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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
二章-1 ゲンシュタット帝国
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【26】後始末




 こうしてバスキリア城を取り戻したジョージ=バスキリアはゲンシュタット帝国の圧政から解放された国民に歓迎を以て受け入れられた。そしてワルキュリアを使わずにバスキリアを取り戻したエヴァンスへジョージは最大の礼を以て迎え入れられたが、エヴァンスは


「俺は一介の商人。身の丈を越えた身分は身を滅ぼす。」


そう言って謝礼を断った。そしてジョージへ


「俺達はドルトリアの住民。ここで名を明かせば国交に影響を与えてしまうから誰にも言うなよ。」


続けてそう言うとエヴァンスとワルキュリアとポポロはバスキリアを後にして、人殺しを良しとしないエヴァンスはエリザベートの身柄を引き受け目隠しをしたままゲンシュタットの他領で解放した。そしてエヴァンス達はモンパカ車で飛び立つとバスキリアの森から西へ飛ぶように指示を出した。


 バスキリアの森から西へ到達すると、そこは枯れた木々や毒沼に、奇妙な虫が溢れ禍々しい空気に包まれた地が広がっていた。ポポロはエヴァンスへ


「なんなのよ此処は。禍々しいにも程があるわよ。こんな所に来たってろくな事が無いわよ。」


「ああ、ちょっと用事があってな。」


そう言うとエヴァンスはモンパカ車の荷台から飛び降りて


「魔王軍魔獣軍団長ライオネルに用が有って来たエヴァンスだ。ライオネルを呼んでくれ! 」


そう大きな声で叫んだ。すると岩陰から恐る恐るライオンの獣人がエヴァンスに近付いて来た。エヴァンスはそのライオネルの鬣をワシワシ撫でると


「クゥ~ン。」


と弱気に鳴き声をだした。エヴァンスは


「よしよし、作戦通りにやってくれてありがとな。ライオネル。こっちも約束通りワルキュリアは魔王軍に手出しをしない。そしてこれは報酬だ。」


そう言ってモンパカ車の荷台から大量の鶏肉や牛肉、豚肉を下ろした。そしてまたポポロのモンパカ車を走らせドルトリアと飛び立ち、ライオネルやその部下はエヴァンスからの報酬に喜び、笑顔で手を振って別れた。



 ドルトリアへ辿り着くと市場で大量の小麦粉と干し肉を買い込んで、早速バスキリアの市場でそれを売り捌いた。それを三度程繰り返してエヴァンス達はドルトリアの自宅へと戻り、その後にガルボの宿屋で打ち上げを行った。


 ガルボの宿屋でエヴァンス達はビールで乾杯をすると姿勢を正したローバインがブランデーを頼み行儀よくブランデーを飲み始めた。それを見たエヴァンス、ワルキュリア、ポポロは


(そう言やこんな奴が居たなぁ。)


と思い出したが口に出さずに酒を飲み続けた。そんな事は気にもせずにローバインは


「しかしエヴァンスさんのこの度の御活躍は大変、目を見張る物が御座いましたな。この短期間で金貨100枚もの利益を上げるなんて。しかもポンドゥロア公国との交易まで結ぶとは。」


そう上機嫌でグラスを傾けていた。エヴァンスはその言葉を聞いて


「あっ。ポンドゥロア公国の王位選挙の事を忘れてた。まあしかし、これでワルキュリアへの積年の怨みも晴れた事だし良しとするか。」


そう言ってビールを飲みながらツマミの干し肉へ手を伸ばした。するとポポロは


「ホント、商売の為に魔王軍まで手懐けて、あんたって男は何でも有りねエヴァンス。」


「良いんだよ。その場に有る使える物は何でも使え。だ。」


そんなやり取りをしながら次々と酒を飲み始めた。エヴァンス達はそれから夜中まで、最近の旅の出来事にバカ笑いしながら時々ローバインが口を挟む度に静かにはなったが一応は盛り上がりをみせた。そして一行はいつもの様に酔い潰れ、エリナとガルボもいつも通りに呆れ顔になり、エヴァンス達はいつもの様に朝陽と共に自宅へと帰って行った。ポンドゥロア公国の王位選挙の事などはすっかりと忘れたまま。







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