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【3万pv突破】東京アレルギー  作者: 晴後くもり


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誕生日

 先日、誕生日を迎えた。

 昼過ぎにケーキ屋まで歩いた。


 重いガラスの扉を開けると、ショーケースから一面、宝石のように色鮮やかなケーキたちがこちらを向いて鎮座していた。


 やや遠巻きからケーキを物色する。近づきすぎると、ショーケースの向こう側にいるスタッフの“間合い”に入ってしまうからだ。じっくり選びたいのだ。話しかけられると焦ってしまう私。服屋でも、携帯ショップでも、電子辞書コーナーでも。話しかけられることに辟易して、逃げ帰った経験がいくつもある。


 ただ、じっくり考えたからといって、最善手を選び抜けるわけではない。ファミレスなんかでもそうだ。これを食べようというあたりを付けて店員を呼んだにも関わらず、他の人の注文に影響を受けて、「私もそれで」と何度言ったことだろう。意志が弱い。


 また、どうしても欲しいものが一つ見つかった時でも、一筋縄ではいかない。


 昔、誕生日に両親に連れられておもちゃを選びに行ったことがあった。私には姉がいて、彼女の誕生日も近かったものだから、二人一緒にプレゼントを買うことになった。私が欲しい物は、姉が欲しい物よりも高価なものだった。


 私は思慮深い。奥ゆかしい。……正確には意地っ張り。


 姉は早々に欲しい物を告げ、買い物カゴへと投げ入れた。一方の私は、その欲しい物の周りをウロウロと歩き回り、時間いっぱい使い切った挙句、「欲しい物ないや」と言って、ついには何も買わなかった。


 両親は何もプレゼントを用意しないというのも悪いと思ったのか、私へ気持ちばかりのプレゼントをくれた。贈り物なんていうのは気持ちなのだから、文句を言う筋合いはないのだが、小学生にはそのへんの塩梅が難しかったのか、気持ちの整理をつけられなかった。結局プレゼントを受け取りはしたものの、使うことはほとんどなかった。


 見かねた両親は後日、私が欲しかったものを何処かで聞きつけて、「これが欲しかったんやろ」と両親は私に買い与えた。自信満々といった表情だった。


 だが、それをもらったとき、嬉しいはずなのに、引くに引けない意地なのか、せっかくの遠慮(やせ我慢)を無駄にした両親を不粋に思ったのか、素直に喜べなかった。


 誕生日にそんなことを思い出した。

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