【55】風の民との生活
◼️◻️◼️◻️
ベイル高原、風の民のリアンとココロの所でお世話になる事になったライムとサファイアの姉妹はモンパカの世話を手伝いながら過ごしていた。10歳程の二人が一生懸命に手伝う姿を見てリアンとココロは微笑んでいた。そしてココロはライムとサファイアの二人に
「よく頑張ったわね。それじゃお昼にしましょうか。ライムちゃんとサファイアちゃんは手を洗って来てね。」
そう言ってコテージの前のオープンテラスで食事の準備を始めた。リアンは二人をテーブルへ案内するとモンパカミルクを木のコップへ注いで手渡し
「見たところ君達はライムちゃんは火の神の祝福を、サファイアちゃんは風の神の祝福を得ているみたいだね。」
「祝福...... ? 」
「ほう。二人は祝福を知らないのか。『寵愛者』だね。」
「ネザー...... ? 」
「そう。儀式を行わずに神の祝福を得ている、生まれながらの者を我々は『寵愛者』と言うんだ。ネザーはその為に生まれながらに強い魔力を持つのだよ。だから感謝の気持ちを忘れない様にね。」
そう言ってリアンは両手を合わせて目を閉じた。それを見てライムとサファイアも手を合わせて目を閉じて各々の神をモヤモヤとした想像で描いて感謝した。そうしているとココロが皆の下へ料理を運んでテーブルへと並べ始めた。風の民は芋とモンパカの乳を主食としており、
芋の粉で作ったパンとモンパカのチーズが並べられた。
そして四人は談笑を交えながら食事を終えると少し休憩して、リアンとココロは畑仕事をライムとサファイアはモンパカの世話を始めた。サファイアはモンパカをライムの下へ運び、ライムがモンパカにブラシを当ててモコモコとした毛並みを整えてあげた。時折じゃれつくモンパカに二人は笑いながら作業を続けた。
この風の民はリアンとココロ以外にも8家族有りコテージは全部で9つ在り各々の家族が農地と採れた野菜とモンパカを共有しており1つの町を模していた。そして陽が暮れるとリアンは2匹の犬を放ちモンパカ達を柵の中へと移動させ、四人はコテージへと戻った。
農具を片付けるリアンの鼻をベイル高原を走る風が掠めた、嗅いだことの無い風の香りに違和感を感じて地平線に沈む太陽を眺めた。
陽は落ちて四人は風の民のコテージが集う広場の中央で食事を始めることにした。リアンはエヴァンスから貰ったブランデーを取り出して、ココロは干し肉や芋の調理を行った。ライムとサファイアはテーブル席で待っていると、他の家族の子供達もテーブル席へと集まり歳の近いライムとサファイアに興味を持っていた。
その内に他の家族も料理や酒を持って集まり、広場の中央には焚き火を灯した。そこで長机の上に各家族の料理を並べ始め、その中で若い娘と男が子供達の世話を始めた。
若い娘と男は二人ずつ居り、ライムとサファイアの世話もしながら食事の準備も手伝った。そしてそこへ風の民の老人が近寄り
「客人。この風の民は人として家族として町として生きておる。我々が居る所が世界でありそこに風の神が居られる。風に身を任せ風の神の御加護を。」
そうライムとサファイアへ言うと長机を四角く並べた席の焚き火の近くへ座ると目を閉じて祈りを捧げた。すると皆が席へ座り祈りを捧げ、それを見た子供達も真似をして、ライムとサファイアも真似をした。そして目を開けるとリアンが老人の木のコップへエヴァンスから貰ったブランデーを注ぎ、各々が木の器に料理を取り食べ始めた。ライムとサファイアも顔を見合わせると料理を並べた長机から料理を木の器へ取り席へと戻り、そして風の民達は食事を取り始め、ライムとサファイアも芋と干し肉を炒めた物を食べ始めた。
そして食事が進むと若い娘と男が歌を歌い始めて手拍子を打ち始めて食事は賑わいを見せた。




