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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
三章、モンパカ交易社拡充
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【59】金に感謝




 エヴァンスはブラックと名乗る召喚師を平たい岩の上に座らせ、担いで来た皮袋からバスケットケースと瓶と木皿を取り出して


「ちょうど昼だお前等も飯を食え。」


とバスケットケースを開いて大量のサンドイッチを見せた。するとブラックはサンドイッチを3個急いで取り、慌てて頬張ると喉に詰まらせもがいていた。エヴァンスは木皿へ瓶からスープを注ぐと慌ててブラックはスープを奪い、詰まったサンドイッチを流し込んだ。そんなブラックに呆気に取られている3人にもエヴァンスはスープを配り


「お前等も食わないとコイツに全部取られるぞ。」


そう笑うとブラックを含めた皆でサンドイッチを取り合い、スープも飲み干し、10人前は有ったサンドイッチをアッと言う間に全て平らげてしまった。エヴァンスは1つだけサンドイッチを食べてブラックへ話し掛けたが満腹になりスヤスヤと寝ていた。イノーグ、ネズト、ウシルの3人は食べ終わると直ぐに働こうとしたが、エヴァンスはそれを止めて


「俺が伝え損ねたんだけど、出来ればお前達も交代で休みの日を作る様にしてくれ。もう少ししたら人間も増えるからその時は1週間に2日休みを取れる様にしてくれ。えーっとじゃあそれをイノーグが決めてくれ。」


「だったら俺達は家族が居るから、家族の病気や怪我なんかを優先で取らせていいか? 」


「ああ、それでいい。その言葉でお前に任せて良かったと思うよ。とりあえずこの不審者は俺が預かるからお前達は仕事に戻って良いぞ。」


「助かるよエヴァンスさん。そんな陰気臭いのが居たんじゃ気が滅入るからな。」


そう言って3人は作業へと向かっていった。エヴァンスは3人を見送り、この陰気臭いブラックと言う男を見ていた。小一時間経つとブラックは目を覚まして起き上がりまた横になった。エヴァンスはそんなブラックに


「おい。モラトリアムな召喚師よい。」


「モラトリアムとはなんですか? おいらは最早満たされた心を持って消滅を待つ身、言葉を知ることも虚栄に等しい。」


「うるせえよ。そのネガティブな思考を止めろ。」


「何れその思考も身の消滅と共に風に散る雲の様に失せましょうよ。」


エヴァンスはそんな事を言うブラックの頭を叩いて、腕組みをし


「お前の悩みなんてどうせ金が無いとかそんな事だろう。雇ってやるからうちで働け。召喚師がどんなもんか知らないから教えろよ。」


その言葉にブラックは泣きながら


「おお、こんな愚鈍で怠惰なおいらを神は未だに見捨てないと言うのか。なんと崇高でありながら慈悲深くその姿は...... 」


「黙れ召喚師。お前を救うのは神じゃねえ。俺と金だ。その事を胸に刻んで金に感謝しな。」


「...... 。」


ブラックは生まれて初めて信仰を『金』に持てと言われて、その考えた事もない言葉に反論出来ずに居た。乱暴な思想で有りながら感謝を忘れない発想は衝撃を与えたのだ。ブラックは沸き起こった感情に、訳も判らず立ち上りエヴァンスへ頭を下げた。エヴァンスはそんなブラックを見て


「おいブラック。お前、空を飛ぶ召喚獣とか呼べんの? 」


「短い時間なら呼べますが。」


「じゃあちょっと色々召喚して見せてくれ。1日どのくらい召喚出来るのかも知りたい。」


「解りました。」


そう言うとブラックは杖を掲げ魔力で陣を起こして、シルバードラゴンを召喚した。シルバードラゴンは艶やかな銀色で巨大な体を揺らして翼を広げた。初めて見るシルバードラゴンに驚くエヴァンスを見てブラックは得意になり、シルバードラゴンを引っ込めると次にゴーレムやワーウルフ等を召喚して見せた。エヴァンスはそれを喜び


「OK、OK。これから宜しく頼むよ。とりあえず今日から宿と飯は手配するから。」


そう言って、牧場で作業をする3人へ夕方にはガルボの宿屋へ来る様に言うとブラックの下へと戻って来た。




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