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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
二章 ポンドゥロア公国王位選挙
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【12】エヴァンス到着




 アレキサンダーはグラスの中のウィスキーの琥珀色を明かりに透かしながら


「それではポンドゥロア公国の王位選挙ではありますが、我々が手を取り合い。このポンドゥロア公国の益々の発展へと励まれますよう...... 」



「コラー! 貴様何者だ! 不敬が過ぎるぞ! いや不審でしかない! 」


「いや。俺はエールリル領のさ。」


「うるさい! 裸の奴が逃げているのに理由などあるか! 逮捕だ! 」


「これはここに来る途中に魔物に襲われてさ...... 」


そんな大声と共に、この葡萄の間の扉が激しく音を立てて開き。そこへ青いマフラーをしてはいるが裸の金髪の男が倒れ込み、その上にブランドールの兵士が三人飛び掛かって押さえ込んだ。その時にメイドのララはワルキュリアにぶつかり、ワルキュリアはグラスを落として割ると。ララは一生懸命に謝り


「すみません。ワルキュリア様! 直ぐに代わりのグラスをお持ちしますので。」


と割れたグラスを片付けた。ジョージはその光景を見て苛立ちを持ったが、その他の人間は皆が青いマフラーの裸の金髪の男に注目していた。そしてその後から、トンガリ帽子を被った小柄の少女が息を切らして入ってくるとビアダルが大きな声で


「エヴァンスにポポロ。そんな所で何をやってんだ? エヴァンスは裸だし。すまないアレキサンダー公、この二人は俺の客人で何か事情が有ってこんな格好をしているが解放してくれんか。」


そう言うと、エヴァンスは兵士の隙間からモゾモゾ這い出して全裸を隠しもせずに青いマフラーだけの状態で


「すまない。ビアダル公。ワルキュリアが居ないと魔物に襲われるって事を今日初めて知ったよ。」


そう仁王立ちで笑った。ミスティーは扇の隙間からエヴァンスをマジマジ見て、ミスティー御付きの女性二人も手で顔を隠しながらも指の隙間から見ていた。アレキサンダーは自分の軍服のマントを外してエヴァンスに投げると


「君がドルトリアで我がポンドゥロア公国の名を売ってくれたエヴァンス君か。とりあえずそれで前を隠したまえ。おい、誰か彼に服を与えたまえ。」


そうメイドに指示を出した。エヴァンスはマントを受け取るとマントを付けて手を差し出し


「かたじけないアレキサンダー公爵様。」


「いやいやいやー! おかしいってエヴァンス君! マントを付けたって裸だろ! 付けないで前を隠すんだよ! 」


「なんだか少し温もりは感じます。ありがとうございます。」


「いや温もりとかじゃなくって恥ずかしいから隠すんだよ! 」


「恥ずかしいとは? それよりもビアダル公爵様。この新聞を見てください。エールリル領のビールがドルトリア王国で大流行です。」


ビアダルはそれを聞いて、気まずそうに


「エヴァンスよ。それさっきアレキサンダー公が見せてくれたよ...... それより前を隠せよ。女性も居るんだし...... 」


エヴァンスはそれを聞いてショックを受けて、落ち込みながら


「俺が伝えてジャジャーンってやりたかったのによぉ。あー、もうやけ酒だねこれは、飲むしかないね。」


そう言ってリシュタインのグラスを奪って、テーブル席に座りジョージの持ち込んだウィスキーをクイッと飲んだ。裸に青いマフラーに赤いマントのままで。そしてミスティー=ジントリアと御付きの女性二人を見付けるや


「この酒うめーな。おう、そこの姉ちゃん達も飲もうぜ。ほらほら。席は空いてんだ、座りなよ。みんな今夜はやけ酒パーリーだ。始めるぞ。」


と空いたグラスにまたウィスキーを注ぎ飲み始めて、葡萄の間の人々は呆気に取られた。その間にメイドのララはジョージのボトルを横から取るとワルキュリアのグラスに注ぎ


「ジョージ=バスキリア様、ここはアレキサンダー=ブランドール様の城であります。今後の行動はその事を念頭に置いてお願いします。」


そうジョージの耳元で囁いた。ジョージはララに毒の事がバレた事を覚り、冷や汗を流しながら立ち呆けた。





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