒豊祭
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【64】開会式




 皆が宿屋を出てワルキュリアもリシュタインの元へと出掛けていった。しかし一人だけ宿に残り下を向いて酒を飲んでいる者が居た。陰気な召喚師ブラック=パピヨンである。エヴァンスはそれを見て


「おい! ブラック。お前は俺の付き添いだ。付いてこい。」


そう言ってブラックを宿屋の外へと連れ出した。町は露店が建ち並び様々な料理店が有り、エヴァンスはソーセージを串に刺して焼いた物を二本買うと一本をブラックに渡して食べながら歩いた。ポンドゥロア公国中の人間が集まり人の海となっており、ブラックはそれに対して


「おいら人の多いのダメなんだよね。」


「知るか。それよりも酒の所まで行くぞ。」


エヴァンスは気にせずそう返して歩いた。エヴァンスは次にあまり人の居ない露店を見付けるとそこへ行き、商品を見て露店商に話し掛けた。


「兄さん。これは何を売っているんだい?」


「あっ、あ、これは焼いた肉をパンに挟んだ物を売っています。」


「じゃあ二つくれ。」


「は、はい。」


そう言うと露店商は肉を焼き始めて、肉を焼く匂いが広がって行った。エヴァンスはそれを確認すると大きな声で露店商に話し掛けた。


「兄さん。これは何の肉だい? 」


「こ、これはウォルスカ牛の肉でして。け、今朝捌いて来たものです。」


「そうか! これが旨味の多くて有名な新鮮なウォルスカ牛か! それはさぞかし旨かろう! 所でそれにどんな味付けをするんだ? 」


「じ、自家製のた、タレで。刻んだ野菜を魚醤で煮詰めて作ったタレを使います。」


「へぇー! 自家製の特性ダレで肉を味付けてパンで挟んでるのか! そいつは旨そうだ! 」


そう大きな声で話すので、通りを歩いている人々はその大きな声に反応してエヴァンス達の方を見ている。エヴァンスはそれを確認すると、商品を受け取り食べ始め


「こいつは旨いや。ありがとうな。」


そうまたも大きな声で言うと、肉の匂いとエヴァンスの言葉に人々が興味を持ちその露店へと集まり始めた。エヴァンスはそのパンに肉を挟んだ物をブラックに渡すと


「商売に大切なのは元気だ。元気は人を惹き付ける。」


そう笑ってジントリアの町の広場へと歩いた。ブラックはそんなエヴァンスを不思議に思い訊ねた。


「エヴァンスさん。何であの露店商を助けたのです? 」


「助けたんじゃねえよ。あの店に並んでいる物を売ってみたくなっただけだ。」


「売るって、売ってるのはあの露店商じゃないですか? 」


「違う。あの商品が売れたのは俺の宣伝で売れたんだ。だから売ったのは俺だ。」


「し、しかしエヴァンスさんはお金を貰って無い訳で。」


「俺の宣伝であの商品が無くなったら、売ったのは俺だよ。」


そうエヴァンスは実にたのしそうに笑った。ブラックはそんな豪気なエヴァンスに興味を持ち

、尊敬の念すら持ち始めた。そして二人はパンに肉を挟んだ物を食べ終わる頃に広場へと着くと広場には大きなステージが設置されて、その上にはポンドゥロア公国の5人の公爵が並んでいた。


 そして5人の公爵の前に5つの酒樽が並べられている。左からビアダル公の前にエールリル領のビール、ミスティー公の前にジントリア領のジン、ロブロイ公の前にウィスキネ領のウィスキー、アレキサンダー公の前にブランドール領のブランデー、リシュタイン公の前にも樽が並べられていた。


 その前にブルームーン=ジントリア、ポンドゥロア王が現れるとビアダルから順にグラスに酒を注ぎブルームーンへと渡し、それをブルームーンはひと口で飲み干して行った。そして最後にリシュタインが酒を注ぎブルームーンの前に立ち


「この度は新しくリーベル領公爵として、新しい酒を用意させて頂きました。急造の酒では御座いますがご賞味ください。」


それをブルームーンは受け取り飲み干すと新しい公爵リシュタインの顔をジッと見た。




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