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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
二章 -2ポンドゥロア大戦
34/109

【29】ウィスキネ領の戦い




「皆さん、少し下がってください。」


そう言って前に出たのはワルキュリアであった。エヴァンスはワルキュリアに言った。


「いや、ワルキュリアが幾ら強くたって剣じゃこの距離は無理だろ。」


「いえ大丈夫ですよ。海ごと斬ります。」


ワルキュリアは剣を鞘から抜くと笑顔で応えた。ワルキュリアは美しく鏡の様に耀く刀身を太陽にかざすと、呼吸を調え、腰を落として荷台から高く飛び上がり上段の構えから大きく目にも見えない素早さで剣を振り下ろした。


 すると同時に海が割れて激しく波打ち海底が外気へ姿を現すと、そこへウォルスカ海軍の戦艦はその中へ激しく海の谷へ呑み込まれてその上に割れて高く隆起した海水が戻り、一気にウォルスカ海軍の戦艦と巡視船は海底へと沈んだのであった。そしてその後にワルキュリアの放った剣撃の空気を引き裂いた音が空に響き渡った。


「お前の剣撃って音より速いのかよ。」


エヴァンスがそう呟くとワルキュリアは華麗にモンパカ車の荷台へと舞い降りて剣を鞘へと納めた。それを一部始終見ていた一同は手放しにワルキュリアへ拍手を送った。そしてポポロはウォルスカへとモンパカ車を下ろして街へと辿り着くとウォルスカの民衆や兵士はエヴァンス達を拍手喝采で迎え入れた。


 そこには海洋戦術に長けたアレキサンダー=ブランドールがこのウォルスカ海軍の急襲に、ウィスキネ軍へ対応指示を出していた為に、エヴァンス達を見るや駆け寄り


「君達であったか。しかし何とも豪快な剣撃で有りましたよワルキュリア殿、伝説を補って余りある強さでしたよ。」


ワルキュリアはそれに照れ臭そうに対応すると、エヴァンスは


「火急の事態にこのエヴァンス率いるモンパカ交易社が助太刀します! そしてこちらのハイボールとジャック=バスキリアがバスキリア帝国国王ジョージ=バスキリア様からポンドゥロア公国への応援として派遣されました。」


と深々頭を下げた。アレキサンダーは酒の席でしかエヴァンスを見たことは無い為に笑いながら


「こんな畏まったエヴァンス殿を見られるとは、これは我がポンドゥロア公国にとって吉兆となりましょう。ウォルスカ海軍も蹴散らして頂いた事ですし、皆の所へ戻りましょう。」


そう言ってエヴァンス達をウィスキネ城へと案内した。ポポロはモンパカ達に餌を与えながら歩き


「何でポンドゥロア公国の公爵達が集まって居ながら、こんな状況になったのよ。そんなにウォルスカってのは凄いの? 」


そうアレキサンダーに質問すると、アレキサンダーは


「そう恐れる程の剣技も軍才を有する人物では有りませんでした。しかし今回の襲撃は迅速にして悪質でとてもスクリュー=ウォルスカの物とは考え難いですね。後ろに居る者を考える事が妥当だと思います。」


そう答えた。頷くポポロの後ろでエヴァンスは考え事をしながらアレキサンダーの案内に付いていった。ウィスキネの町は海辺から近くに在りやたら尖った屋根をあしらった城が在りまるで針山の様な形でエヴァンスは


「ロブロイも尖ってるならなぁ。」


と呟きながら大通りを抜けて、小脇の道を幾度か曲がりウィスキネ城の門へと辿り着いた。ウィスキネ城の中に入ると兵士達は慌てて何かを探していた。そこへロブロイが現れ


「丁度良い所に来たよお前等。さっきビアダル公を呼びに行ったら部屋に書置きが有って、リシュタインと二人でエールリル領を取り戻しに出て行ったんだ。リシュタインとビアダルはポンドゥロアの誇る戦士と言えど無茶過ぎる。」


そう言って慌てていた。エヴァンスはその話しに


「ほんとあのおっさんは...... 。生きててもらわねえとこっちも困るんだよ。よし! ポポロワルキュリア! ビアダル追い掛けるぞ。ハイボールとジャックはロブロイ公の下で指示に従ってくれ。」


そう言って門まで走りモンパカ車の荷台へと飛び乗り、ポポロとワルキュリアもそれに続き出発した。




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