一章 ①
ーここは旧国、真日本に一番近いとされている街、カンダビア街。
そんな日干しレンガ作りの家が数多く立ち並ぶ街のはずれで、今日も声変わりをしたての少年達の声と、まだ幼く甲高い少年少女達の声が響く。
「ねーねー、これっておいしいのかな。」
少女が年上の少年に黒ずんだきのみか何かについて尋ねる。しかし、その少年は少女の面識のある者ではなかった。
「知らねぇよ…試しにお前が食べてみたらいいだろ?」
そう言い、何かを企んだような顔で少女に答える。少女はその顔を見て何かを察したように怯え出した。
「や、やめてくれないか、この子、こわがってるだろ…」
ひ弱そうな少女と面識のある少年がそう言った。
「あ?お前が食糧くれるもんなら許してやってもいいぜ。」
「え」
「じゃあ無理だな。おいそこのガキ、食え。」
体の頑丈そうな少年が声を荒げてそう言い、抵抗した少女の口に無理やり詰め込んだ。ひ弱な少年は拳を強く握り傍観していた。少女は口に入れられたものを吐瀉物と共に吐き出し、そのまま横たわった。それを少年は蹴飛ばし、仲間と見られる者と共に何処かへ行ってしまった。傍観していた少年は見えなくなったのを確認して少女を介抱する。しかし、もう遅かった。いや、口に入れた瞬間から助からなかったのだろう。毒がついていたようだ。
涙を流して、少年はゴミを漁ることを再開した。何度も、何度も溢れる涙を拭いて。
こんな事は毎日の様に起こる。いつでも、どこでも。
この旧国にいる以上、常に死ぬか生きるかの瀬戸際に立っている。そんな生活は、平和でも何でもない。
ーだから、真日本に行く。
そうして、自らの手で生きる事の喜びを噛みしめたい。
そんな事をこんなものを見る度に思わせる。
だが所詮、スラムで生活している身。夢を見ているのは分かっている。いつかは現実を見なければ…
「何を黄昏ているんだ、手が止まってるぞ。」
「そーだそーだ!サボリま!はたらけ!」
偉そうな同い年の女と男のガキに言われ、いつもの事ながら腹が立った。
「うるさい。」
そう俺は言い吐きまたゴミの山を漁ることをし始めた。
「オム、これ何かに使えないか?井戸のパーツとかに。」
「もう同じの見つけてる。」
「ぐ、タイミングが悪かったな。まぁ持ち帰るとしよう。シャー、なんかあったか。」
「みてトウハ!ふくろのなかにしろいこなあったよ!」
「げ、今すぐ捨てろ!」
こいつガ行が先に出るの意味わからん。
俺たち3人は集団の輪から外れて生活している。
どうやら俗に言う"忌み子"らしい。
天災がどーとか知らんが、その時に生まれただけで一生煙たがられるのは風習がどうかしている。
ともかくこの生活をして12年、あの日と同じ年月が流れた。突然真日本の連中にさらわれ、気づいたら肩に「NO.679835」とかいうなんて書かれたか分からないものが刻印されていたあの日。突然の事だったので鮮明に覚えている。
一体何を表しているのか、誰にも聞いても避けられるし、万一聞けても誰も知らない。
このことを知る為にも、いつの日か真日本へ。この肩の刻印も行く為の目的を示していた。
あらかた漁った後、3人並んで自宅としている廃墟に帰り、戦利品を分け合い、寝床へ各自着いた。




