【53】風の民リアンとココロ
エヴァンスとポポロの傍へ来た遊牧民夫婦はよく見ると猫の様な耳が有り、猫の獣人であった。そしてポポロに近付くと夫婦で
「風の神の祝福を。」
そう言ってポポロと人差指を合わせていた。どうやらこれが挨拶だと思い、エヴァンスも人差指出してみたが誰も相手にしてくれなかった。それを見かねたポポロは
「エヴァンス。これは風の魔力を持った者にしかやらない挨拶よ。あんたは普通の挨拶でいいのよ。」
そう言った。エヴァンスは少し恥ずかしそうに
「こんにちは。」
と言うと、夫婦はエヴァンスへ
「こんにちは。どうもポポロさんのご友人の方ですね。私達はベイルの風の民、リアンと申します。そして妻のココロです。」
そう夫のリアンの方が挨拶をすると隣で妻のココロも優しく微笑みお辞儀をした。それにエヴァンスも
「俺はモンパカ交易社社長のウォーレン=エヴァンスと言います。ポポロの案内でこちらをご紹介して頂きました。」
そう挨拶をすると、夫婦は
「それではうちの飼育するモンパカ達を見て頂きましょう。」
そう言ってエヴァンス達を放牧しているモンパカ達の所へと案内した。リアンは2匹のハスキーに似た犬を連れて高原の草を分けて歩き数分でモンパカ達がのんびりと日向ぼっこをしている所へと辿り着いた。リアンはそこで2匹の犬を放ちモンパカ達を集め始めた。リアンは特に指示を出す事もなく、犬も吠えることなく睨みだけでモンパカを誘導して数分で高原にバラけていたモンパカ達は集められ高原はモコモコなっていた。
エヴァンスはモンパカの集まるモコモコ加減に興奮してモンパカの群れに飛び込んで
「うひゃー。モコモコ天国だー。」
と喜びモンパカ達に頬ずりして回ると、モンパカ達に舐め回されてベチョベチョになり戻ってきた。これには皆少し引きながら苦笑いをしていたが、ポポロは
「エヴァンス。あんたがモンパカちゃんを好きなのは解るけど、今日はこの二人にモンパカちゃんを飼うんでしょ。あんたがはしゃいでどうすんのよ。」
そう叱ると、エヴァンスは申し訳なさそうに
「すまない。ちょっとテンション上がって...... 。おい、ライムとサファイア。お前達の初仕事だ。このモンパカちゃんの中から6頭好きなモンパカちゃんを選べ。」
謝った後に指示を出した。しかし隣でポポロがエヴァンスの腰を殴り
「あんたそんな直ぐにモンパカちゃんの相性は判らないのよ。」
そう叱ると、ココロの方が気の毒そうにエヴァンスへ言った。
「そうですね。モンパカと風の魔力の相性も有るので、数日モンパカと暮らしてみないと判らないと思いますわ。」
「ならライムとサファイアはここへ泊まりなさい。モンパカと暮らして相性の良いモンパカと、モンパカのお世話のやり方を学んで来なさい。奥さん、これ二人の世話賃として受け取ってくれ。」
エヴァンスはそう言ってココロへ金貨を1枚渡そうとすると、リアンがそれを止めて
「私共風の民はお金に触れない事を守って暮らしております。こちらの二人のお世話はさせて頂きますが、こちらのお金は退いてください。」
そうエヴァンスを諭した。エヴァンスはライムとサファイアの顔を見て、リアンとココロ夫婦の顔を見て頷いて金貨を仕舞った。そして一行は居住区域へと戻った。エヴァンスはコテージ付近へ戻るとモンパカ車へと戻り荷台から大きな布の袋を取り出した。そしてそれをリアンへと渡し
「こっちは二人もお世話になるんだから、何もしないってのは気持ち悪いんだ。お金はダメでも物なら良いだろ。」
そう言って笑った。するとリアンは微笑み頷き袋を受け取った。エヴァンスは
「それはポンドゥロアって国のブランデーとウィスキーって酒と、魚と肉を干した物だ。美味しいから食べてくれよ。」
そう言うとライムとサファイアの頭を撫でて
「とりあえず三日後にまた来るから。」
そう笑って、ポポロと二人でベイル高原を後にした。




