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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
二章-1 ゲンシュタット帝国
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【20】魔王軍魔獣軍団長ライオネル




 エヴァンスはワルキュリアと町を取り囲む壁の外へと出掛け、ジョージとポポロは町の中を探索し、ハイボールは単独で行動する事になった。


 ――バスキリアの周辺は森と海が在り、対岸に島国であるポンドゥロア公国ウィスキネ領が遠く水平線に見えた。エヴァンスはワルキュリアへ


「おお! ワルキュリア見て見ろよ! あっちの島がウィスキネだぞ。近えな。」


そう無邪気にはしゃいで指差し、ワルキュリアも


「本当に近いですね。この海の広大さにはいつも感心させられます。気持ちいいですね。」


そう言って海風に金色の長い髪をなびかせていた。そして二人はそのままバスキリアの周辺の森へと歩いて行った。バスキリアの森は魔王城と隣接している事もあり魔獣や魔物も多く生息する。しかし隣にワルキュリアを同行している為にエヴァンスはそんな事も気にせずに踏査を続けた。


 森は安全とは言え木々が陽を遮り薄暗く、草木を湿らす露が蒸発する中で湿度も高く不快な中での踏査にエヴァンスもワルキュリアも無口になり黙々と進んだ。その中で突然奇妙な「ギャオオ」と言う音が鳴り響き、エヴァンスは周囲を見渡し、音の鳴る方へと歩き進んだ。


 音に近付くと薄暗い中で何やらモゾモゾと動く影が目に入り、エヴァンスは慎重に気配を殺してゆっくりと距離を詰めた。するとそこには何やら罠に掛かって動けないライオンの様な獣人の魔物が叫び声を挙げていた。エヴァンスはその間抜けな獣人に近付くと


「何だ人間め! この罠を外せ! ぶち殺してやるぞ! 」


と大声でエヴァンスとワルキュリアを威嚇した。よくよく見ると地元住民が仕掛けた猪罠の檻に閉じ込められて騒いで居る。エヴァンスは獣人に


「お前こそ何でそんな罠に掛かってんだよ。それ猪用だぞ。」


「何を貴様! 俺様は魔王軍魔獣軍団長『百獣のライオネル』様だぞ! 早くこの罠から出さねば我が魔獣軍団が貴様等を八つ裂きにしてくれるぞ! 」


「助けが来ねえから困ってんだろお前。ワルキュリア、このライオネルさんを懲らしめてやりなさい。」


「わ、ワルキュリア...... 。金髪に長身...... ちょっと待てワルキュリアって...... 」


「ん?滅獄のワルキュリアだよ。」


「わー! ごめんなさい! 神様! 助けてください! 」


「神様ってお前、魔王の手下なんだろ。」


(ガクガクブルブル...... )


エヴァンスはライオネルのその反応を見て、ワルキュリアを振り返り


「お前、本当に皆から怖れられてるなぁ。」


「はあ、申し訳ありません。」


ワルキュリアは頭を掻きながらエヴァンスに謝っている。そしてライオネルは立派な(たてがみ)を情けなく下しながら震えて涙を流している。エヴァンスはそれを見て


(これは優位に交渉を進められる。)


そう思いニヤリとして


「よし。ライオネル助けてやるが、お前って本当に魔獣軍団長か? 」


「クゥーン。クゥーン...... 」


と弱気に鳴きながら頷いている。それを見てエヴァンスはライオネルの頭を撫でながら


「そうか。お前のモフモフに免じて助けてやる。その代わりに俺の質問に嘘偽り無く答えろ。」


ライオネルは激しく無言でウンウンと頷いた。そしてエヴァンスは檻の入り口のロックを外してライオネルを出してやると、ライオネルはここぞとばかりにダッシュして逃げようとした。しかしワルキュリアの素早い動きで腕を決められ脇固めの技で地面に押さえ付けられ


「キャイーン。」


と悲しい叫び声を挙げた。エヴァンスはライオネルの目の前にしゃがみ込み


「どうだライオネル。コイツが本物のワルキュリアだと理解出来たか? 何ならお前の魔獣軍団を呼んでも良いぞ。ワルキュリアに勝てると思うならな。」


そう言うとライオネルの首に首輪と縄を付けてワルキュリアに持たせてライオネルを立たせた。ライオネルは抵抗を諦めてこの世の終わりの様な悲しい表情になり、エヴァンスはニヤリと何かを思い付いた表情になった。







 


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