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香水の匂い
久しぶりの休みで、電車に乗って出掛けた。
予定も立てずに、ふらっと。ロングシートに座って向かいの窓から見える流れていく景色を見るだけでもたのしい。
電車が大きな駅に停車すると、たくさんの人が乗車してきた。まばらに空いていた座席も、すぐに埋まっていく。椅子取りゲームのように空席を埋めていく様は、ベンザブロックのCMさながらだ。
私の隣の空席には、綺麗に整えられたショートカットの女性が座った。そのとき、マスク越しにふわっと香水が香った。どこかで嗅いだことのある匂いだったのだが思い出せない。懐かしいような、誰もが知っている匂いのような。
何度も鼻で深呼吸してみたが、その度に手が届きそうで届かない、もどかしさだけが募る。結局、降りる駅まで、なんの匂いだか、思い出せなかった。
帰り道、大通りでサラリーマン二人が話していた。後輩と思しき若い男が、もどかしそうに言った。
「Beatlesにジョン・レノンともう一人いるじゃないですかあ」
(もう三人いるよ……)と思いながら、横を通り過ぎた。
最近、日が長くなってきた。もう春だ。でも寒い日もあって、もどかしい気持ちで過ごす。




