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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
四章 五酒豊祭
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【63】お祭りの前




 ジントリア城には公爵達が集まり『五酒豊祭』の準備を指示していた。エヴァンスが大広間の扉を開けて


「よーい! ポンドゥロア公国を支える公爵方よ今日も元気に...... のわっ。」


そう言って大広間へ入ろうとしたら、足下の書類に足を取られておもいっきりコケた。それを見た大広間に居る人々はおもいっきり笑い。


「前の大戦の陰の功労者エヴァンス殿が転ぶと運気が舞い込む気がしますね。」


そう言ってブランドール領公爵アレキサンダーがエヴァンスを引き起こした。エヴァンスは


「みっともねぇ姿見せたな。」


そう言って笑うと、リシュタインも駆け寄りエヴァンスへ挨拶をして他の公爵達も集まって来た。エールリル領ビアダル公爵はそんなエヴァンスの肩を叩いて


「今夜から開催の五酒豊祭ではポンドゥロア公国の酒をたらふく飲めるからな。楽しみにしていろよ。エヴァンス。」


「おう。ビアダル公、楽しみにしてたし、うちの従業員達も楽しみにしてんだ。美味しい酒を頼むぜ。」


そう言うビアダルの腹をエヴァンスはポンと叩いた。すると奥からブルームーン=ジントリア王が現れ、それにライムとサファイアが駆け寄り


「ブルームーンお祖父様、ライムとサファイアは元気です。」


そう言って抱き付いた。ブルームーンは満面の笑みで二人を抱き締め


「そうかそうか。それは何より嬉しい事だ。」


そう言って離すと二人の頭を撫でた。エヴァンスはブルームーンと公爵達と挨拶を交わすと、宿へと戻る事にした。今夜からの五酒豊祭へ向けて町の中は様々な露店が建ち並び賑わいを見せていた。ポポロとワルキュリア、ライムとサファイアは祭りの雰囲気に目を輝かせて楽しそうにはしゃいでいる。しかし何やら雲行きはよろしく無く陰りを見せていた。


 そんな一行の前に何やら不穏な女が立っている。その女は肩程の黒髪で左目に眼帯を当て、可愛らしい顔立ちであるが何か影を帯びた笑顔を見せていた。その女は黒いコートをなびかせながらエヴァンスに近付くと


「初めましてエヴァンスさんですね。私は北の大陸から来た商人マリアン=ロジャースと言うの。よろしくね。」


そう言って立ち去っていった。ワルキュリアはマリアンを見てエヴァンスへ


「あの女、物凄く血の臭いがします。気を付けてください。」


「そうなの? まあ変な奴だよね。」


そう言ったがエヴァンスはあまり気にしていなかった。それから何事もなく宿屋へ戻るとロビーにモンパカ交易社の従業員とその家族は集まって食事をしていた。エヴァンスは面々を見ながら一人一人の前に行き金貨を1枚ずつ置いて行き


「これは俺からお前達への今回のポンドゥロア公国五酒豊祭でのお小遣いだ。好きに使ってくれ。基本的に自由行動だが、ちゃんと夜は宿屋へ帰ってきたらローバインに報告してくれ。」


そう言うと従業員達は喜びエヴァンスに対して感謝の言葉を連ねたが、エヴァンスは


「楽しもうぜ。」


と言って自室へと戻って行った。


 そして夜になると花火が上がり、宿の外からはザワザワと人々の声が聞こえ、笛や太鼓の音が鳴り響き祭りの空気が溢れだした。ライムとサファイアは二人で窓の外を眺めてソワソワしている。ローバインやイノーグの子供達もそれに続いて窓の外を眺めて喜んでいる。エヴァンスはそんな子供達に


「お前等は、絶対にお父さんお母さんから離れたらダメだぞ。」


そう言うと子供達は


「はい。」


と元気よく返事をした。ライムとサファイアは二人で顔を見合わせるとトコトコ走り、ポポロの両腕にしがみついた。ポポロはそんな二人に迷惑そうな顔もせずに


「そ、それじゃあお姉さんがあんた達のお世話をしようかしらね。部下だししょうがないよね。」


と満更でもなさそうにそう言って宿を出て行った。すると皆が宿屋から、夜でも明るく火が灯された町へと出掛けた。


 


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