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【2万pv突破】東京アレルギー  作者: 晴後くもり
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有線

イヤホンを新調した。


3年ほど使っていたものは、さして高いものでもなく、たまたま必要になった時に家電量販店で買ったものだった。愛着も特になかったが、なかなか壊れないから、使っていたのだ。


夜な夜な、無性に動物の捕食する動画が観たくなって、パソコンにイヤホンを挿した。家で音楽や落語を聴くときなんかは、スピーカーを通すのだけれど、捕食となると、悲鳴とか、威嚇とか、そういうものがありそうで、イヤホンを挿したのだった。


次の朝、会社に行かねばとなり、慌ててイヤホンを抜いた。だが、横着して先の方を持って引っ張ったためか、電車の中で右側から音が鳴らなかった。何度か挿し直したがダメだった。断線しているらしかった。


ついに、買い換える必要ができたので、思い切って流行しているワイヤレスのものにした。これならば断線する心配もあるまい。


休日、ネットで注文していたワイヤレスイヤホンが家に届いた。封を開けると、イヤホンはキラキラと輝いて見えた。


嬉しくなって、用もなくイヤホンを耳につけて家の周りを歩いた。両側から音楽が鳴る。それだけでご機嫌である。


コードなんていらなかったのだ。すっきりした首元でるんるん歩いた。嬉しくなって少し駆けた。駆け出すと、異変が起こった。ぷつぷつと、音が途切れ、2秒くらい音が鳴らない時もあった。速度を落とすと、音は帰ってきた。駆けるとまた、途切れた。


なんだかとても哀しい気持ちになった。イヤホンに拾われなかった音楽たちはどこへ行ってしまうのだろう。風にのって、知らない誰かの耳に届いていたらいいのだけれど。


恋しい。有線のイヤホン。線があるのは、安心、繋がっているのがわかる。煩わしい首元も、絡まるコードも、恋しかった。


次の休みには、なんでもない家電量販店で、身の丈にあったイヤホンを買おうと思う。動物の捕食はもう観ない。

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