【41】自由と不自由
ブルーと名乗る大柄の老人は上着を脱いで上半身裸になると、身体に力を入れ筋肉を隆起させオーラを帯びた。そして紅く目を光らせると
「300と行った所か。」
『神々に愛された拳撃!!! 』
その掛け声と共にブルーは巨大なオーラを纏った拳撃を無数に放った。拳撃一つ一つが空気を切り裂く激しい音を立てながらゾンビ兵や魔物達を次々と粉砕して行き、数秒後には全ての敵を消し去った。ブルーは鼻をフンッと鳴らして自慢気に振り返ると、エヴァンスはそれを見もせずにブルー連れた四人の若い女性達と笑いながら酒を飲んでいた。ブルーは急いでエヴァンスの下に駆け寄り
「お前さあ、エヴァンスってさあ。それ自由って言うよりワガママじゃない? 普通は自分が追われてたんだから気になるだろ? 」
「ああ、ごめんごめん。ブルーのオーラ見たら、これは大丈夫だなーって思って飲んでた。」
そう言いながら笑うと、ブルーも酒を飲み始めてグチグチとエヴァンスを責めたが、エヴァンスは大して反省もせずに笑って謝っていた。そして飲み続けるとエヴァンスが追われていた理由の話題になり、エヴァンスはブルー達へポンドゥロア公国の王位選挙からの話しから説明した。ブルーはそれを笑いながら聞くと
「不自由な奴等ばかりじゃ。」
「そうだよ。もっと皆自由になれば良いのに。」
エヴァンスと二人でそう言い合いながら笑って酒を酌み交わして、気付けば朝を迎えていた。エヴァンスは朝になると立ち上がって背伸びをして、ブルーと握手を交わした。
「爺さんの自由は大したもんだ。だけど世界一自由なのは俺だからな。」
「ガーッハッハ。よく言うわ。命辛々逃げ回っといた癖に。」
「うるせーな。俺は自由だが喧嘩は弱いんだよ。」
「そうか、情けない男だ。しかしエヴァンスよ儂の大好きなポンドゥロア公国を愛してくれてありがとうな。」
「ああ。ポンドゥロアは酒は旨いし良い国だよ。」
そう言ってエヴァンスは手を振り要塞へと戻って行った。それを見送ると四人の若い女達は皆でブルーの腕にしがみつき
「ねぇーブルー。エヴァンス私達の服を着て帰っちゃったから、新しいお洋服買ってよね。」
「おお、良いぞー。買ってやるとも。」
そう言ってブルー達はテントへと笑いながら入って行った。
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要塞へと戻ったエヴァンスは兵士達やワルキュリアやポポロに爆笑された。
「何で女物の服を着てんだよ。」
「姿が見えないと思ったら、何て格好してんのよ。」
「うるせーな。服が無かったから川の所で女達に貰ったんだよ。」
そう言ってエヴァンスは服を全部脱いでポポロに投げ付けて、自分の服へと着替えだした。リシュタインは溜め息を吐きながら
「こんな人前で着替えるなんて、エヴァンス殿には羞恥心と言うものが有りませんね。」
そう言うと、隣でポポロは
「だから恥ずかしがらずにお金に飛び付けるのよ、エヴァンスは。さあ今日も物資の買い付けに行くんでしょ。早く準備してよ。」
「もう何時でも行けるから良いぞ。じゃあワルキュリアはエールリル城へ送るからビアダルとポンドゥロア連合のジントリア奪還の応援に行ってくれ。」
そう言うと、ポポロのモンパカ車へと向かった。ポポロは
「ほんとエヴァンスはマイペースなんだから。」
と呆れながら、ワルキュリアと共にエヴァンスの後を追ってモンパカ車へと向かった。そして出発するとエールリル城でワルキュリアを降ろし、エヴァンスとポポロは二人でドルトリア王国で物資の調達を行なった。そしてモンパカ交易社の金庫屋へと顔を出し、ローバインへ色々な商品の調達を頼むとポンドゥロア公国へと向かい飛び立った。
エヴァンス達はポンドゥロア公国の領空に入ると、ジントリア領での戦況確認と物資の納品に出向いた。




