表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

さがしもの

作者: 竹下千代

ホラー書きではないので、あまり怖くないと思います。


 夜中に目が覚めると、薄暗い天井が目に入った。

 高校総体の前に腕を骨折するなんて、全く運が悪い。

 先輩の短距離、応援したかったのに・・・・・・。


 部屋の中は、ほのかに明かりが差している。ナースステーションが近いせいだ。

 夜勤の看護師達が、なにか話しているが、内容まではわからない。ときおり、ナースコールの耳障りな音が響く。


 眠れない。テレビを点けるわけにはいかない。向かいのベッドのおばさんは見たい映画があると、こっそりイヤホンを付けて見ているが、俺はイヤホンを持っていなかった。

 仕方なく、俺はベッドから降り、手洗いに行くふりをして、ソファーが並ぶ休憩室に行くことにした。


 案の定、休憩室は暗かった。どさっと、体をソファーに預ける。スマホでも持ってくればよかった。


「・・・・・・ねえ、見つかった?」

 いきなり声を掛けられ、俺は体を硬くした。後ろを向くと、10歳ぐらいの女の子がいた。かわいいパジャマを着ている。

「まだ、見つからないの?」

 女の子は、ウサギのぬいぐるみを抱えていた。

「見つけるって、なにを・・・・・・」

 うつむいていた女の子が、顔を上げた。俺は、心臓を冷たい手で掴まれた気がした。

「お前は・・・・・・」

「お兄ちゃんが鍵をなくした、って言ったから、あたし、お兄ちゃんと一緒に暗くなるまで捜し物したんだよ」


 気づかなかったが、女の子の服は、所々血に染まっていた。

「すごく、すごく、痛かったよ。お兄ちゃんが、何回も、包丁であたしを刺したから」


 冷や汗が噴き出す。


 俺は、女の子を刺したあと、急いで逃げようとして、車と接触事故を起こしたのだ。


「ねえ、鍵、見つかった?」

 女の子は、また繰り返す。


「見つからないなら、あたしと一緒に、探しに行こう?」

 女の子が俺の前に来て、血に濡れた手を差し出す。

 俺はその小さな手を見つめることしかできない。


「鍵が見つかるまで、あたし、ずっとずっと、お兄ちゃんのそばにいるから」

 女の子が、俺の顔をなでた。俺の顔に、血がついたことがわかった。


「お兄ちゃんが言ったことが、嘘だったら、今度はあたしが、お兄ちゃんをずっと事故に遭わせ続けるから」


<了>


実は作者がホラー苦手です。

お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ