【44】号令
エヴァンス達は一端ウォルスカ城を見据える丘へと停泊した。そして戦艦の上でエールリル軍はロブロイとアレキサンダーを待つ事にした。戦闘も無くジントリアを奪還したロブロイとアレキサンダー率いるポンドゥロア連合はエヴァンス達の到着後一時間で、同じくウォルスカ城を見渡せる丘へとと到着した。
決戦を前に緊張した面持ちのロブロイとアレキサンダーで有ったが、エヴァンス達の戦艦が丘に待機しているのを見ると緊張を余所に驚きを隠せなかった。
「おい! エヴァンスてめぇ何だよこれ? 」
「ロブロイ公、この状況から言って空を飛ばしたのかも...... 。だとしたら今後の戦術、戦況は大きく変わって来ますね。」
「おーい! やっと着いたか? ロブロイ、アレキサンダー! 良いだろコレ? 」
ロブロイとアレキサンダーの言葉に、エヴァンスは戦艦の上から大声で叫んだ。そしてポポロへエヴァンスは
「ポポロ。俺とビアダル、ワルキュリアとリシュタインを降ろしてくれ。」
そう言ってモンパカ車へ乗り込み、戦艦の下のロブロイとアレキサンダーの下へ行くと直ぐに荷台から飛び降りた。そしてビアダルはロブロイ、アレキサンダーと挨拶を交わして今後の戦闘に付いて話し合った。
「ロブロイ公、アレキサンダー公、この道中もウォルスカの攻撃は有りませんでしたか? 」
「ああ、静かなもんだったぜ。」
「罠にしても静かすぎる印象でしたね。」
そんな三人の会話の横でエヴァンスは、ウォルスカ城を見ながら
「なあ、公爵様方々、さっきからウォルスカ城を見てんだけどさ。時折白の前で鳥が落ちてんだけど、アレって何かな? 」
「鳥が落ちる。それでしたら魔法障壁を張っているかも知れませんね。」
「だったら戦術も変えていかねぇとな。折角ならこの馬鹿げた空飛ぶ戦艦も使いてえし。」
エヴァンスの質問にアレキサンダーとロブロイが答えると、ビアダルが
「魔法障壁ならば、近接戦の物理攻撃で術者と障壁を取り除く一手を省く訳には参りますまい。」
そう言うと、少しロブロイは考え
「戦艦には海戦に長けたアレキサンダー公が乗りな。俺とビアダル公でウォルスカ城の魔法障壁を解除するから。」
「海戦術で言うならロブロイ公の腕前もあるではありませんか。」
「俺の優れているのはあくまで操舵術だ。エヴァンスんとこの魔導師が動かすんだから、戦術に長けたお前が良いんだよ。本音を言えばちょっと乗ってみてえがな。」
「そう仰るのであればこのアレキサンダー。粉骨砕身で戦わせて頂きます。」
「砕けたりとかは嫌よ。ワタシまで巻き込まないでよね。」
ロブロイとアレキサンダーの話しにポポロが突っこみを入れて一同は笑い、決戦前の固くなった心と身体はほぐれ最終決戦へ向けての闘志だけが盛り上った。そしてロブロイはビアダルへ
「それでいいかいビアダル公? その代わりこの連合軍の号令は年長者のあんたに譲るからよ。」
「何だかロブロイ公、お前も変わったな。今のお前ならこのポンドゥロア公国の王も似合うかもな。」
「やめろよビアダル公、俺はあんたが一番似合うと思うぜ。」
「お前の気持ちも解るよ。エヴァンスを見ていたら『王』なんて物がちっぽけに思えて来る。」
「解るかい? 今回の大戦で一番動き回ったのはアイツだよ。国も地位も関係無くよ。何ならアイツに『王』もくれてやるかい? 」
「あんな裸になりたがる奴が王になったら国民が不安だろ。」
「違いねえ。それじゃあ行くかい? ビアダル公」
「行くかね。ロブロイ公」
そう話して二人は笑って、手を合わせて鳴らすとビアダルは剣を抜き空に構えて目を細めると
「我等ポンドゥロア公国への謀叛を企てたスクリュー=ウォルスカへ、熱く尊き魂を持つポンドゥロア公国の戦士達よ...... 」
そう文言を称え、剣をウォルスカ城へと指し示し
「その魂をウォルスカへ刻み付けようぞ!!! 」
そう叫ぶとポンドゥロア連合軍は内に滾った闘志を弾け出しながら咆哮を挙げた。




