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自由の商人エヴァンス物語  作者: 橘 六六六
二章 ポンドゥロア公国王位選挙
14/109

【9】ブランドール領への海路




▲▽▲▽



 一方ビアダルは場内の仕事を妹のレッドアイ=エールリルとマグドリアに任せると、リシュタインとワルキュリア他に数名の人間を連れて他領へと遊説に出掛けた。先ずはポンドゥロア公国で一番人気のアレキサンダー=ブランドールの治めるブランドール領へと向かった。


 ブランドール領はエールリル領の南に位置する離島で他国との境界でもあり、海軍を中心とした軍事に力を込めた領地である。そしてそのブランドール領を治めるアレキサンダー=ブランドール公は軍人上がりと言う事もあり、精悍なな顔立ちと自信と説得力に満ち溢れたスピーチで国民と兵士の心を掴んでいた。


 ビアダル一行は海路を渡り向かったのであるが、ワルキュリアを連れている事で魔物1体にも出会さずに、その伝説の真実性を感じていた。そんな事も有り一行は、酒などを酌み交わしてゆるりと船旅を楽しんでいた。その様に酒も入り上機嫌になったビアダルはリシュタインの肩を叩いて言った。


「どうだ? ワルキュリアさんは強く美しくお前の理想の女性だと言って差支え無いのではないか? 」


「どれも私の理想を超えて畏縮していますよ。何せ先日の立ち合いでは身動きすることで、やっとの思いでしたよ。」


そう呆れて笑った。それを聞いて詰まらなそうにしたビアダルは


「まあ、それは良いとして甲板に居るワルキュリアさんも退屈しておろう。是非この席に呼んで来い。」


「そうですね。畏まりました。」


そう言うとリシュタインはいつもの如く音も立てずしなやかに立ち上がり、外の甲板へとワルキュリアを呼びに出向いた。その姿を見てビアダルは『世話の焼ける男だ。』と鼻を鳴らして呟いた。



 ワルキュリアを迎えに出たリシュタインであったが


「私は護衛の仕事で付き従う身ですので。」


そう断られたので、甲板の手摺に凭れて


「想像していたよりも、ずっと立派な戦士なんですね。ワルキュリアさんは。」


そう言って、晴天の下で栗色の髪を風になびかせ海を眺めた。そしてリシュタインは


「しかし雇い主の気遣いですので受け入れてください。」


そう続けて言った。ワルキュリアは『雇い主の気遣い』と言う言葉に少し考えて、昔エヴァンスが仕事の時に言った。


「商人はお客様が在って初めて商いが出来る。その事に『損』が無い限りは要望を聞き入れる事も大切です。」


と言う言葉を思い出し


「雇い主の気遣いであれば致し方ない。」


そう言ってリシュタインと供に船内の食堂へと移動した。食堂ではビアダルが嬉しそうにビールを飲んでおり


「おお、ワルキュリアさんも一緒に飲もう。今から向かうブランドール領はブランデーの産地として有名でな。領地の特産を研究してブランドール領民の心を掴もうぞ。」


と上機嫌にワルキュリアを誘った。円形のテーブルに座るビアダルの隣へワルキュリアは腰掛けると、その隣にリシュタインも腰を下ろした。リシュタインは手にブランドール産のブランデーを手に取り


「それではブランドール領のお勉強と参りましょう。」


そう言うと爽やかに笑顔を見せてグラスへブランデーを注いだ。それをビアダルとワルキュリアの前に差し出すと


「ブランドール領では戦地に赴く事も多く、兵士達の間ではアルコール度数の高いお酒が好まれております。それ故にぶどう酒を蒸留してアルコール度数を高めて樽で寝かせたブランデーが好まれます。そしてその樽が色と薫りを着けるのですが、我がエールリル領のビール樽にも使われる樽の職人が多い領地でもあります。」


そう言い。ビアダルも


「ブランドールのブランデーは俺も好きでな。アレキサンダー公も人間性は素晴らしいものがある。」


そう言うと乾杯をして、3人はグラスを傾けツマミに魚の干物を噛りながらブランドール領の事や今後の遊説のスケジュール等を話し合った。




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