深夜にパンを食す
真夜中にパンを食べている。
空腹感で眠れなかったからだ。
夜にパンを食べると変な感じがする。口が驚く。日勤の人が、夜勤のシフトに入ってるくらいの違和感。
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学生バイトの青年が言う。
「今日急に夜勤入れなくなっちゃって。ほんっと申し訳ないんですけど、松村さん代わりに入ってもらえませんか」
告げた相手は、週4で日勤パートをこなす46歳の主婦・松村さんだ。
松村さんは、
「うーん、他にも人いないのよねえ? わかったわ」
と、まさかの承諾。パートのおばちゃんが夜勤に緊急登板することになった。
これには現場も驚いた。
夜勤を執り仕切る副主任の川原は、
(ひひっ……日勤のババアが来やがったぜ。夜勤の厳しさ、教えてやろうじゃねえか)
と息巻いていた。
だが作業内容のレクチャーをあらかた受けたおばちゃんは、普段学生バイトがこなす仕事を、およそ半分ほどの時間で片付けた。
「夜勤ってあまりやることなくて暇ね」
普段から過酷な場所に身を置く者は、フィールドが変わっても活躍するのだ。
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夜食べても、パンは美味い。よく寝れそうだ。




