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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
二章-1 ゲンシュタット帝国
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【21】ジョージの思い




△▼△▼



 バスキリアの町を調査しているジョージとポポロはエヴァンスから預かった金貨で様々な店へと赴いて聴き込みをしていた。バスキリアの町はあちらこちらに兵士が配置されており、いつもその兵士の目を人々は気にして俯いている。ジョージはその変わり果てたバスキリアの姿に拳を握り締めていたが、それを見たポポロに


「ここであんたが暴れれば全て台無しになるんだからね。エヴァンスはあれでなかなか頭が切れるからアイツに任せましょ。任せる事が出来るのも王の器よ。」


と嗜め、ジョージは悔しさを圧し殺して拳を解いた。ポポロは


「こう見えてもワタシは呪われたマングースカの血で200歳になるのよ。歳上の言う事は聞くものよ。」


と言うとジョージは驚いて


「あんたどう見ても10代にしか見えないぞ。チビだし。俺はてっきりマングースカ魔導衆なんて、おとぎ話だと思ってたぜ。」


「チビは余計よ。でも200歳とマングースカは本当よ。」


そうジョージの問い掛けにポポロは答えると、風に紫色の魔導師ローブを揺らしながら足幅大きく歩いた。二人が町を歩いていると露店商の中年女性が力無く


「そこのお二人さん安いよ~。パンはいかが~。」


と声を掛けられたので、ポポロは今朝の食事では満足いかなかった様子で直ぐに飛び付いた。そして露店に並ぶパンを見れば焼き立てとは程遠く、数日間置いている様でカチカチに固まっていた。ジョージはそのパンと宿屋バスキリア亭の硬いパンを思い浮かべ疑問が生じ露店商の女に話し掛けた。


「よお姉さん。このバスキリアは何処も日が経った硬いパンしか置いてないのかい? 俺は焼き立てのパンが食べたいんだが。」


「このバスキリアじゃ小麦粉は戦地に回されて、小麦粉が高くてね。滅多にパンなんて焼けずに何処も我慢して硬いパンを売ってるのさ。」


ジョージはウィスキネでは焼き立てのパンを銅貨1枚であるのに、この硬いパンを銅貨3枚で売っている状況に益々怒りを覚えて


「おい。ここのパンを全部買う。俺が食うから。」


「あんた焼き立てのパンを食べたいんじゃないのかい?」


ポポロは横から口を挟んだがジョージは露店商の女に


「これで焼き立てのパンを売りな。」


そう言って大銀貨1枚を渡して、硬いパンを全部手に取ると無理やり噛りながら露店を立ち去った。露店街は何処も活気が無くボロボロの服を着た痩せこけた子供達が指を咥えてジョージの持つ硬いパンを見ている。ジョージはその子供達が目に入ると手に持つパンを全て子供達に笑顔で渡し


「おい。ボーズ供、それ食べても良いけどちょっと待ってな。」


そう言って、ミルクを売る露店から沢山のミルクと別の露店からスープを買い、子供達へ渡して


「ほら、そのミルクやスープに浸して食べればパンも柔くなるからやってみな。」


と自分の手に持つ硬いパンをスープに浸けて食べて見せた。それを見た子供達もジョージの真似をして食べると皆夢中でパンとミルクとスープに貪り付き、ジョージは立ち上りバスキリア城を睨んだ。ポポロはそれを見てジョージの腰をポンっと叩き


「あんたやっぱり良い奴じゃん。良い王様に成りそうだからワタシは応援するよ。」


そう言って微笑むと、ジョージは鼻をズズッと啜り滲む涙を拭うと


「そんなんじゃねぇよ。ただ硬いパンじゃなくて焼き立てのパンが食べたいだけさ。」


そう言って。ポポロを振り向かずにバスキリアの町を歩いてバスキリア城付近へと歩いて行った。それからも歩き続けて町を調査して回り、夕方には宿屋バスキリア亭へと戻りエヴァンス達やハイボールと合流すると部屋に集り互いに調査した状況を報告し合った。明日の朝に実行する作戦の事を話していたが、途中で食事に呼び出されエヴァンスは


「今から飯を食うけど、何が有っても絶対に俺からの指示が有るまでお前等は動いちゃダメだからな。」


そう釘を刺して皆で夕食へと向かった。





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