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【3万pv突破】東京アレルギー  作者: 晴後くもり


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髪を切る

 4ヶ月ぶりに美容院へ行った。

 足取りは重かった。


 いつも緊張してしまうのが、歯医者と美容院。歯科衛生士のお姉さんや、イケてる美容師さんを前に萎縮してしまうのだ。


 何を話せばいいのか。別に無理やり話す必要もないのだが、やはり気を遣って話しかけてくれるわけで。


 日々の話の種をいくつか用意してみた。

 最近暖かくなってきて伸びをすると気持ちがいいこと。花粉で鼻がむずむずすること。昨日の晩ごはんはカレーだったこと。セブンイレブンに新商品のおいしいパンがあること。


 どれも花を咲かせそうにない種ばかりだ。しかし予約時間は刻一刻と迫ってくる。仕方なく、役に立ちそうもない話題の種たちを携えて、建物の中に入った。


 お待ちしておりましたと出迎えられると、薄く羽織ってきた春物のコートを預け、席へと案内される。前のテーブルには、タブレット端末が置かれている。


「見たい雑誌があれば、タブレットを使ってください」


 そう言われて、操作方法をひと通り説明してもらう。読みたい雑誌、じゃなくて、見たい雑誌なんだ、と興味深く聴く。


 私はタブレットを指でスライドさせながら、雑誌の表紙一覧を眺めみる。ネコ科動物の生態に詳しくなれそうな雑誌を見つけて唆られる。


 ただ問題は読み始めるタイミングだ。

 そもそも雑誌って、パーマとかカラーの人が待ち時間に読むものなんじゃないか。でもそれなら最初からレクチャーなどしないはず。それとも私がタブレット端末をみて触りたくてしょうがないというような顔をしていたのだろうか。


 とりあえず手にとってみる。本命のネコ雑誌は開かずに、あくまでも流し見ているように、いつでもテーブルに戻せますよというポーズをアピールしながら。


 すると、美容師は、意に介さず髪を切り始めた。タブレットに、切られた毛先が飛び散る。私は慌ててタブレットをテーブルに戻した。


 意気地なし。私は今日ネコ科の生態について詳しくなることはなかった。

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