久しぶりの再会
世界最強の女戦士ワルキュリアと、モンパカ乗りの魔導師ポポロは落ちぶれてしまったエヴァンスのテーブルに座ると、エリナにビールを注文して飲み始めた。無言のままに3人のビールを啜る音が木造の店内にズズズッっと響き渡る。
エリナも始めは見てみぬ振りをしていたが。それが1時間、2時間と経過するうちにエリナも段々と底知れぬ不愉快さに苛立ちも募り。店の奥からドルトリア豆を炒めた物をテーブルの真ん中にドンッと置き
「あんたたち! いい加減なんか話しなさいよ! よくも裏切ったな!とか何でも良いから!ほらドルトリア豆の炒めたの食べて話しなさいよ!」
と言うとエリナは奥の厨房へと引っ込んで行った。エヴァンスはワルキュリアとポポロの顔をチラリと見るとドルトリア豆を1つ取り、口に運びビールで流し込んだ。するとワルキュリアも1つ取り口に入れ、ポポロは3つ取ると自分の目の前に置いて1つを口に入れた。エヴァンスはポポロのそんな手法を見ると
(その戦法を使えばポポロの僕と目の合う確率は必然的に3分の1に減るではないか。)
と思い。彼も真似をしてドルトリア豆を5つ掴み目の前に並べて、それを見たワルキュリアも真似をして3人は無言でモソモソと豆を食べてビールを飲んでいた。
見るに見兼ねたエリナはビールを持って3人の座るテーブルに座り、手に持ったビールをグイッと飲み
「ほら! エヴァンスもワルキュリアさんもポポロさんも話したいから来たんでしょ? ほらアタイも付き合うから何か言いなさいよ! 」
そう言うと、手に持つジョッキをテーブルにドン! と置いてエヴァンスの襟を掴むとエヴァンスは涙を流しながら
「もう俺はお前らと話す事なんて無いよ。どうせ皆俺を裏切って消えて行くんだよ。さっさとゲイルークの所に帰って仕事しろよ! 」
そうきれぎれで言うと、ポポロはジョッキをテーブルに置いて
「ワタシもゲイルークの所なんて戻らないよ! アイツはワタシの可愛いモンパカちゃん達を『脚の短いモコモコした気持ち悪い生き物だ。』なんて言って輸送を全部馬車や竜車に切り替えてワタシはお払い箱よ。」
そして隣のワルキュリアも
「私は掛け算が出来ない事を咎められて。主任や課長をボコボコにしてしまってクビになりました...... 。」
エヴァンスはそんな二人を見て少し黙ってビールを飲むと、隣に座ったエリナはエヴァンスの頭をパシンっと叩き。叩かれたエヴァンスは渋々と
「ゲイルークの所をクビになったからって、俺の所に来ても仕事なんて無いぜ。俺は残った財産で細々と楽しく暮らして行くんだ。それ飲んだら帰れよ。」
「いいわよ。仕事なんて無くてもワタシは別にお酒飲みたいだけだから。」
「私は話を聞いてもらいたいだけです。エヴァンス様。」
そう3人でビールを飲み始めると、エリナはジョッキのビールを飲み干して
「後はあんた達でちゃんと話なさい! 」
そう言って奥へと戻って行った。エヴァンスとワルキュリアとポポロは積み重なる想いをお互いにぶつけ合いビールを飲み、怒って怒鳴りビールを飲み、泣いて叫んでビールを飲み、笑い疲れてビールを飲み。3人はそこそこの所で記憶を失い、それでも夜更けまでビールを飲み続けて気付くとガルボの宿屋の一部屋で3人で寝ていた。
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朝に小鳥の囀ずりと射し込む陽の光りに薄目を開け、頭痛で目を覚ますと。ワルキュリアとポポロに挟まれて同じベッドで寝ている事に慌てて部屋を飛び出し、ロビーへ向かう足がもつれてエヴァンスは階段から転げ落ちて受付の台にぶつかり止まった。
するとそこには店主のガルボが居り。請求書を見せながら
「あんた、ワルキュリアかポポロのどっちか選んで。うちのエリナには手を出さないでおくれ。昔のよしみでまけといてやるから。」
そう言った。エヴァンスは請求書を見ながら
(ガルボからはその様に見えているのか)
と思いながらも頭痛からガルボに水を求めた。