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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
二章-1 ゲンシュタット帝国
28/109

【23】エリザベート=バルトルト




 エヴァンスは牢番の兵士を二人失神させ、鍵で牢屋の扉を開け


「ほら、お嬢さん方。俺は愛と自由の戦士『バスキリア解放マン』だ。逃げ...... コボッ、オロロホロロロ...... 。」


いきなり現れた金髪に覆面で全裸にマントの酒臭い男が牢屋の鍵を開けて吐瀉物を吹き出している。そんな事態に囚われの若き乙女達は何がなんだか解らずに恐怖から悲鳴を挙げた。


 しかしそんな中でも冷静に振る舞う凛とした表情の蒼い髪の美しい娘がエヴァンスに近付きテーブルから門番の用意していた水を手渡し


「私はキャサリン=バスキリアと言います。貴方が何者かは存じませぬが、この機会をくださった事を感謝します。」


そう言った。エヴァンスは水を受け取りながら


「すまない。あんたバスキリアって。もしかしてジョージの妹か? 」


「貴方は兄様をご存じなのですね? もしかして兄様もこのお城へ? 」


「やっぱりそうか、兄はこの町まで来ている。兵士達は俺が引き付けるから、あんたはそこの乙女達を逃がして宿屋バスキリア亭に居る兄ちゃんと合流しな。」


そう言うと水を飲み干して、更にテーブルに置いて有った葡萄酒を握りそのまま上の階へと向けて走り出した。それを見てキャサリン=バスキリアは牢へ囚われた乙女達へ


「ここでジッとしていてもエリザベートに殺されるだけだわ。早く逃げましょう。」


そう言って逃走を呼び掛けた。そのキャサリンに続き乙女達は次々と立ち上り逃げ出した。エヴァンスはそれを足音で気付き、更に上の階へと走った。


 走るエヴァンスの前に兵士が現れ


「例の変質者が居たぞー! こっちだー! 」


と叫ぶと次々と兵士が集りエヴァンスを追い掛けた。エヴァンスはそのまま走り続ければ走り続けるほど兵士が集まって、城中の兵士がエヴァンスを追い掛けた。それでもエヴァンスは笑いながら走り、遂にエリザベートの寝室へと辿り着きエヴァンスはドアを蹴破り部屋へ突入しようとした。


 しかしエヴァンスは足を挫いて転がり悶えた。日頃運動しないにも関わらずお酒を飲んで走ったエヴァンスは更にそこで吐いたが、立ち上がろうと葡萄酒を飲んで気合いを入れた。


 そのタイミングでエヴァンスは駆け付けた兵士に取り押さえられ御用となった。その騒ぎに寝室からバスローブ姿のエリザベート=バルトルトが現れ


「こんな所まで賊の侵入を許すとは何をやっておる。貴様等も懲罰房へと行きたいのか? 」


そう言うと鞭でエヴァンスを叩いた。エヴァンスは皮膚に来る激しい痛みに叫び声を挙げるとエリザベートは


「良い鳴き声だ。そそるぞ。」


そう言ってニヤリとした。エヴァンスはそんなエリザベートに腹が立ち、暴れて兵士を振り解くと


「年増の美人で少し好みだけど許さねーぞ! 喰らえブラックホール! 」


と飛び掛かろうとしたが、挫いた足が痛くてそのまま床に転がりまた捕まった。『年増』の言葉に反応したエリザベートは明らかに不機嫌になり


(わらわ)の機嫌を損ねてくれる貴様には最高の拷問を用意してくれようぞ。懲罰房へ連れて行くが良い。」


そう言うと兵士はエヴァンスを縛り上げ、懲罰房と言われる拷問部屋へと連れて行った。



▲▽▲▽



 キャサリンに連れられた乙女達は町の外れに在るバスキリア亭へと辿り着き、ドアを開けるとそこには反ゲンシュタット帝国の民衆が集り宴会が行われて居た。しかしドアを開けた乙女の集団に皆注目して静まり返り、人々は


「あ、あれはキャサリン様。」


「あれは酒屋のウゴールの娘だ。」


「ちょっと待て行方不明になっていた娘達じゃないか! 」


口々に騒ぎだし、そこへジョージはフラフラとキャサリンに近付くと付髭を外して


「キャサリン...... 。無事たったか? 」


「兄様...... 。」


と二人は長きに亘る再会に涙を流して抱き合った。そして民衆はジョージ=バスキリアの存在にどよめいていた。





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