指を切る
指を切った。
乾燥していたせいか、紙を触ったときに薄く切ったのだ。
傷口は、指の皺や指紋に紛れてぱっと見ただけではわからないほどの小さなものだが、光に当てて目を凝らすと、周りよりも赤く滲んでいるのがわかる。
指切った♪といえば、約束の定番、決まり文句、大ベストセラーである。めちゃ怖台詞なのに。エンコ詰めた♪ってことなのに。ある程度の狂気というものは、流行には欠かせないファクターであるということを思い知らされる。
というか、指を切ることが約束を破った罰かと思い込んでいたが、かの歌詞を思い出すと、
指切り、拳万、嘘ついたら針千本飲ます。指切った♪
これを見る限り、針千本を飲ませるのが罰にあたるようである。指切った♪は、約束の担保にあたるようである。
最初の指切り、拳万は、……なんだろう。両者の威嚇? なにしてんの。
閑話休題、今回の指切りは、そこまでではない。がっつり切ったわけではない。細〜く擦った、浅〜く割れた、薄〜く傷ついた程度のものである。自販機のあったか〜い、つめた〜いみたいな、間にゆるい伸ばし棒が入るくらいのやつである。「切った」という言葉の範囲の広さよ。東京ドーム何個分だ。
でも、皿を洗うときや、シャンプーを髪で泡立てるときなんかに、煩わしい。本当に地味な痛み。「見た目比」でいうと、かなりの痛みだ。コスパの良い痛み(痛みを与える側からすればコスパ良だが、受ける側からすればコスパ悪。拷問なんかにちょうどいいかしら)とも言える。
取るに足らない傷ほど、生活を蝕む。心も、身体も。約束は破らないようにしたい。




