【6】エールリル公爵ビアダル
このリシュタイン=リーベルと言う男は真面目そうな風貌とは裏腹に愉快な男で、このエールリル領とビアダルに対して愛が溢れており嫌味の無い好青年であった。そしてエールリル領きっての剣士と言う事でビアダルもリシュタインの事を信頼しており、このエールリル領の人柄は領主きってのものだと思われた。
段々と酌み交わすビールの度に5人の会話は打ち解けて、話しの内容はポンドゥロア王位選挙の話しへと移っていった。ポンドゥロア公国には5つの領があり、5人の領主が居り各々が特徴の有る者揃いで今年の王位選挙は荒れるであろうと話していた。エヴァンスはビアダル=エールリルの事を気に入り
「よっしゃ! ビアダル程の男が王位に着かねえとこの世界は退屈になっちまうよ! 俺はビアダルを応援するよ。」
と、ほっかむりをして小枝を鼻に挿したままそう言い。それにワルキュリアとポポロも乗り気で
「この剣士リシュタインは中々の男です。是非、応援しましょうエヴァンス様。」
「リシュタインはカッコ良いからワタシも賛成だ。」
と酔いに任せて盛り上がると、ビアダルは
「俺じゃなくてリシュタインの応援みたいじゃねーか。しかし応援してくれんなら頑張るぜ!この世界をポンドゥロア公国のビールで楽しくしてやるぜい! 」
その言葉にエヴァンスはハッとなり。ビアダルと肩を組むと
「いいねー! いいね。それいいねー。」
と言い何やら楽しそうにしていた。そしてたらふくエールリル料理とビールで腹一杯になるとビアダルとリシュタインに宿を案内して貰い、明朝にエールリル城へ集まる様に話した。
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エヴァンス一行は朝からビアダルを訪ねてエールリル城へと集まった。リシュタインの案内により、ビアダルの部屋へと案内されるとビアダルに歓迎を受けてそのまま円卓の有る会議室へと通され。リシュタインの指示で円卓に座った。中央にビアダルが座りその隣に執事のマグドリアと言う老紳士が立ち、この会議の司会をを行ないだした。
「わたくしマグドリアがこのポンドゥロア王位選挙、作戦議会の司会を執り行わせて頂きます。先ずはドルトリア王国からいらっしゃったエヴァンス様御一行も居られます故、簡単にこのポンドゥロア王位選挙の説明を行いたいと思います。」
そう口上を陳べると隣でビアダルが頷いた。それを確認するとマグドリアは話しを進めた。
「では。ポンドゥロア公国にはわたくし達の『エールリル領』はビアダル=エールリル公、そしてその北に位置する『ウォスルカ領』のスクリュー=ウォスルカ公、西に位置する『ジントリア領』のミスティー=ジントリア、南に位置する『ブランドール領』のアレキサンダー=ブランデー公、南西に位置する『ウィスキネ領』のロブロイ=ウィスキネ公。この5名で大公を選ぶのがポンドゥロア王位選挙であります。」
その説明を受けたエヴァンスは、いつになく真面目な顔をして
「すみません。会議であるならば、資料を頂いて考察の時間を頂けませんか? 俺はこのビアダル公をその選挙にどうしても勝って頂きたい。その為にも考えをまとめた上で、もう一度皆さんの意見をお聞きしたいので。」
そう言うと、ビアダルは頷き手を鳴らして
「では、一度エヴァンス殿に資料を渡して1時間後にもう一度集まろう。私は皆の真摯な意見と向き合いたい。」
そう言うと、マグドリアは
「それでは一度閉会して、1時間後にまたお集まり願います。」
そう言うとエヴァンスへ資料を渡して、ワルキュリアとポポロを残してビアダルの側近達は会議室から退室した。エヴァンスは資料を手に取り読みながら、ブツブツと呟いたりフンフンと頷いたりしている。ワルキュリアとポポロはその間は退屈そうにしていた。そして1時間が過ぎて、もう一度会議室へビアダル達は集まった。




